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再会は故郷!?

「残りもので悪いけど、これで我慢してくれ」


 突然のクレアの来訪に驚きながらも受け入れたカドルは朝食用に残していたスープと干し肉を差し出す。

 クレアに聞きたいことは山ほどあったが、本人がまずはご飯といって譲らなかった。


「ん~。やっぱり空腹は最大の調味料ね」


 よほどお腹が空いていたのだあろう。美味しいとは言わなかったものの幸せそうに料理を食べ続けるクレア。

 その様子はカドルが以前の旅では見たことのなく、人違いを一瞬疑うよなものだったが、かといってそれ以外だと目の前の人物に思い当たる人物はいない。

 なにより本人の傍若無人ぶりが目の前の人物はクレアで間違いないだろうと結論付けさせた。


「そんなに腹が減ってたのか?」


「まあね。スレイン王国から馬を走らせて五日間、追っ手をまく必要があったからろくに食事とってなかったし」


「追っ手って、お前何をしたんだ?」


「……この姿を見ればだいたいわかるでしょ。私はスレイン王国の脱走奴隷なのよ。

 ちなみに馬はスレイン王国の馬具が見つかるとやばいから村の近くに隠しているけどね」


「!」


 クレアの身なりから予想の一つではあったが、本人から語られ、驚くと同時に納得する。

 以前の旅でもクレアは自身の出身を隠していたが、他国の脱走奴隷となればいろいろと問題になることは想像に難くない。嘘をつく方法もあったのだろうが、嘘は嘘とばれるだけでリスクが発生すると身をもって知ったカドルにはクレアが言わない選択をした理由に納得できた。


「そんなことより、他に聞きたいことがあるんじゃないの?」


 明らかにそんなことではないが、確かにカドルにとって一番聞きたいことは別にあるため、まずはそこから聞くことにする。


「クレア……俺たち、いや、この世界って……十年前の世界なのか?」


「そうよ」


 カドルにとって口にするのも躊躇う馬鹿馬鹿しい話をクレアは二つ返事で肯定する。

 そのことにあっけなさを覚えつつ、次の疑問を口に出す。


「でも、いったいどうして俺たちだけ巻き戻っちまったんだ……?」


「ああ、その原因は私。あのときの魔法って実は時間遡行(タイムリバース)の発動と、魔法陣内のものに対して記憶を引き継ぐためのやつだったの」


「はあ!? お、お前あれ自殺用のって……」


「ごめんごめん、あれ、嘘。最初は時間遡行にあんたを巻き込むつもりはなかったから魔法陣に入れないようにしたかったのよ」


 カドル自身、今いちやり直しを信じきれなかった理由に原因がわからなかったというのがあったのだが、それを元凶からあっけらかんと説明されてどういったリアクションをすればいいのかわからなくなる。


「時間を巻き戻す魔法なんて聞いたことねえよ」


「それはそうよ。魔王の魔核(コア)がないと使えない魔法だからリーネやフレンですら知らない魔法だもの」


「リーネ?」


「ああ、あんたは知らないわよね。あんたたちと組む、前の前の前の前ぐらいに一緒に組んだ魔王討伐のパーティの仲間だった賢者よ。まあ、性格はフレンのほうが何倍もいいし、今回もパーティには加えないつもりだから忘れていいわよ」


 私怨がひしひしと感じられる説明だったが、それよりもカドルはクレアの言葉にひっかかるものを感じる。クレアの説明では、カドルたちと組む前にリーネという人物とパーティーを組んでいたようだが、カドルはリーネを知らない。

 もちろん、クレアが言ったようにカドルたちと組む前だからということもあるかもしれないが、それでも勇者と組んでいた賢者の名前を聞いたことすらないのには違和感がある。

 そして、やり直しと言うこととクレアの言葉から一つの推論が導き出された。


「『前の前の前の前』って……お前、まさか……」


「そうよ。今回が初めてじゃないわ。私は今まで時間遡行をしてきたの。それこそ嫌になるほど何度もね」


 どうやらカドルの予想は当たっていたらしい。


「なんでそこまで……?」


「言ったでしょ? 必然の結末ディスティニー・エンドを回避するためってね。あっ、これは嘘じゃないから」


「必然の結末……皆が、世界が狂ってお前を殺しにくる、って話だったか……」


 にわかには信じられない話だったが、カドルは現状を鑑みるに嘘ではないだろうと判断する。

 カドルの脳裏に浮かぶのはやり直し前に目の前で豹変したガーナーだった。


「必然の結末を回避する手立てはあるのか?」


「あったら何度もやり直したりしていないわよ」


 今までのクレアの言っていることが嘘だとは思わないものの、それを防ぐために何度もやり直しているというのは、一番納得できるものだった。

 だが、未来が変えられないのなら、やり直しをしたとしても意味がないのではないかという当然の疑問がカドルの脳裏に浮かび、クレアもそれは予想できていた。


「未来は全部決まっていて、全く変えられないってわけではないわ。

 もちろん何もしなければたいていはあんたが知っている前回の歴史をなぞるだけでしょうけど。

 でも、今あんたの目の前に私がいるように、未来は変えられるのよ。特に前回の記憶を持っている私たちならね」


 たしかに記憶が戻ってきてからこれまでやってきたことは前回のカドルは当然行っていなかったことだ。


「ただ、大きな戦いや国とかの大きな未来を変えようとするならそれなりの準備と労力がいるわ。それでも変わらないことが多いけど。

 んで、最悪なことに、必然の結末を回避できたことは今まで一回もなかったわ。どうやら私はそうとうこの世界に嫌われているみたいね」


 軽い口調で言うクレアだったが、そのうちに秘めた感情はやり直しは初めてのカドルには想像すらできないものだろう。


「事情はわかった……けど、どうして俺のところに来たんだ? それにわざわざ現状まで説明してくれるなんて……」


「はあ? あんた、まさか……まだ気が付いていないの?」


 呆れたように振る舞うクレアにたじろぐが、カドルには全く心あたりがない。


「……必然の結末であんただけ私を襲わなかったじゃない」


「あっ! たしかに! ……でもどうして俺だけ変わらなかったんだ?」


「それは、あんた……その、あれでしょ……あんたが、私のこと……」


 顔を赤らめて小声になるクレア。

 その姿は珍しいものであったが、カドルはそれより変わらなかった原因のほうが気になった。


「クレアは知っているのか? だったら教えてくれないか?」


 カドルとしては、自分が変わらない要因がわかれば、他の人にも必然の結末を回避できるのではないかという思い付きだった。しかし、なんの意識もせずにズケズケ聞いてくる様子がクレアはなぜか腹立たしくて、


「嫌よ」


 きっぱり拒絶した。


「なんでだよ。教えてくれたって……」


「うっさい! あんたのことなんだから、自分で考えて気づきなさい!!」


(何よ。これじゃあまるで私が意識しているみたいじゃない)

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