対象
三題噺もどき―さんじゅうろく。
お題:両性愛者・自転車・鳥籠
ザワザワと、蠢く人の群れ。
この中に私と同じような人間は、いったい何人いるのだろう。
そんなことをふと思いながら、横断歩道を自転車で通り過ぎていく。
:
私は、両性愛者である。
突然の告白申し訳ないが、事実なので許してほしい。
私は、今まで、その事を隠して生きていた。
今も隠し続けている。
自分の中の小さな鳥籠の中にずっと閉じ込め続けて。
まあ、それを今更どうこう言うつもりはないが。
それでも、辛かった。
小学生の頃は、同級生の男の子に恋をしていた。
―その時から、少し違和感はあったのかもしれない。
中学に上がってから異性だけでなく、同性にも惹かれるようになった。
同じクラスの女の子や、仲のいい友達。
もちろん、異性にも気になる人や好きな人はいた。
でも、それと同時に同性にも同じような気持ちを抱く事があった。
そして、ある日、初めて告白というものをした。
―それが、同性の子だったということが悪かったのだろうか。
その頃はまだ考えが浅かった、幼かった。
他を知らなかった。
私のこの気持ちは、誰もが抱くものだと思っていた。
友達としての好きではなく、恋愛対象としての好きだと、相手が理解した途端、物凄い勢いで罵られた。
「気持ち悪い―。」
その一言だけは今でも頭の隅にこびり付いていて、消えそうもない。
告白をしたあの子の、その表情も。
それからだ。
私は自分がおかしいんだと、自分を押さえつけ続けた。
どれだけ相手のことを好きになろうと、普通にしていようと。
何があっても告白は、しないと。
:
そうやって、押さえつけ、圧縮された思いは、それでも消えることなく、今も尚存在している。
この世に私と同じような人間か何人いるだろう。
―いるのなら、私を助けてほしい。




