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邪魔もの殺してスローライフ。   作者: 瀧寺りゅう
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承① 作戦会議 愛されものと邪魔物の戦い

「ええっ!? バナナクレープ岬って……かわいい名前とは裏腹に、バナナみたいにとんがっててすごく危険だというあのバナナクレープ岬!?」


 モンブラン騎士団の出張所、会議室で私は叫んだ。世界情勢や邪魔物の動きが活発化していることなどを話し終えたところで、ようやく魔王オーディンの話になった。


 魔王に関する新しい情報とは、魔王の住処が判明したというものだったのだ。


「しかし驚愕ですね。まさかあの岬にいるとは。意外とかわいいところに住んで……って、どうやって住むんでしょう」


「さあね……でも一つ言えるのは、そんなへんぴなところにわざわざ住む理由はあれよ。――クレープマニアだから!!」


 しん、と会議室が静まり返る。あれ、私何か変なこと言ったかな。


「いや、普通に考えて一人になりたいだけじゃ」


「人間嫌いなんですよ、きっと。だから魔王になったんでしょうし」


 仲間たちは私を無視して会議を進め始めた。あれれ。一体どうしたんだろう。


 的はずれな意見だったかなあ。クレープが嫌いな人はいないと思ったんだけど……でも、魔王がはぐはぐクレープに夢中になっているところは確かに想像できない。

 戦闘はともかく、頭を使うものはあまり得意じゃないのでこれ以上は何も言わないようにしよう。


 私が残りのドーナツをはぐはぐしている間、仲間たちは新たに情報が出てきた魔王について意見を出し合い、会議を進めていった。


「魔王オーディンは一体どんな人物でしょうね」


「わかっているのは、女神エーディンの対となる存在だってことね。女神はいい力を、魔王は悪の力を与えるの。別々に生まれた正反対の神みたいなものね」


「この世界、アーモンドペーストの行方は、二人の神どちらが勝つかにゆだねられているわけだ」


 女神に認められし愛されものと、魔王に魅入られし邪魔物の戦い。これがアーモンドペーストの長い戦いの歴史だ。

 改めてふり返ってみても、なんだか全然終わってくれそうにない戦いだなあ……。


「はあ……伝説の愛されものが姿を現してくれたらなあ。そうすれば女神様の圧勝なのに」


 と私が嘆くと、横からすかさず入るフォロー。


「ブラン様がいるじゃないですか! 今魔王と対峙しても、きっと楽勝ですよ」


「あはは……ありがと。ち、ちょっとお手洗い……」


 称賛の嵐になる前に会議室から逃げだした。フォローが重い、重すぎる。


 もちろん私だって、剣技のスキルを持った愛されものとして義務を果たすつもりではある。でも、一番若い私が魔王と戦うこと前提になっちゃってない?


 平穏を誰より愛する私が一番平穏と遠いのはなんでなの……。


 そこに極秘任務を終えた調査団が帰ってきて、私は飛びついた。


「彼は見つかった!?」


「伝説のスキル持ちについてですね。まだ何もわかってませんよ。ブラン隊長こそ、お母様から何か聞いていないんですか」


 がくっと肩を落とす。もう何度もしたやりとりだ。気を取り直して訂正する。


「祖母ね、祖母。もう20年前の話よ。最強のスキルをもらったのは少年だったってこと以外覚えてないみたい。どこにいるのかなあ……魔王に対抗できると言われる唯一の愛されもの。彼が見つからないことには、魔王の居場所がわかったところで……」


 私の負担が大きい。と言いかけて首をふる。大きいどころか、勝てない可能性だってある。みんなの期待には応えたいけど、魔王オーディンはおいそれと安易に挑める相手じゃない。


「20年前の時点で少年、ということは今は少なくとも30代でしょうね」


 ……なるほど、確かにそうだ。仲間に言われて気がつく。って、しっかりしなさいよ私。


 でもこれで、次からの聞きこみ調査は楽になる。魔王と戦うのは先として、少なくとも伝説の愛されものについてヒントを得られたのだ。

 今度からは30代くらいの人にだけ的をしぼって話を聞けばいい。30代の男性か。となると――。


「ブラン隊長!! 大変です!」


 ばっと声にふり向く。分隊長が顔を青くして駆けつけ、突然私に絶望的な一報を告げてきた。


「邪魔物が街に押し寄せてきています! というより――すでに外壁をよじ登っているんです!!」


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