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番外編19「初めての贈り物」

長らくお待たせしております!

年末企画として実施した「聖女男推しキャラ総選挙」、総合部門と読者部門にて1位を獲得した「宇佐神礼央」の番外編SSを投稿いたします!

参加してくださった方、ありがとうございました!楽しんでいただければ幸いです!


 異世界で聖女をやっていると、「ドラマや映画で見るやつ」を体験することが、ときどきある。早い話がそれだった。


 魔法学校での潜入を終え、お披露目パーティーに向けた準備の合間、休憩がてらに王都へ繰り出したときのこと。一人の女性が、生まれたばかりの我が子を抱いてやってほしいと声をかけてきたのだ。


 聖女が来たと聞きつけ、集まってきた野次馬の中央。恐る恐る抱いた赤ん坊は、やはり人とは思えないほどに柔らかく、うっかり落としてしまうのが恐ろしい。


 元いた世界で赤ん坊を抱いたことはほとんどなく、こちらに来てから魔法で小さくなったアンネさんを抱いたのが初めてだった。持ち上げた瞬間、シャチホコのように反り返ってしまった彼を思い出しながら硬直していると、もし俺が赤ん坊を落としても受け止められるように、アンネさんがさりげなくサポートに回ってくれた。


 この場にはフランさんやイーザックさんもいたものの、周囲の警戒を考えると、割ける人員は限られてくる。精神年齢はそのままに、体だけを赤ん坊にされた経験のあるアンネさんは適任だろう。


「首と背中、それから下半身を支えると安定感が出るかと」

「あ、本当だ。さすが、この前赤ちゃんやっただけありますね」

「…………フィル、キミは聖女様に何をさせているんだい」

「フラン、誤解だからね。そういう特殊な嗜好があるってわけじゃないから」


 俺の一言から、フランさんの中でアンネさん赤ちゃんプレイ疑惑が持ち上がっているような気がするものの、今まさに本物を抱いている状況では誤解を解く余裕もなく、そちらはイーザックさんに任せることにした。


 とにかく今は赤ん坊を無事に帰すことが最優先。知らない人間に抱かれてもぐずる様子のない赤ん坊に笑みを向け、そっと女性に引き渡した。


「元気に育つといいですね」

「ありがとうございます。聖女様のご加護があれば、きっと健やかに育つでしょう」

「わたしにそんな力ありませんよ」


 プラシーボ効果で赤ん坊が元気に育つのならいいが、さすがに人一人の人生にまで責任は持てない。褒め言葉の延長として飛び出す言葉をそっと否定すると、女性は遠慮がちにこう続けた。


「あの、聖女様。もう一つ、不躾なお願いにはなるのですが……よろしいでしょうか」

「わたしにできることなら」


 野次馬の手前、安請け合いはせずに答えれば、女性は少し安堵したように、腕に抱いた我が子に目を落とした。


「この子に名前をいただきたいのです」


 女性の腕の中でご機嫌な声を上げる赤ん坊は、無限に枝分かれした未来への道を掴み始めたばかり。人生においてそれなりに大きな意味を持つ名前というものを、今この一瞬で決めてしまうというのは、少し怖くもある。


 そこで、俺は少し考えたのち、女性からの依頼にこう答えたのだった。


「分かりました。何日かもらってもいいですか?」

 そのとき、俺の後ろにいた三人がどのような顔をしていたのかなど、このときの俺は知る由もない。



  ◇  ◆  ◇



「……アオコ」


 街から戻り、自室。椅子に腰を下ろし、数時間前に抱いた赤ん坊の青い目を思い浮かべながらひとりごちると、同じく青い瞳のアンネさんがこちらを見た。


「イクエ」


 子どもというのはやはり元気に育つべきだ。大きな病気や怪我なく、無事に大人になってほしい。そんな願いを込めた名前を呟けば、俺のことを手がかかる子どものように見ているらしいイーザックさんがこちらを見る。


「ソラミ……」


 今日の王都は晴れ。あの子の歩む人生が、今日見た一点の曇りもない青空のように澄み渡っているように。そういう意味を込めるなら、こんな名前になるだろうかと口にすると、のびのび育ったケースとして理想であろうフランさんがこちらを見つめた。


