まったく、しょうがないですね。
まず、リスクの方から考えていきましょうか。
単純に知名度が上がりますよね。そうなると今みたいな平穏な生活は送れないかもしれません。でもそれは今更ですか。両親は英雄らしいですから。今まで言っていませんでしたが、ここ数年それなりに貴族としての付き合いもあったりしたんですよ。やれお見合いだの、お友達作りだの。まあ私には合わなかったのでそうそうに諦めましたが。
あとは……。強くならないといけないとかは別にリスクではないですね。どちらかというとメリットに近いかもしれません。吸血鬼なのが露呈するとかですかね。でも、それも本気で攻略するってなったら仲間には明かすでしょうし。それに表向きはエルフで貫き通すので大丈夫でしょう。
ならもしかして特に問題がないのでは?
「そうかそうか。それはよかった。……む。もう時間かの。ではそういうことで頼むぞ。これからは儂に時間ができ次第夢にお邪魔するからの。夢で会っても驚くでないぞ。」
おや?では今回がこの形で会うのは最後ということなんでしょうか?若干白い光が強くなってきていてよく見えませんが。
「そうじゃ、そもそもこれは初めて儂に交渉権を得られる特別な称号を獲得した時に一時的に作られる特別な空間なのじゃ。」
ではお兄さんもここに来たんですかね?どうやら称号を持っているような口ぶりでしたが。
「いや?来ておらんぞ?多分交渉権の無い称号じゃったのじゃろう。特別な称号はいくつかあるからここまで何人かここに来ておるがの。」
じゃあ、私と同じようなことを頼まれた人が何人かいるんですか?
「そうじゃな。まあ何人かは言わんがの。……おっと忘れておった。このことは誰にも言ってはならんぞ。儂との約束じゃ。」
そんなの言われなくても誰にも言いませんよ。そもそも神様と知り合いだってことを話すのは私の前世っていう家族にすら明かしていない秘密を暴露することにつながりますからね。墓までもっていくと決めてるんですから。……吸血鬼なので墓入るか分かりませんけど、私。
「そうじゃったの。ではこれからもこの世界を楽しんでいくんじゃぞ……。」
気が付くとギルド長室の中に戻っていました。目の前には冒険者カードがしっかりと握られていてそこに魔力を流したまんまだし、この部屋の状況も全く変わっていませんね。つまり、時間が止まっていたんでしょうか。
「確認できたか?」
ふむ、このギルマスの感じからそこまで時間は経っていないですね。やはり時間は止まっていたんでしょう。ゆっくり落ち着いて答えるんですよ、私。
「はい、できました。どうやら賢者には魔法が使える代わりにすべての武器が使用できないという制約があるそうで。」
「そのとーり!だから私がしたことは結局無駄足だったんだなぁー。せっかくダンジョンからの掘り出し物を持ってきたっていうのに。」
「へぇ、それダンジョン産だったんですね。妙な効果がついてると思いましたよ。」
「そうだよねぇ。あたしちゃんも使ってみたけど全然使えなかったよ!攻撃力自体は上がるんだけどね、精度が終っちゃうんだよね。」
「エウロペでも使えなかったのか。それじゃあ、誰にも使えないな。」
ちょ、ちょっと待ってください。
「もしかしてエウロペさんって結構すごい人だったりします?今の所めちゃくちゃいやな人なんですが。」
「えぇぇー!!??わたしちゃん何かやっちまったっけ!?」
「いや、どうして何もしてないと思うんですか?ランクスキップの試験の直前に渡してきたこれを渡してきたでしょうが。」
そう先ほど借りた杖を出しながら言うと、
「いやー、そんなことしたっけなぁ……。あ、返してくれてありがとね!」
「いえいえ。……ではなく!もししてなかったとしたら、どうしてこれが私の手元にあるんですか!?」
「あっはっは!なんでだろうねぇ?……じゃあ、あたしちゃんはここで失礼っ!」
「あ!ちょっ……!」
その杖を当然のように回収してから、笑いながら消えていきました。……え?やばくないですか?今のって空間魔法ですよね?魔法陣使わないで発動してたんですけど、あの人。
「……あー、なんだ。あいつのこと私から教えようか?」
呆然とさっきまでエウロペさんがいた場所を眺めていた私を不憫に思ったのか、ギルマスがそう声をかけてきてくれました。そんな私の隣ではお兄さんが、相変わらず台風みたいな人だ、と小さく呟いていました。
「……いえ、やめておきます。いつか彼女から直接聞きます。」
「そうか。……会えるといいな。」
ん?何か言いましたか?最後にボソっと何か言ってたような気がしますが、よく聞こえませんでした。
「それで、何かまだ聞きたいことはあるか?冒険者のこととかギルドのこととか何でも聞きな。まあ、あとでできたら受付嬢に聞けば分かるだろうがな。」
「なら今日の所は帰るとします。たくさんのことがあってそれなりに疲れたので。」
思えば今日はたくさんのことがありましたね。もともとギルドに登録するだけのつもりで来たのに変なのに絡まれたり、初めて魔物と戦ったり。ああ、杖を握ったのも初めてでしたね。
「……そうか。ゆっくり休めよ。ちなみに依頼は明日から受けられるからな。受けたかったらその時に受付嬢にでも聞くといい。わたしから話を通しておいてやろう。」
「ありがとうございます。」
そう言って私とお兄さんはギルドを後にしました。
今日はよく頑張りました、私!
できるだけ毎日投稿していくつもりですが、できないかもしれません。
でも二日に一話は必ず投稿しますので、その時は読んでいただけると嬉しいです。




