16話
私は、持てる力をフル稼働し、仕事をこなした。
まだ、仕事は残っていたが、私がいなくても、どうにかなりそうだったので、残りを任せて、急いで新幹線に乗り、帰った。
新幹線の中で、同僚と連絡を取り、先輩が会社に残っていない事は、確認している。
だから、駅についた後は、タクシーを使い、そのまま先輩の自宅にむかった。
「お釣りは大丈夫です!!」
タクシーから飛び降りた私は、先輩の部屋にたどり着き、チャイムを鳴らす。
一度鳴らしても、誰も出てこない。
その後も、扉を叩いたり、チャイムを何度も鳴らすも、反応はない。
ここにはいないと判断した私は、先輩がいそうな場所を考える。
すると、先輩が最近良くいっている、お店?が思い浮かぶ。
何故か、私はそこにむかっていた。
◇
お店についた。入り口には、"不思議屋"と看板があった。
私は、入り口を開ける。中に店員らしき人は見当たらない。
「すみませ~ん!! 誰かいますか!!」
奥の部屋から、とても、綺麗な女性が出てきた。
「貴方は?」
開いた口が、塞がらない…
「・・・」
「貴方は?」
「あっすみません、私は、館花朱里って言います。」
「館花さんね。それでどうかしたの?」
「つかぬこと、お伺いしますが、夢ヶ崎幸って人知りませんか? 確か、何度かここに来たことがあると思うんですけど…」
「確かに、来てた思うけど、その人がどうかしたの?」
「その人を探していまして、ここにいるんじゃないかなぁと思ったんですけど…」
「そう… その人は貴方にとってどんな人なの?」
突然の質問に、つまる。
「え、いや… その… 」
顔が熱くなってくるのを感じながらも、私は、何故か正直に答えた。
「…その人は、私の好きな人です…」
小さな声だと、自分でも思ったいたが、ちゃんと聞こえているみたいだ。
「ふふ、本当にその人の事が好きなのね。」
「はい…」
「でも、ごめんなさい、ここにはいないわ。」
「そうですか… すみませんでした… 私は、次を当たってみます。」
そう言って、私は、お店を出た。
この後、どうしようかなと、思いながら、出口から少し離れた所で、もう一度、先輩に電話をかけてみるが、全然反応がない。
「館花さん!!」
!? 振り返ると、先程の綺麗な女性がいた。
「え… さっきのお店の方ですよね? どうしたんですか?」
「電話中にごめんね。」
「いえ、出なかったんで、大丈夫です。それで、どうしました?」
「貴方に聞きたい事があったから、来たの。」
「私に聞きたい事ですか? 何でしょうか?」
「貴方は、夢ヶ崎さんを探しているのよね?」
「はい、そうですけど…」
「もし、その夢ヶ崎さんが、この世界にいないとしたら、貴方はどうしますか?」
「…それはいったいどういう事ですか?」
「そんな怖い顔しないで、仮定の話よ。」
「す… すみません… 仮定の話ですか…」
「えぇ、そうよ。貴方は、それだも、その人を探すの?」
少し考えるが、答えは最初から決まっている。
「…それでも、私は探します。」
「そう… 貴方の意思は、分かったわ。そういえば、自己紹介をしてなかったわね。私は、シュテルよ。何かあったら、いつでも頼って。」
そう言って、シュテルさんが、手を差し出してくる。
私は、少し躊躇いながらも、手を握る。
すると一瞬、手が光ったような気がした。不思議に思いながらも、
「ありがとうございます。何かあったら頼らせて頂きます。」
シュテルさんに、お礼を伝え、私は先輩がいそうな所を探しまわる。