 結果として、聖騎士三人が揃って何か言いたげな目でこちらを見ているという状況ができあがっているのだ。聖女とはいえ、そうあることではない。


 さすがに露骨な視線にため息をつき、三人を見つめ返す。


「……言いたいことがあるなら直接言ってくださいよ」


 不満げにそうこぼせば、フランさんは一転してにこやかな笑みを貼り付けた。


「まさか。どれも素晴らしいお名前ですよ。キミもそう思うだろう、ザック」

「……こういうのはフィルに意見を聞くべきじゃない?」


 フランさんに水を向けられ、それをそのままアンネさんへと逃すイーザックさん。俺の名付けへのコメントを求められたアンネさんは、忖度なしの率直な感想を口にした。


「もし、先ほど口にされた珍妙な響きの単語が人名なのでしたら、ご再考を」


 真顔で飛び出したそれは、あまりにも遠慮がないものだった。言葉が丁寧というだけなあたり、慇懃無礼よりもストレートに無礼である。


 聞いておきながら不満が顔に出てしまっていたらしく、見かねたイーザックさんとフランさんが慌ててフォローに回った。


「聖女様、あの女性も唯一無二の名前を付けてほしいと思って頼んだわけではないと思いますから、もう少し気楽に考えてもいいと思いますよ〜」

「そうですとも。聖女様に考えていただくことに意味があるのですから、むしろそう珍しくない名前に価値を持たせることも可能ということです」

「その珍しくない名前が分かりませんし、わたしの周りにいる名前だと紛らわしいじゃないですか」


 つい拗ねたような口調で反論してしまったものの、これは言い返すために捻り出した文句ではなく、名付けにあたって本当に困っている部分だった。


 聖女の周りには、聖騎士だけでもかなりの数の人間がいる。ところどころ同じ名前という人もいるが、俺にとっての異世界ネームのレパートリーは彼らを元に構成されているため、いいと思った名前があっても、別の人の顔が浮かんでしまうのだ。


 仮に周りにいる人の名前をもらうにしても、看過できない問題がもう一つ。


「あと、こっちの名前がどういう意味を持つのかもよく分からないんですよね。ほら、この世界の文字は文字だけで意味を表せないじゃないですか」

「……というと?」


 俺の説明はあまりピンと来なかったのか、イーザックさんが首を傾げる。同じ世界の中ですら難解とされる日本語を、違う世界の人に説明するというのは考えるまでもなく骨が折れる。だがここで納得してもらえなければ、単純に俺のネーミングセンスが壊滅的ということになってしまうのだ。


 自分の名誉のためにも、俺は俺の名付けが珍妙に思える理由を丁寧に説明することにした。


「わたしがいた国の文字は何種類かあって、そのうちの一番数が多い漢字ってやつは、それ単体で意味を持つ文字なんです。何だっけ……表意文字とか何とかって母が言ってました。こっちの世界の文字は音しか表さない表音文字」


 言いつつ、影属性魔法で空中に名前の候補を映し出す。「青子」、「郁江」、「空美」、いずれもこちらの世界では意味どころか発音の仕方も分からない記号の羅列でしかないだろう。


 日本語を扱わない人からすると難解極まりないというのは理解できるものの、これに慣れてしまうと却って異世界方式の文字表記の方が難しく思えてしまうのである。


「わたしは名前を考えるとき、漢字も一緒に浮かべてますけど、こっちの人には当然伝わりませんし、名前を聞いても由来までは浮かばないじゃないですか。だからおかしな響きに聞こえるんだと思います」


 我ながら簡潔かつ分かりやすい説明だったのではないかと、自分で自分に満足しながら締め括る。どうやらイーザックさんとフランさんは俺の言わんとするところを理解してくれたようだが、そうなると必然的に、異世界の文化を「珍妙」の一言で片付けたアンネさんへと非難が向く。


 二人から刺すような視線を向けられたアンネさんは、さすがに罰が悪そうな顔で代替案を口にした。


「……こちらの人名を手当たり次第に調査し、一覧としてまとめます。そこからお選びいただくというのは」

「それだとわたしに頼んだ意味なくないですか? 聖女につけてもらったっていう付加価値的な意味合いの他に、異世界の言葉に因んだ名前の特別感とかも考えたんでしょうし」


 アンネさんの案は現実的なものだったが、しかしあの女性の要望に沿うものとは思えない。聖女からもらった名前なら何でもいいと言われてしまえばそれまでだが、だからといってあまり適当につけてしまうのも気が引ける。


 とはいえ、願いを込めすぎて重たすぎる名前になるようなことは避けたい。どうしたものかと頭を悩ませていると、イーザックさんが感心したように声を上げた。


「それにしても、やっぱり世界が違うと文化も違うんですね〜。聖女様の名前も、こちらではかなり珍しいですから」

「そうなんですか? レオって名前は結構いそうですけど」

「基本的には男性名ですので、レオという名前の女性はそう多くありません。ボクとしては、勇ましくて素敵な名前だと思いますがね」

「あ、ありがとうございます……」


 フランさんからフォローめいた補足をされ、ぎこちなく礼を述べる。辛うじて違和感を持たれない程度に中性寄りの名前であったことに感謝しつつ、話題をそっと俺の名前から逸らすことにした。


