4話
準備の終えた俺は、仕事へむかう。
いつも通りの、公園横の出勤道を通りすぎる。
今日は、日曜日。休日もあってか、公園からは子供たちの笑い声が聞こえてくる。
だけど、ふと気になって、振り返ると、ボールが車道へ飛び出してきた。それを追ってきたのか、小さな子供まで車道へ飛び出してきた。
ラノベかよと思うほど、運悪く猛スピードの車が突っ込んでくる。
俺は、気づいたら飛び出していた。
周りの悲鳴、急ブレーキ音、胸の中の小さな温もり、そして、襲ってくる痛みに急発進する車の音。
「痛っ!!」
なんとか車に、轢かれることは無かったが、避けたさいに硬い地面を転がり所々打ち付けたせいか、身体中が痛い。
そうだ、子供は!! すぐに、胸の中にいる子供を確認する。良かった… 胸の中で泣いているが、大きな怪我をしている様子はなさそうだ…
なるべく優しく声をかけながら、子供を立たせる。
「大丈夫かい?」
「ヒックヒック」
泣いていて、喋らない。
「ひより!!」
公園から、母親らしき女性が走ってくる。
「ママ~」
子供は、その女性のもとへ飛び込み、親子は抱きしめあう。
母親が来て安心したのか、少しすると子供は泣き止んだ。
女性は、子供を連れて俺のもとにやってくる。
「ひよりを助けて頂き、本当にありがとうございました。ほら、ひよりも。」
「お…おじちゃん、あ…ありがとう…」
「いえ、助けられて良かったです。それよりも、怪我はないかい?」
俺は、ひよりちゃんに聞いてみる。
「ひより怪我とかしてない?」
「あ…足が痛い…」
みてみると、膝に擦り傷が出来ていた。
俺は、ポケットから絆創膏を取り出し、ひよりちゃん手渡す。仕事場にはよく怪我をする後輩がいるから常備しているのだ。
「ありがとう、おじちゃん!!」
「どういたしまして。それじゃあ、私は仕事がありますので、ここで失礼しますね。」
「本当にありがとうございました。」
再びお礼を聞き、俺は仕事場へむかう。途中止まり振り返る。
ひよりちゃんたちも、戻るため歩いていた。
「こんなときに、ラノベみたいに回復魔法が使えたらあんな傷なんかすぐ治るのになぁ…」
そんなことを呟くと、一瞬、ひよりちゃんの膝が光ったような気がした。
気のせいだろと前を向き、歩き出す。
◇
「あれぇ?」
「どうしたのひより?やっぱりどこか痛い所があるの?」
「ううん、違うの。全然痛くないの!!」
「?」
傷口を確認してみると、最初から傷など無かったかのように、塞がっていた。
「!?」
「どうしたのママ?」
「き…傷が治ってるわ…」
幸の知らない所で、そんな不思議な現象が起こっていた。
◇
仕事場に着いた。中へ入ろうとすると、
「おはようございます、先輩!!」
聞き覚えのある声で振り返ると、後輩がいた。
「おはよう、朱里。」
「それよりも、さっきは見てましたよ先輩!! 格好良かったです!!」
「ん? 何の事だ?」
「子供を助けた事ですよ!!」
「あぁ、その事か。」
「あぁって… そういえば、体は大丈夫なんですか先輩?」
「ん、あぁ、まだ、少しズキズキするが大丈夫だ…」
「本当に大丈夫ですか? 結構派手に転がっているように見えましたよ?」
「そうだな… って、お前はどこから見てたんだよ!!」
朱里の鼻を軽くつまむ。
「や… 止めてくださいよ先輩!!」
すぐに手を離してやる。
「おっと、こんなことしている暇はなかった。早くいかないと遅刻になるな。ほら、朱里も行くぞ!!」
「はい!!」
そう言って、2人で仕事場に入っていく。