17話
その後も、何ヵ所か見てまわるが、先輩はいない。
少し疲れた私は、公園のベンチに座り込む。
朝からの疲れが来たのか、気づけば眠ってしまっていた。
◇
目が覚めると、一瞬ここがどこか分からなかったが、周りを見渡し、ここが公園である事が分かった。
「あれ? 私なんでこんなところにいるんだろう…」
ここにいる理由を振り返ってみる。
出張先の仕事を終わらせ、戻ってきた…
そこまでは、思い出すのだが、ここにいる理由までは思い出せない…
もう一度、辺りを見渡すと、日も傾いてきていたので、一度家に戻ることにした。
家に帰りつくと、荷物を部屋の前に放置していた。
不思議な思いながらも、部屋の中に入れ込む。
部屋の中にも、おかしな物がおいてあった。
普段私が読まないような書籍… ファンタジー系とでもいうのか、でも、これを読んだ記憶はある。
「何でこんなものを読んだんだろうか…」
考えてみるも、やはり思い出せない。
考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。
また、仕事疲れもあるのか、体も重く感じてくる。
私は、シャワーだけ済ませ、休む事にした。
◇
「朱里また、怪我したのか… ほら、絆創膏。気を付けろよ。」
と、言いながら絆創膏を渡した後、頭を撫でてくれる男性…
誰だっけこの人… 思い出せそうで、思い出せない…
次第に靄がかかってきて、全てが靄に包まれたと同時に目を覚ました。
「ハァ… ハァ…」
息は荒く、服は、汗でベッタリと張りついていた…
先程見ていた夢で出てきた男性はいったいだれだろうか…
男性の顔を思い出そうとしても、顔に靄がかかっており、思い出せない…
スマホを確認すると、7時過ぎ。今日の17時頃に、一緒に出張に行っていた同僚が、帰ってくる予定になっていたが、その同僚から、連絡が入って来ていた。
"13時頃に、そちらに帰ってきます。"
13時か… 帰った後は、出張の報告をしないと行けない。これには、私も参加しないと行けないので、準備をする為、まずは、シャワーをあびる事にする。
◇
連絡通り、13時過ぎには、報告をしていた。その時、聞いたのだが、御手洗さんに連絡が取れなくなっているみたいだ。あの人は、いつも私の事をなめ回すように見てくるので、あまり良い印象がない。すると、夢の中で出てきた靄のかかった男性が思い浮かんだ。だけどなんで、その男性が思い浮かんだのかは、分からない。
報告を済ませた後は、仕事をもうあがって良い事になったので、帰ろうとすると、ポカンと開いた机が気になった… 同僚にあの席の事をを聞いてみるも、前から空席だという… そう言われると、そうだったような気がするのだが、またしても、頭の中で、靄の男性が浮かび上がってくる。不思議に思いながらも、私はそのまま家に戻った。
◇
出張から、帰った来てから、数日たった。
靄の男性の事を日に日に、頭の中で浮かび上がる事が、多くなってきていた。
この日も、出勤の際に、靄の男性の事が、頭の中でちらつく。
そのせいか、周りの事に気がつくのが遅れた。
気がついた時には、目の前に迫ってきていた物体…
強い衝撃を受け、私は宙を舞う。
再び、強い衝撃と共に、地面に叩きつけられる。周りからは、叫び声などが聞こえてくる。
体を動かそうにも、いうことが聞かない。瞼も重く、意識が次第に薄れてきて、目を閉じたときには、周りの音さえ、聞こえなくなっていた…
◇
突然の浮遊感で、目が覚めると、目の前には、見知らぬ男性の顔。
男性は何かを言っているようだが、理解できない。
結局、私がこの状況を理解したのは、もう少し後の事だった。