「えっと……名前っていえば、ハナさんもこっちだと珍しい名前じゃないですか?」

「そこまで多くはありませんけど、ネロトリアでもたまに見る名前ですよ〜」

「あれ、そうなんですか? てっきりシノノメ出身なんだと思ってました。イツキさんとかシオンさんに近い雰囲気ですし」

「実際にシノノメ出身かもしれませんが、彼女の出自は皆が言及を避けているところがありますので」


 アンネさんが困ったような顔で言ったことで、こちらに来てすぐの頃に聞いた話を思い出す。日本にいた頃はあまり馴染みがなかった類の差別も、この世界では健在なのだ。もしかすると俺が知らなかったというだけで、元の世界にいた頃も、どこかでそうした差別に苦しむ人がいたのかもしれない。そう思うと、相槌を打つ声もつい沈み込んでしまう。


「ああ……桃色の目ですか。元被差別階級の証なんでしたっけ。元とは言っても、それを理由に何か言われることもありますよね」


 俺が言うと、アンネさんたちは何とも言えない顔で黙り込む。この場にいないとはいえ、ハナさんにとっては触れられたくないであろう部分には触れない、大人の気遣いなのだと解釈することにした。


 その気遣いを受けて、俺もやや強引に話題を元の流れへと戻す。


「にしても、今さらながらすごいこと引き受けちゃいました。程よく異世界で、でもシノノメっぽくはなくて、ネロトリアでも溶け込める名前となると、結構難しいですね」


 あの女性も唯一無二の名前を望んだわけではないとは言われたものの、聖女に頼んだ結果があまりにありふれた名前では拍子抜けしてしまうだろう。


 どうにかあの女性の期待に応えつつ、しかしあまり奇抜すぎない名前はないものかと考えを巡らせていると、不意にアンネさんが声を上げた。


「でしたら、このような決め方はいかがでしょうか」

 アンネさんが提示したのは、ごくシンプルで、しかしあの女性のニーズを的確に叶えるアイデアだった。



  ◇  ◆  ◇



「レナって名前はどうですか?」


 数日後、あの女性の元を訪ねた俺は、その女性と旦那さんが営む店先で、赤ん坊の名前を伝えた。父親に抱かれる当の本人は、今ここで自分の名前が決まりかけていることなどつゆ知らず、俺に向かって手を伸ばしながら可愛らしい声を上げている。


 どう応えたものか分からず、小さく手を振ってから、懐から二枚の小さな紙切れを取り出した。


「いろいろ考えてみたんですけど、いい名前が浮かばなくて。わたしの名前から一文字取ったんです」


 女性に手渡した紙には、「礼奈」という名前が記されている。こちらの世界では意味をなさない、漢字表記の名前だ。


 補足の説明として掲げた紙には、俺の名前である「礼央」と記してある。読み方や意味までは分からなくとも、彼女の名前が俺の名前の半分から取ったことは伝わるはずだ。


「わたしの名前はこっち。文字の片方を取りました。礼奈の礼は礼儀とかって意味があります。奈はわたしの故郷だと人の名前によく使われる字です。こっちの世界にも馴染みつつ、わたしの要素を少し入れてみたんですけど、どうですか?」


 そう問えば、夫婦は互いの顔を見合わせ、それからどちらともなく顔を綻ばせる。どうやら気に入ってもらえたようだ。


「素敵な名前をありがとうございます、聖女様!」

「この子が大きくなったとき、由来について話せるのが楽しみです」

「大袈裟ですよ。候補の一つくらいにしておいてください」


 謙遜しつつそんなことを言うと、夫婦は上がってお茶でもと誘ってくれたが、さすがにこれを素直に受け取れる立場ではない。公務があるからとその場を辞して、遠くに停めた馬車へと戻った。


 手元に残ったのは、自分の名前を書いた紙切れが一枚。説明のために書いたはいいものの、すっかり持て余してしまった。名札としては意味をなさず、しかし名前の大切さを実感した直後にこれを捨てるのも忍びない。


 どうしたものかと頭を悩ませながら紙切れと睨めっこしていると、いつの間にか隣のアンネさんが俺の手元を覗き込んでいた。よそ見をしながら歩いていることを咎められるかとも思ったが、飛び出したのは意外な問いかけ。


「二文字目にはどのような意味があるのですか?」


 素朴な疑問として吐き出されたそれは、俺自身も考えたことがなかったもの。両親に名前の由来を聞いたことはあったが、「星座にちなんでつけた」「名前に願いを込めすぎても重たくなってしまう」という話しか聞けなかったのだ。専門分野を考えるなら、きっともっと詳しい話を聞くこともできたはずだというのに。


