結構すごかったみたいです、私
「私のランクは一体どうなったんでしょうか?」
派生魔法を扱えるのがすごいということは、何となく分かりました。……本当ですよ?しっかりわかっていますからね。なにせCランク以上でしか使える人はほとんどいないんでしょう?ならすごいじゃないですか。
でも重要なのはそっちじゃなくてランクの方ですよ。そこまで目立ちたくはないですが、できる限り上の方がいいじゃないですか。それにお兄さんにも負けたくないですし。
すると、ギルマスが机の中から封筒を取り出してそこから一枚のカードを取り出しました。そしてそれを持ってこちらに近づいてきました。
「このカードに魔力を通せ。そしたら登録が完了する。」
そうして渡された黄色のカードに言われた通りに魔力を通そうとしたら、そこにはDランクの文字が書いてありました。
おお……!これはちょうどいいところを引き当てたのではないでしょうか!?お兄さんに負けているわけでは無く、そしてそこまで目立たないちょうど中間のランクですよ!
それが顔に出ていたんでしょうか、ギルマスが苦笑しています。
「まったく、そんな嬉しそうな顔をするな。そもそも最初からCランクでもいいんじゃないかとも思ったがな。それは規則でできないからDランクだ。適当にいくつか依頼をこなしたらすぐにCランクにあげてやる。」
「え?そうなんですか?」
「すごいじゃないか、ルナ!僕はそんなすぐにCランクに上がれなかったよ。多分一年くらいかかったんじゃないかな。」
「え?」
「まあ、ソルとルナの試験結果はまったく同じだったが、過程が少し違ったからな。ハンデ付きのルナとノーマル状態のソルが同じ結果だったんだよ。でも、結果は変えられないから変えられるとしたらその後だろ?だから何回か依頼をこなしてもらって慣れてきたらCランクでいいと私は判断した。」
「あー、やっぱりあの杖はハンデだったんですね。ギルマスがあんなのを認めるとは思っていませんでしたから意外でしたよ。」
「当然だ。そもそも試験だぞ?自分の誰かの装備を借りていいわけがないだろう。カンニングだ、そんなこと。あの時ルナが拒否していたらベストだったが、その後試験中にほとんど使っていなかったから良しとしようか。」
え?ちょっと待ってください。じゃあつまりあの杖は罠だったんですか?魔法が真横に吹っ飛んで行ったのは私のせいではなく杖のせいだったということでしょうか?じゃあこの杖を貸してくれたエウロペさんは……。
「じゃじゃーん!エウロペちゃん参上!」
その時、ギルド長室の扉が壊れそうな勢いで開かれました。そしてそこには足を前に蹴りだした状態で止まっている赤い髪の少女が立っていました。
えぇ……?大丈夫でしょうか、この人?こんなことしたらまずギルマスの逆鱗に触れるであろうことは分かりますし、そもそも自分のことをエウロペちゃんと呼んでますよ。地雷臭が半端ないですね。しかもあの杖を貸してくれやがった本人ですもんね。なんで私の前に普通に(?)これるんでしょう?
「やあやあルナちゃん、お元気かい?無事ランクアップ試験が終わって何よりだよ!」
「うるさいですよ?それにこの杖を渡してきておいて、よくもまあ私の前に普通に出てこれましたね?」
「あっはっは、それは気づかないルナちゃんが悪いね!冒険者の世界は結果がすべて!同業者に邪魔されないなんて考えない方がいいよ!まあそんなにたくさんあるというわけでもないんだけどね。そこのソルにだって経験はあるはずだよ。」
そう言われてお兄さんの方を見ると、少し気まずげに頬を掻きながら
「……あー、そうだね。二、三年前くらいにね。その時確か魔都から少し離れた村の近くに強い魔物が現れてね、その緊急依頼で組んだパーティーメンバーに裏切られて死にかけたことがあったっけ。まあ、魔物自体はそこまで強くなかったから普通に倒して終わったんだけどね。もし、僕一人で対処できないほど強い魔物だったらそこで僕は死んでたね。」
はあ!?そんな話聞いたことなかったんですけど!え!?あなたの妹なんですけど、私!
「なんでそれをその時私達家族に言わなかったんですか?」
「いや、言ったよ?お父さんにもお母さんにも。でもその時まだルナはちっちゃかったからね、その話をするには幼いと思ったんだよ。」
「……まあ、そこはそれでいいでしょう。で、お兄さんを裏切った相手は一体どうなったんですか?まさか、のうのうと冒険者やってるんじゃないでしょうね?」
「まさかな。そのために冒険者ギルドがあるんだ。その冒険者は犯罪者として処分されている。ちなみにさっき渡した冒険者ギルドのルールの所にも書いてあったがな。
……話がそれたな。早くカードに魔力を通してみろ。それで冒険者ギルドに登録が完了する。」
ああ、そうでした。エウロペさんのせいで忘れていました。じゃあ早速やってみましょうか。
ゆっくりと魔力をカードに流すと、少し流しただけでもう流れていかなくなりました。そして黄色いカードに私の名前と種族が浮かび上がりました。
「それで登録完了だ。改めてよろしく。私がここ魔都アンリの冒険者ギルドのマスター、アニマだ。」
ああ!そういえばギルマスの名前聞くの忘れてましたね、私。




