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紅い月

 赤い月が出てきた途端に魔物たちの動きが止まりました。そして地面が立ってられないほど強く揺れ始めます。この揺れは……、5年前よりもはるかに強い……!


「なんだ!?魔物が急に止まりやがったぞ!」

「バカね!ボスモンスターが出てくるってことでしょうが!……あっ。」

「あっ、ってなんだ。なにが……あっ。」

「はぁ、はぁ、……眠れ!ここでの仕事は終わりだ!さっさと……、あ。」


 前方で戦っていた3人がこちらを振り向いて口を大きく広げました。


「一体何をやってるんですか?役割を果たさないことが冒険者の中で一番避けなければならないことだということは皆さん分かっていますよね?

 ……処分は免れませんよ?」

「……じゃあその処分を待っておくをするさ!ここよりは安全な後方でな!」

「そうね……。ソフィアさん、処分を待ってるわ。」

「こりゃ、リュウマ達に申し訳が立たないな……。まああいつらもわかってくれるか。うん、俺も待っておくぜ!」

「そうだ!なにせ自由がモットーの冒険者だ!当然その責任も持つさ。」


 彼らは開き直ったかのように口々にそんなことを言っています。

 ……まったくこの人たちは。しょうがないですね。そこまで信頼されているっていうことでしょうかね。


「分かりましたよ。ではあなたたちに適切な処分を下さなければならないので、生きて帰るしかありませんね。」


 そう言った途端、皆さんはにっこり表情を緩めながら


「おう!待ってるぜ!」

「魔都はあたしたちがいるから大丈夫よ!」

「その通りだ!任せてな!」


と満足そうに言いました。


「ヨモギ……。ありがとうな。あとは後ろで休んでてくれ。行くぞ!」

「当然!あたしの弟子も心配だしね。」

「リュウマとアカリは大丈夫だろうが……。俺たちが抜けたところを後方でしっかり穴埋めしないとな。」


 そう言いながら颯爽と走り去っていきました。おそらくミラさんが風魔法で移動速度の上昇をしているのでしょう。あっという間に気配が感じられなくなりました。


 ……ふう、あとは私の仕事ですか。早く来てくださいよ、ギルマス。でないと、本当に死んでしまうかもしれません。




 空が変わりました。真っ黒な夜空に大きな紅い月が浮かんでいます。その月が昼間のように明るく世界を照らしています。


――ドクンッ……。


 なんででしょうか?あの月から視線を外せません。まるで縫い付けられたかのように動かせません。それと同時に体が何か大きな変化を始めたのをなんとなく察しました。


――ドクンッ、ドクンッ……。


「お姉ちゃん……?だいじょ……。わっ!」


 リョウ君が話しかけてくれたような気がしますが、それはいきなり起こった地震によって遮られてしまいました。

 その衝撃で視線を月から外すことができましたが、その間にも私の体には変化が起きています。感覚が驚くほど鋭くなりました。

 見ようと思えば、1キロ先の景色も鮮明に見えそうです。聞こうと思えば、遠く離れた場所で葉が落ちた音も聞こえそうです。そしてどこに何があるかも空気の揺れで分かってきました。

 ……この地震は東側。それもおそらくはあの龍の爪痕とかっていうダンジョンが震源ですね。そしてこの子の剣は……おや、結構近くにありますね。


「大丈夫です。……剣を見つけたのでちょっとここで待っててください。」

「えっ!?」


 喜びと不安が混在する声を上げたリョウ君の頭を軽くなでて、大きくジャンプしました。

 ……ああ、どうやって体を使えばいいかが分かります。変化は感覚だけでなく、体にも起きているようです。身体能力はこれまでの数倍以上にまで跳ね上がっています。そしてそれだけじゃなく、背中に魔力を集めると……。血が噴き出して、それが翼をかたどって固まりました。その翼を軽く震わせながら剣の気配がある場所まで飛びました。

 ……またここに来てしまいましたね。剣はこの西のダンジョン、凋落の墓所の入り口の目の前に刺さっていました。いつかここにも来てみたいです。なぜか、ここから目を離せなかったんですから。でも今はそれをする時ではありませんね。

 ……帰りましょう。子供達が待っています。




 少女が去っていった直後、ダンジョンの奥の祭壇が小さく動いたが、それに気づく者は誰もいなかった。吸血鬼の少女ですら気づけないほどの微細な動きと変化には誰も気づけない。選ばれたものだけが気づけるようにはできているのだから当然と言えば当然なことなのだが。その先には神の名を冠する世界に一対しか存在しない伝説の一振りが眠る。

 この世界が創り出されてから永い時をこの中で過ごす神器は待ち続ける。きっと、いつか、だれかが、自分のことを手に取ってくれると淡い期待を抱きながら。

 しかし、それは気の遠くなるほどの小さい可能性。語り継がれるはずの伝説は当の昔に消失し、今ではその伝説を知るモノは限られている。しかし、その存在を知ることは前提条件。知った後も地獄のような試練が積み重なる。その先にかの神器は待っているのだ。

次話本日20時に投稿します。

よろしくお願いします!

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