 どのみち両親に確認することはできないが、異世界であるのをいいことに適当なことを言うわけにもいかない。悩んだ末、俺なりの推論を展開してみることにした。


「えっと……確証はないんですけど、たぶん『真ん中』とかって意味だと思います」


 中央という単語には、「真ん中」という以外の意味はない。とすると、どちらの文字も同じ「真ん中」を示すものとして捉えるのが無難だろう。


「礼儀の真ん中とは、礼儀正しい礼央様によく似合う名ですね。名は体を表すということでしょうか」

「いやいや、普通に音ありきで当てた字だと思いますよ。うちの家族は星から名前を取るって話、前にしたような気がします」

「聖女となるにあたり、礼央様には様々な礼儀作法などをお教えしましたが、素養がある分、あまり苦労せずに済みました。与えられた名に相応しい方に成長されたということでしょう」


 柔らかい笑みと共に飛び出したそれは、もはや聞き慣れた類の褒め言葉。だが、つまりは両親が教育という形で贈ってくれた財産が、今ここで役立っているということなのだろう。


 名前は初めての贈り物。今後、長きにわたって掲げ続ける宝として、相応しいものを与えられたことを願いながら、それに絡めた軽口を一つ。


「名付けの方はてんでダメだったみたいですけどね」

「それは……」


 どうやら否定できないようで、アンネさんは気まずそうに視線を逸らす。この人は本当に、つくべきでない嘘はつけない人だ。世界が違えば感性も違うとはいえ、こうも正直な反応を返されては、怒るよりも心配になってしまう。仕方なく、小さくため息をつき、それを許しの合図とした。


「冗談ですって。たまたまこっちの世界で受け入れられなかっただけで、向こうじゃ普通の名付けですし」

「…………そうなのですか」


 心底以外そうな返答に、つい責めるような視線を向けると、即座に目を逸らされた。今度はお互いにあからさまだ。


 そうして一方的に数秒間アンネさんの横顔を睨み、まるで納得がいっていないという声色のままで続けた。


「何にせよ、フィリップさんにもらった案のおかげでいい名前をつけられましたし、何かお礼しますよ」

「いえ、私は思いつきを口にしたに過ぎませんので」

「結果的に喜んでもらえたのはフィリップさんのおかげですから。あんまり大したものはあげられませんけど」


 アンネさんなら無理難題をふっかけてくることはないだろうという信頼からそう言うと、彼は少し考え込むような仕草を見せる。そうして、俺の手元を指さした。


「でしたら、そちらを」


 そこにあるのは、俺の名前を書いた紙切れが一枚。金品を要求されても困るが、これはこれでさすがにやっつけ感があるような気もしてしまう。ゴミ回収の意図さえありそうだ。


「これでいいんですか?」

「ええ、十分です」

「……捨ててきてほしいわけじゃないんですけど」

「いただいたものを捨てる道理はありません」


 アンネさんは妙なことを言われたような顔をしてみせたが、元から無欲な彼がこの紙切れを欲しがる理由など、「代わりに捨てておきます」という以外に思い浮かばない。


 とはいえ、アンネさんが「捨てない」と言うなら、本当に捨てる気はないのだろう。後生大事に保管されるかもしれないと思うと、紙切れをそのまま手渡すのも気が引けて、往生際の悪い提案を一つ。


「このままっていうのも何ですから、布の端か何かもらって、お守り袋に入れて渡しますよ」

「そのように手間をかけていただく必要は……」

「たまには公務以外のこともしないと。息抜きの一環ってことにしてください」


 本当は裁縫など、制服のボタン付けがせいぜいだったが、アンネさんが何も言わないのをいいことに、追い打ちをかけるようにして言葉を続ける。


「それに、わたしの名前には獅子って意味があるんです。百獣の王とも言われてる動物の名前なんですよ」


 女性のものとするにはあまりにも雄々しく、ともすれば性別が明らかになる恐れもあるこの名前は、本当なら一人称と共に封じるべきだったのかもしれない。


 それでも、彼は俺の名前を隠すことはせず、俺のかけらを残してくれた。彼が俺の名前を呼んでくれるから、俺は今も自分を見失わずにいられるのだ。


「しっかり守ってくれそうで、頼もしいじゃないですか」


 誇らしげにそう付け加えれば、アンネさんは釈然としない様子ではあったものの、最終的には紙切れをお守りとして渡すことを了承してくれた。


 願わくば俺の名に宿る獣の王が、彼を少しでも多くの脅威から守ってくれますように。


 そんな願いを込めた名前の加護とは別に、本物の魔法もいくつかかけておこうかと思案していると、すぐさま何かを察知したらしいアンネさんが、先回りするように釘を刺してきた。


「もし何かの魔法を付与する場合には、事前にお知らせくださいね」

「えっ、何でバレたんですか? こっそり仕込もうと思ってたのに」

「おやめください。くれぐれも」


 険しい顔で言い含められる頃には、停めてあった馬車も目と鼻の先。俺が贈った「レナ」という名前が、名付けにおける一つの流行となることを、このときの俺は知る由もない。


次回更新予定日《5/25》*番外編更新

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