14話
不思議屋に辿り着いた俺は、中へと入った。
「いらっしゃい、コウ。数時間ぶりね、やっぱりチケットの事を聞きに来たの?」
「はい…」
「それじゃあ、まずは、こっちに来て。」
シュテルさんの後に続いて、奥へ入る。
そこは、八畳ほどの広さに、真ん中にこたつと座布団だけがある部屋だった。
「そこの座って。」
「分かりました。」
座ると、前の座布団に、シュテルさんが座る。
「お茶を用意するわね。」
パチンッと指パッチンをすると、こたつの上に、急須と湯のみ、そして茶請けが現れた。
「!?」
「ふふ、これも後で、ちゃんと説明するわ。」
そう言いながら、緑茶をいれてくれる。
「…分かりました。それじゃあ、チケットの使い方の説明をして貰ってもいいですか?」
「分かったわ。まず、チケットを出して貰ってもいい?」
「はい。」
俺は、チケットを取り出し、こたつの上に置く。
「コウは、このチケットになんて書いてあるか、分かる?」
「はい。異世界へのご招待チケットって書いてますね。」
「その通りよ。そして、使い方は、このチケットを破くだけよ。」
「破いたら、どうなるんですか?」
「チケットに書いてある事が起こるわ。」
「…それは、異世界に行けると言う意味ですか?」
「えぇ、その通りよ。」
「・・・」
言葉が出なかった。他の人から、こんな事を言われても、信じる事は出来なかっだろう。だけど、シュテルさんの言葉なら、信じる事は出来る。だって、消えるカードや急に現れる急須セットなんて、見た後じゃあ、信じない方が無理な話だ。
「それで、コウ… 貴方の正直な気持ちを教えて。貴方は、異世界に行きたい? むこうに行ったら、こっちには帰ってこれなくなるし、この世界の人たちから、コウに関しての記憶が消えることになるわ。だから、良く考えて決めて。」
「行きたいです!!」
俺は、即答していた。
「ふふ、そう。 なら、改めて自己紹介をするわね。私は名前は、シュテルクスト。こことは、別の世界の主神をしているわ。」
「別の世界… それじゃあ、シュテルさん… シュテルクスト様は、神様って事ですか?」
「そう言う認識であってるけど、いつも通りシュテルさんでいいわよ。」
「…分かりました。」
シュテルさんは、本当に人間ではなかったんだ…
確かに人間離れした美貌をしているなぁとは、思っていたけど…
「そういえば、シュテルさんは、どうしてこちらの世界に来ているんですか?」
「ん~、暇潰し?」
「…暇潰しですか?」
「そうなの、神様って言っても、結構暇なのよ。」
シュテルさんは、茶目っ気たっぷりに笑う。
「それでコウ、むこうに行ったら、本当に帰ってこれないわよそれでも、むこうに行きたい。」
今回は、即答せず、少し考えた後、
「…それでも、行ってみたいです。」
「分かったわ。カードは今、持ってる?」
「カードですか? はい、持ってますよ。」
俺は、持ってきていたカードを取り出す。
「そのまま、カードを持っててね。」
「? 分かりました。」
シュテルさんが、指パッチンをすると、カードが俺の手を離れ浮かびあがり、光だす。光だしたカードはそのまま俺めがけて飛んできて、俺の体の中に吸い込まれ、消えていった。
「シュテルさんこれは!!」
「大丈夫よコウ、それは、あっちの世界で役に立つ力よ。」
「役に立つ力ですか?」
「えぇ、そうよ。」
「…分かりました。」
「それで、もうすぐむこうに行く?」
両親や兄弟もいないし、彼女なんてもっての他だ。
一瞬、後輩の顔がよぎった。そういえば、あいつに挨拶するの忘れてたな…
「シュテルさん… 私がむこうに行ったら、俺の事は、皆忘れるんですよね?」
「えぇ…」
なら、少し悪い気もするが、
「ならすぐで、大丈夫です。」
「分かったわ。ならコウ、そのチケットを破ってみて。」
「分かりました。」
そう言って、俺は、チケットを破った。
すると、両開きの豪華な扉が現れた。
「…シュテルさん、この扉は?」
「それが、異世界への扉よ。その扉を潜ると、体の構造が変わり、異世界へ行くことが出来るわ。」
「この扉を潜ったら… 」
俺は、扉に手をかけようとした時、
「潜る前にコウ、ちょっと、こっちまで来てくれる。」
シュテルさんに、呼び止められる。
「分かりました。」
シュテルさんのもとまで行くと、
「ちょっと、しゃがんでくれる?」
俺は、言われた通り、シュテルさんの前でしゃがむ。
すると、
チュッ
「え…」
額に、少し生暖かい感じが残る…
「私の加護なんかやコウにあったスキルを与えたわ。むこうに着いたら、ステータスを確認してみて。」
「…分かりました。ありがとうございます。」
「いいのよ。それじゃあ、コウむこうでは、貴方の好きなように生きてね。」
「…はい。それじゃあ、いって来ます…」
「いってらっしゃい。」
俺は、涙を堪えながら、扉に手をかけ、その扉を潜った。