1話
俺こと、夢ヶ崎幸35歳は、11月の寒空の中、自宅へむかい歩いていた。
ふと、横をむくとそこには小さな建物が建っていた。
「あれ? ここって、この前まで空き地だったような…」
何故かその建物が気になった俺は、横開きの扉を開けていた。
「いっらっし~い。」
「!?」
目の前には、今までに見たこともないほど綺麗で、長い金髪の女性が座っていた。
「か…勝手に入ってしまって、す…すみません!!」
「あら、いいのよ。一応、ここはお店ですから。」
「お店ですか?」
周りを見渡すも、商品どころか、棚すら置いていない。
奥の部屋にでもあるのだろうか?
気になった俺は、目の前の女性に聞いてみる。
「何を置いているのですか?」
「その前に、貴方のお名前も聞いてもいいかしら?」
「あっ、すみません。俺… いえ、私は夢ヶ崎幸と言います。」
「コウね。私は、シュテル…よ。それで、置いてる商品だったかしら?」
いきなり、名前呼び…
まぁ、別にいいんだけど…
「は…はい、そうです。」
シュテルさんってことは、やっぱり外国の方なのかな?
「商品は、これよ!!」
掛け声とともに、箱を取り出した。
上に穴がいているだけの普通の箱に見える。
パッと見た感じ、抽選箱と言った方がしっくりくる。
「こ…これは何ですか?」
「ん~、一番くじかな?」
「い…一番くじですか?」
表面には、何も書かれていなくて、何の一番くじか分からない。
「どのような、一番くじ何ですか?」
「それは、引いてからのお楽しみね。」
「そ…そうですか。なら、1回引かせて貰ってもいいですか?」
「いいわよ。」
そう言って、シュテルさんは、手を伸ばしてくる。
「1万円ね。」
「い…1万円ですか!!」
俺は、その値段に驚愕する。
「あら、止めとく?」
1回1万円… そんな値段の一番くじなんて聞いたこともない。
だけど、好奇心の方が勝ってしまい、
「いえ1回、お願いします!!」
俺は、財布から1万円を取り出し、シュテルさんに手渡す。
「ふふ、ちゃんと頂いたわ。なら、1回どうぞ。」
「はい!!」
俺は、箱に手を入れ、中の紙を1枚取り出す。
中身の紙も無地以外は、普通の一番くじと同じみたいだ。
ペリッと、めくるとそこには、Fと印字されていた。
それを、シュテルさんに渡す。
「F賞ね。ここから、1枚選んでね。」
今度は、別の箱を取り出した。
「これは、カードですか?」
「そうよ。この一番くじの商品は、全てこのカードなのよ。」
そう言って、箱からカードを1枚選ぶ。
カードには、○△●■と印字されていた。
「あの~、これって、なんて書いてるんですか?」
「それは、教えられないわ。」
「そ…そうなんですね。それじゃあ、このカードは何なんですか?」
「それも言えないわね。使い方なら教えられるわ。」
「使い方ですか?」
「えぇ、そうよ。そのカードを枕の下に敷いて寝るだけよ。そしたら、いい夢を見ることが出来るわ。その代わりに、夢を見た後は、カードは消えてしまうけどね。」
「いい夢が見れる? カードか消える?」
何を言っているんだろうか?
「えぇ、そうよ… 信じられない?」
俺は、シュテルさんの目をみる。
嘘をついている目ではないように思える。
「いえ、信じます。」
「あら? どうして?」
「何となくですかね…」
「ふふ、何それ。」
「す…すみません。」
「いいわ、信じてくれてありがとう。」
「い…いえ、それじゃあ、俺はここで失礼します。」
「それじゃあ、またのご来店お待ちしてるわ。」
「はい、また来ます。」
何故か、そう言って、俺は店を後にして、家に帰った。