おや?まさか……!
そうと決まれば早速見せてあげましょうか。現代日本で培ってきた知恵というものを!こう見えてもそれなりに頭はよかったんですよ、私。
「ファイヤーボール。」
今度は避けられること前提で逃げる方向を右側に制限するようにウォーウルフの左側にファイヤーボールを撃ちました。
「ウォウッ!」
やはり右側に飛びますね。そしてその飛距離はおおよそウォーウルフ2体分ほど。なるほど、では次で終わりですね。
今度は二回目でウォーウルフも少し慣れてきたのか、回避だけじゃなくこちらとの距離を詰めてこようとしてます。うーん、でもそれは悪手じゃないでしょうかね。
「ファイヤーボール。」
距離が近ければ、当たりやすくなりますからね。ダーツだって近いほうが高得点取りやすいでしょう?要はそういうことなんです。
「ウォッ!?」
おやおや、うまくよけたようですね。でも、その動きはあまりに大振りではないですか?しかも着地の瞬間は動きが大きいほど隙が大きくなりますからね。
それは私が狙っていることでもあるのですが。
「ファイヤーボール。」
ウォーウルフが着地して動きが止まった瞬間を狙って放たれたファイヤーボールが見事直撃しました。
「ウウォォォン……。」
一撃でしっかり倒しきることができました。でもさすがにこの程度ですよね。冒険者じゃない一般人が倒せるくらいのレベルなんですもんね。少し手ごたえがなさすぎますが、次第に手ごたえがある敵が出てくるでしょう。
「準備完了です。」
今度は……うん?姿が大きいですね。私よりも背丈が大きいですよ。しかも随分体も大きいですね。ブタが二足歩行したような感じなのでしょうか。鼻も潰れてますし。
「今度は少し脅威度が上がるぞ。単体で脅威度Dの上位に当たる魔物だ。名前をオークという。」
はぁ?いきなり上がりすぎじゃないですか?まだ脅威度Eの上位の魔物すら戦ってないのに。まあ今言ってももう遅いですが!その代わりこの借りた杖を少しだけ使ってみましょうか。
借りた杖の先をこちらをにらみつけているオークの顔に向けます。そして
「ファイヤーボール。」
オークめがけて魔法を放ちました。すると、杖の先端からはこれまで放ってきたファイヤーボールよりも一回り大きいファイヤーボールが放たれました。当たればきっとあの魔物も一撃で倒してくれるでしょう。
「おおっ!……えぇ?」
そう。きっと当たれば一撃で倒せるはずでしたけどね。当たれば。
途中までまっすぐ進んでいたファイヤーボールはちょうど私とオークの中間地点で直角に曲がりました。そう、びっくりするくらい直角に。
「どういうこと、ですか……?」
私は当然ですが、オークもファイヤーボールが飛んで行った真横を見ていますよ。え?さっきまではこんなことありませんでしたよね?しっかり二体とも倒しきっていましたし。
……、落ち着きましょう。きっと初めて杖をつかったから慣れていなかったんです。
そう、気を取り直してもう一度。やればできる子なんです、私。
「ファイヤーボール!」
再度魔法を発動させると、先ほどと同じくらいの大きさのファイヤーボールが杖の先から放たれました。
そして、さっきとまったく同じ軌道を描いてファイヤーボールが結界に激突しました。さっきは全く見ていませんでしたが、先ほどのファイヤーボールも結界にぶつかっていたんでしょうね。
でも、これで少なくとも現段階では私にこの杖が使いこなせないことが分かりました。それに二発目となってはオークもよそ見をしていてはくれませんね。今度は真横にかっとんでいったファイヤーボールには目もくれず私にいる方向にのそりと動き始めました。
……しょうがないですね。一番威力が低いファイヤーボールじゃアレには効かなさそうですから、少しだけ威力のある魔法を使いましょうか。
「ファイヤーランス。」
同じく初級魔法ですが、初級魔法の中では一番の攻撃力を持つ魔法です。その分攻撃範囲は狭くなってしまうんですが、そこはまあ私なので。きっとどうにかなるでしょう。
手の上に浮かんでいる火の槍、……うーんこれは槍なんでしょうかね、すごいちゃっちいです。まあその火の槍をこちらにゆっくり近づいてきているオークめがけて放ちました。
まあ実戦で使った事はないですが、練習ではもちろんあるので的が動いていなければほぼ確実に当てられますよ。
「ブモオォォ!」
ほら、しっかり当たったでしょう?さすが私!
んー、でも残念なことに全く倒しきれてないですね。ファイヤーランスが当たった右腕を痛そうにオークが抑えていますよ。でも倒れていないし、膝すらもついていませんね。
しかもそれなりに痛かったのか私をさっき以上に睨めつけていますよ。
……初級魔法じゃダメだ、こりゃ。




