8話
いつも通り、アラームで目覚めた俺は、やる事を済ませ、仕事へむかう。
途中の赤信号で待っている際、俺の背後から誰か近寄ってくる気配を感じ、バッと振り返ると、すぐ目の前に、後輩の朱里の顔があった。
「あわわわ…」
朱里は、気が動転したのか、後ろへ倒れそうになる。
危ないと思った俺は、咄嗟に歳を感じさせないほど機敏な動きをし、朱里の背中に腕をまわし、支えていた。
「大丈夫か、朱里?」
「す… すみません、先輩!! だ… 大丈夫です!!」
朱里の顔が赤くなっていく。
周りを見ると、信号待ちしたいた人がこちらをチラチラ見てくる。
朱里も、転びそうになったのが、恥ずかしいのだろう。
「そうか、それは良かった…」
何事無かったかのように、朱里を、立たせてやる。
「あ… もう、ちょっと、腕の中にいさせてくれてもいいのに…」
立たせた際、何か言っていたが、声が小さくよく聞こえない。
聞き返そうかとも思ったが、信号も変わったので、歩きだす。朱里も、俺の横についてくる。
俺は、歩きながら話しかける。
「そういえば朱里、さっき、何か言ったか?」
「何も言ってません!!」
「そ… そうか?」
なら、俺の気のせいか。
「そういえば朱里は、何をしようとしたんだ?」
「せ… 先輩を後ろから驚かせようとしたんです!!」
「なんだよそれ…」
「まぁ先輩が、急に振り返るから、逆に私が驚きましたけどね。そういえば先輩、よく気づきましたね。私って結構、後ろから驚かすの得意なんですよ?」
「ん~、何となくかな?」
「何となくですか… そこは、私だからって言って欲しかったです…」
「何か言ったか?」
「何でもありません…」
そうこうしている内に、仕事場に到着した。
◇
「終わった~!!」
今日は、社長の息子が休みだったので、何事もなく仕事を終えた。
帰宅途中、昨日のことが気になった俺はコンビニへ寄った。
レジには、いつも見かける男性定員しかいなかった。
夕食の買い出しを済ませ、レジへむかう。それとなく、早乙女さんについて聞いてみると、どうやら熱をだして休みらしい。
まぁ、昨日あんなことがあったから、無理もない。
そのまま、帰りついた俺は、レンジで弁当を温めながら着替えを済まる。その後も、寝るまでいつものようにダラダラ過ごし、ベッドに入る。
この前購入した分は、これで最後のカードだ。
いつものように、枕の下にカードを枕敷き、目を閉じた。
◇
頬に何か温かい感触を感じ、目が覚める。
横に、連日会っているウサギがいた。
頭を撫でてやると、体を擦り付けてくる。
心が和んでいると、いつものように、ボードが現れる。
"目の前の道具に触れて下さい"
すると、目の前に、何が現れた。それは、鉄のポールとその尖端に球体の鉄の玉がくっついてある道具…
耳を澄ますとバチバチと音がする。俺の考えが間違いでないなら、よくテレビ番組で出てくるあれだ…
横目でウサギを見ると、俺からかなりの距離を取っていた…
先程までのほのぼのとした空気が一転して、俺は、明智を睨み付ける死に間際の織田のようにウサギを見ていた。
プイッ ウサギがその視線に耐えれなかなったのか、そっと顔を反らす。
「あいつ~!!」
それでも、ウサギを見ていると、今度は体ごと反転させ、可愛らしいお尻をこちらにむけやがった。
諦めた俺は、しぶしぶ足を前に出し、目の前の球体に近づく。
確かに、怖い気持ちはあるが、2割程やってみたかったと言う気持ちもなくはない。
俺は、勢いよくその球体に触れようとする。
バチッ
紫電の光が俺の手を容赦なく攻撃する。
「いっ!!」
痛みは一瞬、徐々に感覚を取り戻していく。
"◎★☆を覚えました"
ちゃんと、何かを覚えたようだ。
足に何が触れる感触がした為、下を見てみると、ウサギの前足をチョコンと、乗っていた。例の道具は俺が触れたあと、どこかへ消えている。
「お前!!」
俺は、力一杯身体中を撫でまわしてやった。
最後の方は、ピクピクしていたが、これで手打ちにしてやる。
そういえば、撫でている際、時折パチッと音がしていた。
俺は、自分の指を擦り合わせてみると、パチッと一瞬だが、光ったような気がする。
すると、いつもの眠気が襲ってきてので、ウサギの横に寝転がった。