はぢめての依頼
「何なんですか、あの人は!お兄さんは意地悪がしたかったんですか!?それとも嘘をついたんですか!?」
今私達は冒険者ギルドを出て大通りを街の外の方を目指しながら歩いています。討伐依頼そのものは受けられましたが、あの受付嬢さんのまったくこちらの話を聞かない態度はイラっときました。
「いいや、意地悪のつもりも嘘をついたつもりもないよ。僕はいつもソフィアさんに依頼の紹介をしてもらっているんだ。」
「へぇ?……お兄さんはそのような趣味があったんですか?」
ソフィアさんの華奢な体型を思い出しながら、そうお兄さんに問いかけます。お前はロリコンなのかと。
「違うよ?まあ気に入らなかったら他の受付嬢さんの所に行けばいいんじゃないかな。僕は言われたように普段頼っている受付嬢さんを紹介しただけだから。」
「うむむ……。」
そうなんですよね。あのソフィアさんの態度から普段から二人に交流があることは疑いようがありません。でも、だからこそ気に入らないのです。お兄さんはそんな人と仲良くなるような人ではありません。……これは要観察ですね。
「さて、そろそろ門が見えてきたよ。冒険者カードを出せる準備をしておいて。街から出るときにも帰ってくるときにも必要だから。」
そうお兄さんに言われたところで、ようやく私は目の前に城壁がそびえたっているいることに気づきました。そして私達が歩いて向かっている先には短い列ができていて、その先には兵士さんが立っています。
なるほど、冒険者カードは身分証のようなものですもんね。街の出入りに必要なのは納得です。短い列は私達と同じような冒険者たちによってできていて、4人でパーティーを組んでいるように見える最後尾の彼らはしっかりと防具と武器を装備しています。……これが普通の冒険者ですか。
……私もこんな格好できたらよかったんだけどなぁ。賢者っていう職業上、武器は握れませんし。防具は魔法使いである以上、装備するのはあり得ませんし。
そんなことを考えていると、列の一番前までたどり着きました。
「はい、次の方。冒険者カードを見せてください。」
「はい、これです。」「……。」
「確認しました。ではお気をつけて。」
思ったよりもあっさりと通されました。受ける依頼の内容とかを聞かれるのかと思って若干構えていましたが、本当にただ冒険者カードを見せるだけでした。
城壁を抜けると、そこには馬車がすれ違えそうなくらい広い石畳の道が整備されています。そしてその周りには平原が広がっています。草木の高さはくるぶしに届かないくらいでとても歩きやすいですね。
「今日受けたのは、はぐれゴブリンの討伐依頼だよ。簡単に言うと、群れていない一匹だけのゴブリンを討伐するっていうこと。ルナなら危険じゃないと思うけど、初めての討伐依頼だから緊張感を保っていこう。」
「そうですね。あのランクスキップの試験の時に戦ったのとは別物と考えるべきですよね。」
「うん。じゃああまり街から離れないようにしながら探していこう。」
「了解です。」
くるっぽー!
三十分経ちましたが、私達は一匹も見つけられていません。一体どうしてでしょう?なんかそこらへんにいるもんじゃないんですか?
「どうしたの?もう疲れちゃったかい?」
「いいえ?ただ本当にどこにも見当たらないと思っただけです。」
「いや、まだ三十分しか立ってないじゃない。それにそもそもここら辺は魔都アニマの近くなんだからほとんど魔物はいないよ。」
「え?ならもっと魔物がいるところに……。」
「それはダメ。ソフィアさんに言われたでしょ?今日ははぐれゴブリンの討伐なんだよ。偶然遭遇しちゃって依頼以外の魔物を討伐するのは別にいいけど、自分から依頼以外の魔物を倒しに行くのは危険だからダメだよ。」
「……そうですね。」
そうでした。そういう依頼を受けたんでした。そして自分からそれを違反しに行くのはアウトでした。たとえそれが戦力的な問題で討伐に失敗しても、依頼外の魔物だけを討伐してもどちらも依頼は果たされていませんもんね。それにしっかりと罰金もありますし。
そうですね。確かに違反はよくありません。でも……、
「どうしたんだい?そんな顔して?」
「いえ、別に工夫するのは構いませんよね?」
「まあそれは個人の自由だけども……。」
「なら早速行きましょう!……マナ・エコー!」
これは自分の魔力を周囲に放ってその状況を把握するための魔法です。まあ効果時間が短いうえにものに当たるとそこで止まってしまうので、そこまで使い勝手はよくありませんが。
でもモノは使いようです。有り余る私の魔力をもってすれば、この無属性魔法の初級魔法でもとても便利な魔法になるのです!
放つ魔力を増やすと、少しだけですがものにぶつかっても貫通してくれるんです。それに気づくなんて
、さすが私!
はい、というわけで早速見つけました。えーと、まっすぐ西ですね。
「見つけました!」
「……え?」
ルナちゃん、戦えませんでした……。




