私の全力
すいません!時間間違えてました!
さて、啖呵を切ったもののどうしましょうか。ドラゴンは先ほどのブレスも退けたと言いましたが、実際は全然で、止められたのは半分です。突然とはいえ、全力だったんですけどね……。
でも、ずっとこうしているわけにいきません。時間をかけすぎると時間稼ぎをさせてくれなくなりそうですし。そうなると私を無視して魔都に向かわれてしまうかもしれません。そうなると魔都の東部分が崩壊してもおかしくありません。
ならやるしかありませんね。全長およそ5メートル程で、立ち上がったら10メートルくらいにはなるでしょうね。
「……奥の手も使って行きますか。……アイスブラスト、タイプエンチャント。」
トロイメライの剣先が凍り付きましたが、刀身は緋色に淡く輝いています。この付与には結構な魔力を使うので本当に今の魔力量では一分ギリギリもつといった感じです。
「行きますよ。」
馬を動かして全速力でドラゴンめがけて突っ込んでいきます。ドラゴンは宣言通り身動き一つせず私を待ち受けています。
「せいっ!」
ドラゴンの長い首筋をその側を通り過ぎながら切りつけます。直後、切りつけた場所が凍り付き、数秒の魔を置いて爆発しました。
「グググ……。なかなか面白い魔法を使う……。」
そのまま今度は急降下して後ろ脚を切りつけます。でも残念ながらどんなに全力で斬りつけようともそこまで深くは斬れていません。トロイメライがそもそも刺突用の細剣であるだけでなく、このドラゴンが鎧のように纏っている鱗が固すぎるのです。
付与したものが強力でもこれではそこまでダメージは期待できませんね。
それでもこれが私の今出せる最高火力なのでひたすらこれで斬っていくしかありませんが。
常にドラゴンの周囲を飛び回りながら攻撃を続けます。足や首は当然のこと、胸や翼の付け根あたりも狙っていきます。斬った所が凍り付き、爆発を起こすまでの間に他の場所を斬りつけていくぐらいの速さで。自分でもギリギリ制御できるくらいのスピードで動いているので、急降下した後は必ず地面に馬が地面に突っ込みそうになるので、その時は地面にもトロイメライを振って速度を無理やり殺しています。……本当はトロイメライはこんな風に使ってはいけないくらい希少な剣なんですけどね。今回は緊急時なのでやむなしです。
……でも相変わらずダメージが入っているようには見えませんね。体のあらゆるところが爆発によって鱗がはがれていたりしますが、それでもドラゴンは身動き一つしません。
……まずいですね。そろそろあれから一分が経ちます。なら最後はアレしかありませんか……。できればやりたくないんですが、まだ応援は来ないでしょう。なら、ためらう必要はありません。
「はああぁっ!」
一度ドラゴンよりも高くとびあがり、急降下します。そして首の中心めがけてトロイメライを突き出しました。
生々しい感覚と共に、トロイメライがドラゴンの首に突き刺さりました。そしてその直後から周囲に氷が広がっていきます。流れ出る血を凍り付かせながら。
「グウウッ!……やるではないか……。」
今度こそドラゴンは苦悶の声を漏らしながら少し後ずさりました。……でも、それだけですか。まずいですね。
「だが、約束の一分だ……!」
そうドラゴンは言うと翼を羽ばたかせ、大きく飛び上がりました。そしてそれだけでなく体を大きく旋回させました。
ドラゴンの首筋にいた私は吹き飛ばされました。その時手に持っていたトロイメライが手から離れていくのを感じました。
何とか空中で体勢を立て直そうとしましたが、もう魔力がほとんど残っていなかったためそれはできませんでした。
その直後、背中から地面に落ちました。
「がっ、……はっ……。」
最初に地面に着弾した時に目の前が真っ暗になり意識を失いましたが、バウンドして2回目に地面に落ちた時に再び意識を取り戻しました。
そして近くで大きな爆発の音が聞こえました。
……これは体中の骨が折れていますね。おそらく背骨と咄嗟についた右腕は確実、それ以外にも足とかも折れてそうです。というよりも全身が痛くてどこが痛くないのかがわからないレベルで全身が悲鳴を上げています。
それでも結果だけは見届けなくてはなりません。全力で拒絶してくる体を無理やり動かして起き上がります。
そこにはこれまでで最大の爆発を受けたはずのドラゴンが最初と同じように泰然とした様子で立っていました。
「グググ……。我にたった一分で、しかもたった一人でここまでの傷を与えるとはな……。もっぱら嘘ではなかったというわけか……。」
よく見るとドラゴンの体はボロボロです。首筋の傷からは絶えず大量の血が流れ出していますし。
「だが、日が悪かった……。今日はもともと満月、そこに我が重なって現れたがために月が紅く染まった……。この紅い月は我ら魔物にとっては特別な物なのだ……。」
……この紅い月に何か意味があるっていうことですか……?そんなこと聞いたこともありませんが……。
「その一端がこれだ……。ドラゴン魔法 ドラゴニックヒール。」
そうドラゴンが口にした直後、ボロボロだったはずのドラゴンの体が修復されていきます。
「……嘘……。」
そしてものの数秒で元通りになっていました。
次話は明日8時に投稿します。
よろしくお願いします。




