不老不死の吸血鬼だがハンターよりもロリコンが怖い
ふぅ~。
今日も疲れたな。
まさかまた吸血鬼ハンターに命を狙われるとはね。
えっ?
私が誰かって?
よくぞ聞いてくれました。
私の名前は斎藤ありす。
長い名前だよね、うんうん。
んじゃあ、私の事をヘカトン・ケイルって呼んでもいいよ。
えっ?
本来の名前の原型まるで無いじゃんって?
まあ気にするな。
ところで今、私が何をしていると思う。
うん正解。
すれ違う通行人をかたっぱしから吸血しているんだ。
「ひぇぇぇ~。ば、化け物だ」
男の両腕をあり得ない方向に曲げる。
男は悲鳴を上げながら口からピンク色の臓物を吐き散らす。
私の異能の一つ、サイコキネシスだ。
「きゃああああ~。誰か助け……」
女の断末魔が大通りに響き渡る。
女の肉体から炎が燃え盛る。
これも異能である所謂パイロキネシスだ。
なんだこんな程度か。
今日も手ごたえ無しだな。
「さてさて今日の晩御飯は美味しいな~」
なんて独り言を呟くと一人の男が走ってきた。
ずんずんと私と男の距離は短くなっていく。
「あら~。まだ生き残りがいたなんて」
さてどう料理しようか。
男の年齢は10代ぐらいだろうか。
顔の色からしてたぶんアジア人だろう。
今日は真夏日だというのに男はロングコートを着ている。
「あんたが噂の斎藤ありすちゃんか」
ムカつく野郎だ。
この私に対してちゃん付けしていいのは彼氏だけなんだから。
でもその彼氏も私の異能でミンチにしたけど。
「ええ。そうよ。貴方見かけない顔ね」
もしかしたらここに引っ越してきたんだろうか。
それなら私がどれだけ恐ろしくて醜い怪物か知らないはずだ。
「いんや。違う。貴様は二つ間違いを犯している」
へえ、大した度胸だね。
いったい私が何をどう間違えたのだろうか。
「まず一つ目、俺は生き残りじゃない。正確にいうと俺もお前と同じ人殺しだ」
「ふうん。なら私が吸血して貴方を眷属にしてあげようか。楽しいわよ吸血鬼は」
「そして二つ目、お前ら怪物連中は俺のような職業をよく知っているはずだ」
吸血鬼ハンター。
そんな言葉が私の脳裏に浮かんだ。
でも妙だ。
この男は武器らしい物を持っていないからだ。
「ふふふ。もしかしてその可愛い顔で怪物をメロメロにするのかしら」
強い。
間違いなく強い。
この男は間違いなく百戦無敗のオーラを纏っている。
ゆっくり男は私に近付いてくる。
いきなり男が瞬間移動した。
「ふん。他愛もないな。斎藤ありすちゃん。貰った。ありすちゃんのパンティーは貰った!」
しまった。
私としたことが。
「い、いきなり何よ。この変態!」
どうやら私が恐れていた相手は恐ろしいロリコンだったのだ。