12話
帰りついた俺は、荷物をそこら辺に置き、ベッドに転がった。
「さて、明日からどうしようかね…」
後悔がないわけではない。半分は、その場の勢いで、辞めた感も否めない。
まぁ、でもくよくよしてても始まらない。
気分を変えるため、俺は、財布を握りしめ、コンビニにむかった。
むかう途中に、何回引こうかと、迷っていたが、今まで頑張ってきた自分へのご褒美をかねて、預けてあるお金を全部使うことにした。
コンビニにつくと、早速ICキャッシュカードで、全額の75万を引き下ろす。
あれ?思っていたより貯金額が少ないなと思ったが、そういえば、この前、知り合いにお金を貸していたのを忘れていた。
引き出したお金を、財布に入れ、シュテルさんへのお土産物なども忘れずに買ってから、不思議屋へ直行した。
◇
化粧直しの為、少し席を外した。
直す前に、携帯を確認すると、会社の友達から連絡が届いていた。
「え…」
私は、その内容に、携帯を落としそうになる…
「せ… 先輩が辞めた… なんで…」
今すぐにでも帰って、直接先輩に理由を確認したいが、まだ仕事が終わってないので、帰れない…
だから私は、すぐに先輩に連絡とってみるが、全然繋がらない…
「先輩… なんで…」
視界がどんどん霞んでくる…
だけど、ここで泣いていても、何も解決しない。
私は、涙を拭い、少しでも早く仕事を終わらせるべく、簡単に化粧直し、その場を後にした。
◇
「いらっしゃい~、あれ、コウ? 今日はどうしたの?」
「こんにちは、シュテルさん。今日も、一番くじを引きに来ました。あ、これお土産です。」
「いつも、ありがとうね。 あれ? でも確か、次引くのは、給料日じゃあ無かったっけ?」
「その予定でしたが、ちょっと、会社を首になってしまったんで、自分へのご褒美に一番くじでも引こうかと思いまして…」
「そう…」
一瞬、顔を歪めるが、すぐに笑顔になり、
「それで、そのご褒美とやらで、何回引くの?」
と聞いてきれくれる。
心の中でも感謝しながら、
「そうですねぇ… 先に残りの枚数を教えて貰ってもいいですか?」
「75枚ね。」
「…見なくても、分かるんですね?」
「えぇ。だってこれ、コウしか引いてないから。残りの枚数も、コウが、いままで、引いた数を引けばいいだけだから。」
「まだ、私しか引いてないんですか…」
丁度、引き出した金額と同じだ。俺は、迷わずに、
「75回… 全部お願いします!!」
「!? 本当に、大丈夫?」
「はい。お金は、先程おろしてきたので大丈夫です。」
「そう言う事を、聞いてるんじゃないんだけど… 分かったわ。もう何も、聞かないわ。」
「…ありがとうございます。」
俺は、一番くじを全ての引いて、商品のカードを受け取った。
「本当に、ありがとうございます、シュテルさん… それじゃあ、私は、ここで…」
仕事もないので、早速受け取ったカードでも使おうと、そのまま、不思議屋を後にしようとすると、
「ちょっと、待ってコウ!!」
シュテルさんに呼び止められる。
「どうかしましたか?」
「はい、これ。」
そう言って、1枚のチケットを手渡してくる。
「これは?」
「そのチケットは、ラストワン賞の商品よ!!」
ちゃんと、ラストワン賞もあるんだ…
これも、なんて書いてあるのかは、読めない。
「ありがとうございます。それでこれも、使い方は、カードと同じですか?」
シュテルさんは、首を横に振る。
「そのチケットの使い方は、次来た時に、教えるわ。」
「…結構気になりますが、分かりました。」
「ただ、ひとつお願いがあるの? 聞いて貰える?」
「何ですか?」
「今日でた、A賞を1番最初に使用して貰ってもいい?」
「A賞ですか? 分かりました。早速帰ってから、試してみます。」
「ありがとう。それじゃあ、また後でね。」
「はい。」
不思議屋を後にした俺は、家に帰る。
早速、A賞の\∀▼∮(∞)と印字されたカードを枕の下に敷き、ベッドに入った。
眠れるか少し心配だったが、すぐ眠りについた。