9話
最後のカードを使い、10日ほどが経過した。
最近ではコンビニへ行くと早乙女さんをよく見かけ、少しは、仲良くなった気がしている。
さて、今日は待ちに待ったあの日、今俺は、現金を引き出して、不思議屋の前にいる。
少し来ていないだけで、かなり久しぶりな感じがする。
いつものように、横開きの扉を開けて中へ入る。
「いらっしゃ~い。あら、久しぶりねコウ。」
「お久しぶりです、シュテルさん。今日も引きに来たんですが、まだ、残ってますか?」
「ふす、大丈夫よ。まだまだ、たくさん残ってるわよ。」
「…それは、売れてないって事ですか? そういえば、毎回毎回、来たときに客の1人も見ませんけど、大丈夫ですかここ?」
「ん~、お客様は、チラホラ来るけど、これを買うのは、コウしかいないわね。私が言うのもあれだけど、こんな怪しい物を買う人なんて、そうそういないわよ普通。だから、コウは唯一の上客様よ!!」
「…それは、誉められているんでしょうか?」
サッと視線を反らすシュテルさん…
「まぁ、いいですけど… それじゃあ、一番くじお願いしてもいいですか?」
「はい、いいわよ。今日は何回引くの?」
「今日は大奮発して、15回です!!」
「…今日は、結構引くのね。本当に大丈夫?」
「はい、今日は、ボーナスが支給されましたから。」
「分かったわ。それじゃあ、15回ね。」
くじの入っている箱を渡してくれる。
手をいれ、少しシャッフルさせながら、15枚取り出し、めくっていく。結果は、B賞1枚、D賞3枚、E賞4枚、F賞7枚だった。
印字は、
B "♭‡★☆"
D "◎★☆" "∵★☆"✕2
E "δ£★☆"✕2 "✕♡★☆" "▽▼₩♯"
F "€¢"✕2 "△¢"✕2 "○△●■"✕2 "※¶$¥"
だった。
記号からして、かぶりが多くなってきた。
でも、一番嬉しいのがやっと上位賞が出たことだ。
「おっ、今回は上位賞も当たってるね。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
その後、少し世間話をして、家に戻った。
その日の夜、俺は早速上位賞のB賞のカードを枕の下に敷き眠りについた。年甲斐もなく、ワクワクしてしまい、しばらくの間寝れなかったが、気を落ち着かれると、徐々に睡魔がやってきて、気づいた時には、夢の中だった。
◇
ん、何だか胸が苦しい…
目を覚ますと、ウサギが俺の上に乗っていた。
軽く頭を撫でた後、そっと上から退かす。
"目の前のリンゴを地面に落として下さい"
ボードが出ると同時に、リンゴを乗せた机も現れた。
俺は、ウサギを引き連れて、机があるところにむかう。
リンゴを手に取り、確かめてみるも、普通のリンゴだ。
俺は指示の通りに、リンゴを地面に落としてみた。
途中でウサギがリンゴに飛びかかることもなく、そのまま地面に落ちて、コロコロと転がった。
"♭‡★☆を覚えました"
無事に覚えたようだが、最近なんだが手を抜いている感が否めない。
それはさておき、覚えた能力について、考察してみる。
意味で通りだと、指示には何かしらの意味があると見て間違いない。
リンゴ、落とすのキーワードで思い浮かぶのは、あれしかない。
俺は、自分の体に負荷をかけるイメージをする。
すると、ズシリッと体が重くなるのを感じた。推測通りだ。
今度は、逆の事をイメージする。まるで、羽が生えたのではないかと言うほど体が軽い感じがする。
イメージをやめると、突然襲いかかる、睡魔。
俺は抗うことなく、横になり瞳を閉じる。
閉じる際、目に写ったのは、リンゴに貪りつくウサギだったのは、たぶん気のせいだろう。