怪談話
「運転気つけてよ。ここ事故が多いみたいだから…」
「ああ。分かってる」
「ねぇ、あのトンネル何か薄気味悪くない?」
「気のせいだろ」
「ちょっとヤダ。花子、あんた顔色悪いよ」
「さっき、何かいた」
「マジかよ」
「花子、敏感だからな」
「このトンネル抜ければ山頂だから…」
「結構、人いるなぁ」
「カップルばっか。外、寒いし、車内にいようぜ」
「夜景見に来たのに意味ないじゃん」
「いいの、いいの。それよりさ、誰か怖い話して」
「もう~、何言い出すのよ。そういうのやめよう」
「花子、お前なんかないの」
「わたし、時々見えるだけでだから……」
「清正は何かない」
「なくはないけど」
「じゃひとつ頼むは」
「え~、本当にやんの。怖いよ。やめようよ」
「雪、うるせぇぞ。ドライブに怖い話はつきものだろう」
「もう~、男って勝手なんだから」
「はじめていいか」
「ああ」
「これは、俺が友達から聞いた話なんだけど。ある結婚を誓いあったカップルがいたんだ。そのカップルにはひとつ問題があって。彼氏の方が少々遊び人で、彼女は頭を悩ませていたんだ。そんな時にいつも彼女を支えてくれたのが、ひとりの女友達で。色々と相談に乗ってくれていたんだ。「二人を応援してるから」っていつも励ましてくれていたんだって。でもね、その女友達……」
「え、何々、怖いんだけど」
「陰で、その彼氏と体の関係にあったんだよ」
「キャ~、怖い」
「裏切りじゃないか。酷い事するなぁ」
「彼女は、その女友達に問いただしたんだ。そしたらね…」
「そしてら…」
「全く悪びれる様子もなく、あの男、本当軽いわ。別れた方がいい、って言ったんだって」
「えぇ~、怖い女だな」
「雪、どうしてあんたが泣くのよ」
「だって、だって……酷すぎるよ」
「すまん、すまん、ちょっと怖すぎたか」
「人間って、本当何考えてるか分かんねぇな」
「でも、いまだに信じられないよ。俺らも昔は…」
「キャー!何々?」
「眩しい」
「義勝、頭に刺さってる矢で、電気のスイッチ押してる」
「あ!すまん。またやっちまった」
「いい加減、矢に慣れろよ」
「外、明るくなってきたよ。そろそろ帰ろう」
「え~、まだいようよ」
「私、明日デートなの。夜更かしは肌に悪いし」
「じゃ帰るか」
「あ、お願い。来る時に通ったトンネルは通らないで」
「了解」
「ゴメンネ。あそこよく人間が見えるの」
終