ランクスキップしてやりますよ。
「よし、では早速試験を始める。」
場所はギルド長室からギルドの横に併設されている体育館のような施設に移動しました。前にはギルド長が立っています。そのギルド長の手には何やら水晶のような魔道具が浮かんでいます。
そして周囲にはガヤガヤ騒いでいるたくさんの冒険者がいます。純粋な好奇心から来た人もいれば私の結果で賭けをしようなんていう無粋な輩もいるようですね。そりゃ、ギルド長室から移動してきたんですからしっかり皆さんの前を通りましたよ。でも悪いことではないですね。もしかしたらこの中に将来のパーティーメンバーがいるかもしれませんから。緊張しますけど。
「お前には選択権がある。魔物相手にするか、私相手にするか。魔物相手にする場合は連戦で少しづつ戦う魔物のレベルが上がっていく。それで倒せた脅威度の魔物に相当するランクが与えられる。私相手にした場合は戦うのは一回だが、それだけで全部が決まる。
さあ、どっちにする?」
……なるほど。雑魚(?)がたくさんかボス戦一回かのどちらかですか。とはいえ、魔物と戦った事はまだないので本当に雑魚かどうかは分かりませんが。
うーん、でもやっぱり冒険者になった後戦うのは魔物なんですよね。なら魔物と戦った方がいいかもしれません。
「魔物でお願いします。」
「いいだろう。まあ死にそうになったか、ギブアップしたかのどちらかでランクスキップの試験は終了とする。
……その前に、素手でいいのか?見たところ魔法使いのようだが、杖とかは使わないのか?」
「持ってないですね。使った事もないです。」
「そうか、では――。」
「私の杖を貸してあげようか?」
ギルマスの声を遮るようにして赤い髪の魔法少女のような恰好をした少女が飛び出してきました。そして手に持っている杖を笑顔で差し出してきてくれています。
……どうしましょう。これまで杖なんて使ったことないので使わない方が安全かもしれません。でも杖を使ってみたいというのもあるにはあるんですよね。
「どうするんだ?借りてもいいし、借りなくてもいいぞ。」
「……なら、お借りしてもいいですか?」
「もちろんだよ!私エウロペっていうの!終わったら返しに来てね!」
「私はルナです。分かりました。終わったらお返しに向かいます。」
私はお借りした杖を片手に持ってギルマスの方を見ます。
「では改めて始めるぞ。――魔道具起動。」
ギルマスがそう呟いた瞬間、水晶が光を放ちながら大きくなっていきます。ぶつかるかと思っていましたが、拡大していく間に水晶は形を失い、光の波のようになって広がっていきます。そして私を飲み込んでもう少し大きくなった所で拡大を止め、ガラスの壁のようなものに姿を変えました。
「これは結界だ。お前の攻撃が外に漏れないようにするためだけじゃなく、外部からの干渉を防ぐためでもある。まあ、試験を厳正に行うためだとでも思ってくれ。」
確かにあれだけ冒険者がいたら、誰かが魔法とかで攻撃してくるかもしれませんしね。試験用の魔物だけじゃなく、もしかしたら試験を受けようとしている冒険者のことを。まあ、あくまで可能性ですが。それにギルマス以外の人の声聞こえてきませんし。
「それと準備ができたらそう声を出すといい。そうすれば試験用の魔物が順次結界内に出現する。」
「分かりました。――準備完了です!」
ギルマスに言われたように声に出すと、目の前に地面から湧き出すように緑色の肌をした文字通りの魔物が現れました。背丈は1メートル少しといった感じでしょうか。目は血走っていて、今にもとびかかってきそうです。
「一応紹介しておくと単体じゃ脅威度Eでも最下位に位置する魔物、ゴブリンだ。」
「やはりそうですか。噂程度でしか知りませんでしたから初めて見ましたね。
と、それは置いといて。とりあえずファイヤーボール、っと。」
私は手のひらにこぶし大の火の玉を作り出し、それをまっすぐゴブリンめがけて放ちました。……あれ?
「グギャアア!」
ファイヤーボール自体はゴブリンに当たりましたが、途中で違和感を感じました。私の魔法が誰かに引っ張られたような。それこそ細い糸のようなもので私のファイヤーボールが引っ張られて、ずらされかけたと言いますか。……ふむ、初めての魔物との戦闘で緊張しているんでしょうか。まあ、次からは大丈夫でしょう。
「準備完了です。」
今度は狼のような魔物が出てきました。灰色の毛を逆立てているその魔物の目も先ほどのゴブリンと同じように血走っています。
「今度のは単体で脅威度Eの中位くらいか。ウォーウルフだ。」
「ふむ。まあとりあえず、ファイヤーボール、っと。」
先ほどと同じように火の玉がまっすぐ飛んでいきます。……今度は変な感覚がしませんね。
と思っていたら、
「ウォウッ!」
と一声叫びながらウォーウルフが大きくジャンプして私のファイヤーボールを回避していました。へぇー、まあ確かにそこまで速い魔法じゃないですからね。回避されてもしょうがないですが、若干どや顔っぽいことしてそうなのがイラっときますね。いえ、表情は変わっていませんが。
……よし、ファイヤーボールで止めをさしてあげましょう。イラっと来たので、私。重要なことなので繰り返しました。
私もちょっとだけ本気を出すとしましょう!
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