最近自分がドMだと気づいてしまった
9秒58 2009年の世界陸上にて、ウサイン・ボルトが出した100mの世界記録である。ボルトを含め、すべての陸上選手は何秒、何分のために何百、何千、何万という時間を練習に費やしている。当然、ボルトが9秒58という記録を出した時も例外なく。
ゆえに陸上という競技はなかなかのクソゲーである。競技本番のためにたくさんの時間を費やし、一周400mの楕円状のトラックをひたすら走る。こんな無駄な球技はほかになかなかない。だからこそ、陸上を愛し、走り続ける選手は尊敬に値するし、見ていてかっこいいし楽しい。ただやっぱり陸上はクソゲーだ、だって記録でないし。
空が青い。中学最後の試合で覚えている最後の記憶。全国大会110mハードル決勝で盛大にこけた。今まで大会でこけたことがなかったため、完全に油断していた。優勝確実と言われ、雑誌の事前取材まで受けていたが、転んだらすべてがパーだ。だれにも気づかれず静かに部を引退した。
時は経ち、高校に入学して一週間が経った。学校内では少しずつグループができ始め、部活動をなににするかという話でもちきりである。
『で、西川はやっぱり陸部?』
と、入学初日から友達の様に話しかけてきた川田翔太。まあ実際、中学の市大会で同じ競技をやっていたため、中一からの知り合いなんだが、なんか気にくわない。そのため引退してようやく縁が切れたと思ったらまさかの同じ高校、しかもよりによって同じクラスだった。
「俺は陸上やるからお前は他行け、セパタクローとかいいんじゃないか?」
『なんでだよ、しかもセパタクローなんてねーし!いいじゃん一緒にやろうよ』
「お前とはやりたくない」
『なんでそんなに俺のこと避けるかなー、でもまた陸上やりたいと思っててよかったよ。一時期もうやらないとか聞いたからさ』
「中学卒業するまでは本気でやる気なかった」
決勝で盛大にこけて二度と陸上をやるかと思い、スパイクなどもすべて捨てたが、結局走ることは嫌いになれず、また高校が部活動強制加入ということもあり、入学時には陸上部にほぼ決定していた。しかし問題が一つある。
『でもお前一年の学総どうするの?』
「それな、春休みから行っとけばよかったかもしれん」
『なんで来なかったの?』
「お前がいたから」
『ほんとになんなのお前?』
俺は本当に川田が嫌いだ。かっこいいし、もてるからとかそんな理由では断じてない。それと問題はもう一つある。
「そんなことより今日から本入部だろ、スパイク持ってきたか?」
『お前この学校の環境知ってる?陸部は隣の運動公園で練習だぞ、スパイクなんていらないだろ』
「は?この学校、辺境地だけあって土地は広いだろ、グランドは4面あるし、そもそも仮入部はグランドで・・・
『それは仮入だけ、今日から陸部はグラウンド使えないんだよ、先輩言ってたじゃん』
「そんな、なんで」
『うちサッカー部強いから俺たちが使う場所ねーよ』
計算外だった。家が近いからという理由とあまり偏差値が高い学校行くと推薦が取りにくいと思いこの学校にしたがここにきて誤算った。まさかトラックが使えないとは。
その後川田を適当にかわして放課後まで適当に授業を受け流し、本入部初日を難なくこなした。初日ということもあり、今日は基礎練であるドリルや全体の流れなどで3時間はあっという間に過ぎた。
『西川はこの後どうする?俺は近くのコンビニいってからかえ・・
「お前とは帰らないし、おれはこの後自主練して少し勉強して帰るから」
『まじめか、てか学総どうするの?』
「先生に頭下げたら、来週の校内記録会で県大会の標準記録だしたら出させてくれるらしい、先輩にも許可取ったし」
『まあこの学校110mハードルやってる人いないしね』
「ま、ということで俺は一足先にインハイ行くから頑張って」
『当然のようにインハイ行くとか言っちゃてるよ』
「中学は2連覇してるし、高校は前人未到の3連覇するから」
『あっそ、おれは楽しく行くから』
そういって川田は部室に戻っていった。
その後倉庫から安っぽいハードルを何台か出して適当にストレッチした後、最初は中学の高さで合わせ準備した。
私、西川一樹はインターハイに出るにあたり大きな問題が一つある。
ハードルが飛べない。
初めまして、桜小路と申します。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。この話は陸上競技を題材としています。私自身中高陸上部だったため、細かいネタを挟んでいければと思います。これからも暇があるときに少しづつ書いていくのでもし続きを待っていくれる暇な聖人がいらっしゃれば気長にお待ちください。もしくは催促してくれてもいいんですよ?なんていうコメ稼ぎをしたところでおわりにしたいと思います。最後までありがとうございました。
「陸上部ってただ走るだけでしょ?」ていうのが一番嫌いなんだよ!(元走幅跳び選手)