25話
「それは、数日前に起こりました。魔族の方が、この森にやって来たんです。魔族がここにくるのは、珍しいのですが、さほど気にしていませんでした。ですが、その魔族たちは、この森の中にある私たちの棲み処にやって来て、我々妖精族に、配下になるように、言ってきたんです。」
「魔族が妖精族を配下に? それは良くある事なの?」
「いえ、私が知る限りでは、初めでです。」
「そうか… それで、君たちは、何て返したの?」
「私たちの長、妖精女王… 私のお母様は、それを、拒みました。」
話の途中から、気配察知に数人の気配が引っ掛かった。
俺は、話を聞きながら、遠眼を発動し、意識を少しそっちにむける。すると、
『並列思考スキルを覚えました』
スキル発動が楽になる。
「それで?」
「その日を境に、魔族の方が、森で暴れまわるようになったんです。それに、いち早く気づいたお母様が、棲み処に強い結界を張ったので、棲み処に、被害は出てないのですが、それも時間の問題で…」
「成る程な…」
その妖精女王の疲労が限界に達しそうなのだろう。
そして、どうやら遠眼の先にいたのは、角や羽の生えた3人組… 今話に出ていた魔族たちだろう。遠眼を解除して、気になった事を尋ねる。
「何で、その妖精女王が、魔族の申し出を断ったのか聞いても言いか?」
「断った理由ですか? 確か、魔族同士の戦争に参加したくないからだと聞いています。」
「魔族同士の戦争?」
「はい、確か棲み処に来ていた魔族がそう言っていたんです。」
と言うことは、魔族は、妖精族をその戦力として、目をつけたのかな。
「それで、何で君は、棲み処から出てこんな所にいるんだ? 今の話なら、その結界から出たら狙われるんじゃないのか?」
「そ… それは、いい加減、我慢できなくなってしまって、気づいたら、棲み処から飛び出していたんです…」
「そうか… そういえば、自己紹介がまだだったな、俺は、コウ。こっちが、アルだ。」
「アルなの!! よろしくなの!!」
「わ… 私はティアです。宜しくお願いします。」
「あぁ、宜しく。それでティア、俺たちを妖精…」
「こんな所に、妖精がいるぜ!!」
先程、遠眼で見ていた魔族たちがやって来た。
「本当ですね。デカイ音がしたから来てみましたが、正解でしたね。」
「あぁ、あの妖精を捕らえて、トレ様の元へ一度、戻るぞ。」
「わかりました。それより、妖精の近くに、劣等種族と獣のガキまでいますがどうしますか?」
「そいつらは、殺しても構わんだろう。なら、いくぞ。」
「「はい(おう)!!」」
そう言って、魔族たちが、一斉にむかってくる。
「コウさん、アルさん、あれが、魔族です!! 私が食い止めますので、逃げて下さい!!」
突然の魔族の出現に慌てたティアは、そう叫んで、俺たちの前に出る。だけど、
「ティア!!」
「!? な… 何ですかコウさん? 今は話している暇は…」
「俺がやる。少し、さがっていてくれ。」
「で… ですが…」
そう言っている間にも、魔族たちがあっという間に、距離をつめてくる。
「アル、ティアと一緒にさがっててくれ!!」
「はいなの!!」
そう言って、アルはすぐにティアを捕まえて、後ろにさがってくれる。魔族たちは、俺の前で、立ち止まる。
「おいおい、劣等種族のお前が俺たちを相手にするつもりか?」
「劣等種族の分際で、おこがましいですね。」
「ホア、スカ。私は先に、妖精を捕らえる。2人で、確実に殺ってから、ついてこい。」
「「分かりました。」」
指示を出している、あの真ん中の魔族がリーダーのようだな。
リーダー魔族は俺の横を通り抜けようと、2人の魔族は、一気に攻撃を仕掛けてきた。




