えぇー?それは困りますね……。
私の攻撃が当たったオークはまるで標本に止められた昆虫のようにその場で静止し、ゆっくりと地面に倒れました。
……ふむ、やはり中級魔法の中でも一番収束性が高いこの魔法は当たれば強いですね。相手が来る場所が分かっていないと当てられないでしょうね。まあ無計画に突っ込んでくるだけの魔物相手であれば別に問題はありませんが。
「……す、すごいよ!お姉ちゃん!今のなんていう魔法なの!?」
「……雷属性魔法のサンダースピアーという魔法です。それよりも一体どうしてあなたが一人でここにいるのか詳しく教えてもらいますよ。」
私はギルマスに連れられて東側の冒険者ギルド支部にやってきました。どうしてこんなに冒険者ギルドの支部があるかというと、魔都がとても広いこととここにいる冒険者の数が圧倒的に多いからですね。昔は本部だけでしたが、途中辺りから仕事が回らなくなっていましたからね。場所と人数を増やすために支部を三つ作ったのでしょう。
さて、到着しましたね。本部は3階建てですが、支部は2階建てです。大きさこそ違いますが、構造はまったく同じです。客室がないため本部の2階部分は抜かれて作られているそうです。
普段であれば本部と同様にたくさんの冒険者で少し騒がしいくらいなのでしょうが、今日は別の意味で騒がしいです。ギルドの近くにいる冒険者の皆さんの顔には戸惑いや中には恐怖を浮かべている人もいます。
「やはり予想通りなんでしょうか?」
「……そうかもな。そうであってほしくはなかったが。とりあえず入るぞ。タイガに話を聞かないとな。」
タイガさんはここ東支部の管理しているサブマスです。ちょっと私は苦手ですが、優秀なことには変わりありません。
私がガラス扉に手をかけようとしたとき、ギルドの奥の方から誰かがすごい勢いで走ってくるのが見えました。
「……ギルマス。奥から誰かきます。」
「……うん?」
ギルマスは何か考え事をしていたようで生返事が返ってきました。
まあ奥から何か来るのが分かって入れば、そこをどくのが道理ですよね。扉の前から横にすっと避けたその直後、扉が大きく外に向けて開かれました。……なんか後ろで何かが潰れたような音がしましたね。
「うをあっ!?すまない!誰か、来てくれ!急遽ギルマスに報告に行かなくてはならなくて急いでいるのだ!すぐ戻るから医務室に頼む!」
「……その必要はない。タイガ、やってくれたな?」
ゆっくり立ち上がったギルマスが真っ黒い笑顔を浮かべていますよ。まったく目が笑っていませんね。私にはそんな芸当はできません。
「えっ!?ギルマス!?いらっしゃってたんですか!?」
「話は奥でしようか?早急に話したいことがあるのはお互い様だ。」
怒っているだろうにそれをすぐ引っ込めましたね。さすがギルマスです。
私は一通り少年に話を聞くことができました。
「つまり、あなたは西の支部に所属していて、今日は薬草採取の依頼のために外に出たと。最初は4人で行動していたけど、あのオークと遭遇したところでバラバラに分かれてしまった。それだけでなく一応持っていた剣もどこかに置いてきてしまったということでいいですか?」
「うん!皆も心配だけど、あの剣も絶対回収しないと……!」
「そんなに大事な剣なんですか?」
「初めて街の外に連れて行ってくれた冒険者のお兄ちゃんがくれたんだ。もう使わないからって。」
……えー、すごい面倒くさい状況になったんですけど。絶対ついていかないといけないじゃないですか、私……。
もちろんここで放置してもいいですが、そうしたらこの子は一人で絶対友達と剣を探しに行きますよね。……自殺行為なんですよね、これが。もし魔物に遭遇したらそれこそはぐれゴブリンやはぐれスライムでも危険ですよ。しかも探し物をしながら。魔都付近とはいえそれなりに広いですからね、こちらも難航しますよ。
「……一応聞いておきます。これからすぐに街に帰るよう言ったら帰ってくれますか?」
「それはムリ!家族を見捨てるなんてできない!」
「そうですか……。」
もー、家族のためならしょうがないじゃないですか!あー、もう分かりましたよ。
「しょうがないですね。ですがあなた一人での行動は危険ですので、私がついていきましょう。ですが、私にも依頼があるので友達と剣を回収でき次第すぐに帰ってもらいます。いいですね?」
「……でも、まだ薬草が……。」
「え?そっちもまだなんですか?」
「うん、途中であれに会っちゃったから……。」
……もうこうなったら全部面倒見てあげますよ!乗りかかった船というものです。
「……じゃあ、さっさと友達と剣を探しに行きますよ!急がないと日が暮れてしまいます。」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」
急がないと私の依頼も……。いえ、それよりもさっさと見つけることを考えましょう。




