「殲滅の章」Ep.8 「それでも」
奏人はカナトに殺された。呆気なく。制約などまるで意味が無いじゃないか。なんて奏人には考える時間もなく、奏人はゆっくりと死んでいった。
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見慣れた天井。ふかふかの感触。優しく暖かい手が自分の手を握っていた事に奏人は気づく。そこにはパジャマ姿の寺宮がいた。また心配をかけてしまった。
寺宮ははぁ...と安心そうな息をつきながらも心配していた顔は崩さない。
寺宮「今日は私が近くで見てあげますからゆっくり休んでください。」
また迷惑をかけてしまった。などと奏人は思いながら眠った。
6時。起きたはいいものの、寺宮が居ない。仕事にでも出たのだろうと奏人は思いつつ、自室の風呂に入り、ドライヤーで髪を乾かした。そして隊服に着替え、時間が過ぎるのを待っていた。
ステータス。と、奏人が呟いても何も出てこない。何故だ。この世界ではそういう仕組みでは無いのかと少し困惑する奏人だったが、あまり影響は無いだろうとすぐ諦めモードに入った。奏人の悪い癖が出たが、幸い部屋には誰もいない。
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奏人は8時になり、食事場へ向かった。静か過ぎる食事場にはステンドグラスから差し込む朝日が美しく誰もいない食事場を彩っていた。そして奏人は寺宮が並べてくれていたであろう朝食を食べ出す。
おかしい。これほど時間が経っているのに誰とも会っていないしすれ違ってもいない。奏人はそう思うと朝食を終え、他のメンバーを探しに部屋を巡った。最初は加賀知の部屋にノックした。反応がない。予想外な事にドアが空いていた。そして机の上に一通の手紙が置かれていた。
「常闇の森の倉庫に来い。」
手紙をよむと、奏人は変な意味で安心した。自分の字体では無いからだ。だが困った物だここから常闇の森までの距離は89km。移動手段が徒歩しかない奏人に89kmは当然日が暮れてしまう。奏人は少し考えた。そしてここから1番近く、1番頼れる人物。黒澤彩那だ。そして第5支部はここから約4kmなんとか着くだろうと思い、奏人は第5支部に向かって出かけた。
一方その頃加賀知達は
加賀知「なんのつもりだよ...神崎シロナ...」
シロナ「うるさい。お前らが奏人を奪ってるんだろ。」
加賀知は奪ってるなどと人聞きの悪い言い方をされ、少々腹が立った。
シロナ「まぁいいや...どーせ来るでしょーし」
シロナは奏人の性格上絶対に来ると思っていた。
加賀知はそれどころではない。班の奴らがどうなっているか気になって仕方ない。それはシロナにもお見通しでシロナは言った。
シロナ「加賀知班なら全員同じような状態よ。天月のせいで多少精神やられてるけどね」
加賀知は安心と共に更に怒った。自分の班がみな苦しまされていることに。許せない。奏人はこんな悪党と一緒に居たのかと思うほど加賀知は怒っていた。
奏人はその頃黒澤に事情を話し、馬車を借りていた。そして常闇の森につくと奏人は御者に1度帰ってもらい、2時間後に来てもらうように指示した。
そして奏人が30分ほど歩くと第1支部よりは大きい倉庫が現れた。とてつもなくおぞましい雰囲気を感じながらもドアを開けた。
中にいた加賀知班はみな精神をやられていた。
奏人「...っ!!!誰がこんな事を...」
そうつい声に漏らしてしまうほど悲惨な状況だった。そして奏人の目には寺宮が写った。
奏人「寺宮さん!!」
寺宮は酷く精神攻撃を受けていた模様で、少しも人と話す事は出来ないような程精神がやられていた。奏人の心には許せないどころの感情では無く、明確な殺意があった。そして加賀知班の人々全員を外に出した後、術を解いた。加賀知から若干の治癒能力を教えられていたのだ。そして動けるようになった者に、皆を看病させ奏人は中に入っていった。加賀知だけが見当たらなかった。何故だ。そう考えていると近くから椅子が倒れるような音が聞こえた。
そこにいたのは「加賀知」を痛ぶる「天月」だった。奏人はとてつもない憎悪と共に天月に飛びかかった。手に何かの契約の印のような物が見えたが関係ない。今の奏人はコイツを殺す。その感情しかない。そして奏人はとてつもない速度で殴りを叩き込む。が、全て当たらない。奴は自分にさえ幻覚を見せている。間に合わない。加賀知だけでも逃がさなければ。そう考えていると空いたドアから指す光に、人影が映っていた。シロナだ。
加賀知はもう既に意識を失っていて、到底動ける状況ではない事は把握出来ていたのでこの隙にと奏人は加賀知を抱え、外に出た。そして動ける者に任せ、もう一度中に入った。
シロナ「あんた1人でなにやってんの?」
シロナは天月にキレているそれも相当。
天月「あら?私達の目標は奏人を取り戻すことじゃなかったかしら?その為に邪魔な奴らを排除しようとしていただけなのだけれど。」
天月は平然とした顔で言う。目標は奏人を取り戻すことだと奏人も分かった。が、到底許せない。シロナであろうと天月であろうと。そう思っていたがシロナは「こんな事して言い訳ないじゃない。」
と言った。その一言で全てがわかった。これは天月が1人で勝手にここまでしたのだ。奏人はグルじゃない事に少し安心した。
天月「あなたが私を殺せば契約上涼介は死んでしまうのだけれど...大丈夫?」
シロナ「それでもここまでしたあんたを仲間だとは思わない!!」そう言いうとシロナは周りに無数の光の剣を出し、天月に攻撃を始め