暗雲が立ち込めてきそうですよ……。
「まず、基本的にはパーティー行動をしてください。ソロでの活動の方は適当に三人組を組んでください。ただ今回に限ってですが、連携は考えないでください。目の前の敵を倒しながら周囲に気を配り、危険なときは互いにカバーをしあってください。今回の敵、少なくとも現在確認されているのは脅威度がEとDの変異種ですので皆さんであれば、一対一の方が戦いやすいでしょう。」
そこで一度言葉を切ります。作戦は皆遊撃しろっていうことですね。この作戦で途中まではまあうまくいくでしょう。問題はその後です。
「そして、スタンピードには大抵それを引き起こしたボスモンスターの存在がいます。今回のダンジョンでは属性は分かりませんが竜が出てきます。5年前もそうでした。しかし、以上の作戦ではそのボスモンスターには対応できません。
ですが、ご安心ください。その時には私以外のサブマスにギルマスもいらっしゃいますので大丈夫です。なのでボスモンスターが地上に出てくる合図である、空が夜に変わったときは一時退却してください。もし誰も間に合わなさそうであれば、私が時間を稼ぎます。
何か質問はありますか?」
そうなんです。問題はボスモンスターです。5年前もそれで多くの才能を持った若い冒険者が亡くなりました。定期的に起こるこのスタンピードがこの魔都全体の冒険者の実力が上がらない理由になっているんじゃないかと言われています。結局5年前は急いで帰ってきた魔王様がボスモンスターのファイヤードラゴンを討伐してくださいました。
今日この場にもたくさんの実力者がそろっています。ですが、私からしたらまだ青いです。聞いただけで震えそうになっている人がほとんどですね。さすがにAランクの皆さんは大丈夫そうですが、Bランクに皆さんでさえ半分くらいが顔色が悪いです。せめてこのスタンピードが起こるのにあと1年あれば……、と思わずにはいられません。今集まっている冒険者のうち6割ほどがCランクの冒険者で、3割がBランクの冒険者です。Aランクに至ってはおそらく数組くらいしかいないでしょう。残りは私達がこの東支部に来る前からいて、まだ帰っていなかったDランク以下の冒険者達です。
まあ、なので将来有望な彼らのためにこの命を使うのであれば悪くはないでしょう。
「……では最後に順番をお伝えします。先頭からAランク、Cランク、Bランクの順番で来てください。Aランクに皆さんはでいる限り魔物をたくさんの魔物の討伐を、Cランクの皆さんは無理しない程度に、Bランクの皆さんは絶対に魔物を後ろに逃がさないようにしてください。なにせ私達の後ろにはもう冒険者は残っていませんので。兵士の方はいらっしゃいますが、魔物戦闘は本職ではないので後ろに回さないように。」
そこまで言うと私は皆さんお中心あたりに空中移動します。
……ふう、こういうのは苦手なんですが、やるしかありませんね。
「では行きますよ!おー!」
「「「おおおおーーーー!!!」」」
ふう、何とか少年の友達を助けることはできましたね。でも大きい魔法を連発したせいで若干頭が痛いですよ。たしか魔力回路とかいうのに負荷がかかっているんでしたっけ。こんなの初めてですよ。……いえ、さっきの含めて2回目ですね。
「よかった、無事だったんだな!リョウ!」
「心配したんだから!」
「怖かったよー……。」
「ごめん、ごめん……。はぐれてごめん……。」
おお、少年たちが集まって抱き合っていますね。仲がよろしそうで何よりです。空気ですよ、私。
……助けてあげたの私のはずなんですけどね……。まあ、きっともう会えないかもしれないと思っていた友達に再開できたのならそれはそれでありなのかもしれませんね。ちょっとだけそっとしておいてあげましょうか。あっ、その間にゴブリンの小指を回収しておきましょう。
そろそろ彼らも落ち着いてきましたかね。討伐部位の回収も終わりましたし、そろそろ声をかけるとしましょう。
「そろそろよろしいですか?」
声をかけると、4人は涙でぐしゃぐしゃになっている顔をこちらに向けてきます。……うーん、そんなに怖かったんですね。可哀そうに。誰か戦える人がついてきてくれればいいんですが、難しいんでしょうかね。
「あ、……お姉ちゃん。ありがとう、ほんとに。……もう、みんなと会えないかも、なんて思ってた。」
「また会えてよかったですね。そう言えば、3人は怪我とかはしてないですか?」
「うん……、だいじょぶ。」
「してないです。」
「だいじょぶです。」
「ならよかったです。」
うーん、まだ泣き止みませんね。もう少しだけ待ってあげましょうか。
もしかしたらまた魔物が出るかもしれないので周囲の警戒だけはしっかりしておきましょう。……なぜか今日はおかしいくらいに魔物に遭遇しませんが。




