スキル
今僕はカーリ姫と向かい合い、お互いに椅子に座って話を始めようとしている。
屋敷について、二人と別れた後、姫に連れられて、姫の部屋まで入ると椅子に腰を掛けさせられた所だ。
部屋を見渡すと、色々な本や巻物が所狭しと散らばっていた。
それを無造作にどけながら姫はもうひとつ椅子を取り出して僕の向かいに座る。
「さて、ウラヌスよ、まずは安心して欲しい。
お前に我らは危害を加えたりはしない。」
「えっ、あっ、はい。」
「色々と不安なのだろう、正確にはお前に我らは危害を加えることはできない。
見たのであろう??私のステータスを。」
バレていたか…
ここは正直に話すべきだろう。
そして、こっちも色々と聞かなきゃ安心なんて出来ないし。
「はい、見ました。
鑑定魔法と、後は観察眼ですね??」
「観察眼でお前のステータスを覗いた、観察眼は一部しか見れないが、鑑定魔法と併用する事で全て見させて貰ったよ。
中々いないのだぞ??この二つのスキルを持つものは。」
と姫は笑顔でそう言った。
「ではまず、お前のステータスを書き出してお前に説明していこうか。」
そういうと、姫はペンと紙を取り出して書き出していく。
名前 ウラヌス・ドラグニア
種族 タツビト
性別 男
職業
称号 困難を乗り越えて行く者
年齢 0
レベル0
体力 155
魔力 175
力 81
敏捷 33
賢さ 375
運 10
スキル
剣術1 槍術1 馬術1
魔法
強化魔法1
固有スキル
進化(0/5000) 限突 真実の目
魂食 詐術1
加護
?????
「まずはそうだな………お前は………王族だ。」
「えっ??」
思わず聞き返してしまう。
「名前に性があるものは王族だ。
ステータスに表記されずに、性をなのる者もいるがこれは貴族に多いかな。
世界が性を認めているものは王族しかいない。」
「僕が……
それでは、僕は竜王国の??」
「いや、それは違うな。
今の竜王国の王は性が違う。
それにお前の種族が竜人では無いだろう。」
「えっ??
では、僕はいったい??」
「それは、正直わからぬ。
タツビトなどと言う種族は聞いた事もない。
今まで見つからずそういう種族があるのか、それともこれからお前が、その種族の王になっていくのかもしれないしな。」
「僕が王に…」
「なによりお前には竜人特有の角がないではないか。
まぁ、気になる所は他にもある。
お前のスキルだな、初めて見るスキルばかりだ!!
いったいどのようなスキルなんだ??
そして、一番下の???気になる所だ、見えないと言うのは初めてだよ。」
加護が見えない??
見えないなら、あえて答える必要もないかな。
あのルシという人がこの世界でどういう位置にいるのか調べてからでいいかもしれない。
それに…
「スキルは僕も内容がわからなくて……
ステータスを見たならわかると思いますが、僕はこの世界で、産まれたばかりなので……」
「そうだ!!
そこも不思議なのだ!!なぜ0才でそこまで自我がハッキリしてるのか、その体をしているのか、明らかに0才の体ではないだろう。
有り得ないことばかりだ!!
ステータスはそうだな、調べるぞ??」
もの凄く興奮した姫は、僕の返答を待たずに僕に魔法をかけた。
『アナライズ』
僕を光が纏い、僕の体から光の筋が姫の頭に繋がる。
姫は目をつむり僕のスキルの情報を頭の中に入れていっているようだ。
「ふぅ~、成る程な。」
姫は一息つくと僕に説明を始める。
説明を聞いた所によると。
進化=魂の理を読み取り、集めて、自らの存在を昇華させるスキル。
限突=成長の限界を越えて成長する事ができる。
真実の目=使いこなせば全ての真実を見通す事ができる。
魂食=生物の魂を見ることができる。
魂を食べ、自分の糧へとすることができる。
「といった所だな、おそらく真実の目を使いこなせれるようになれば、鑑定魔法と同じようにお前もスキルを調べる事ができるんだろうな。
後は、お前のその体とかは、魂食とかいうスキルのおかげかな??
内容をみても、これは使った本人しかわからないだろう。」
確かに、この内容は余り詳しくは書いていないみたいだ。
魂の理は進化する為に必要だということ。
あの時はエネルギーに変えたけど、理をいっぱい集めたら進化ができるという事なのか。
魂を食べれば食べるほど僕は強くなるのか……
でも、実際に魂が入っている生物は……
魔族や魔物、正直GAMEでは鬼人なんてのも見た記憶は無いんだけど、これも魔族なんだろうか…
魔物は確実に魂が入っているとすると、魔物をひたすら倒せば僕はどんどん強くなれるんだな。
優遇措置はなかったけど、これは凄いいいスキルなんじゃないだろうか!!
ワクワクしてきた!!
そこで、また姫は口を開く。
「後は、お前に危害を加えない理由だな。
お前はさっき、竜の国から拐われたと言ったよな??」
「えっ、はい。」
「これがほんとだとすると、非常に不味いんだよな。
竜王国は少数ながら非常に戦力があるんだ、おそらく今頃お前を血眼になって探しているだろう。
もし、あそこで私がとめずにお前が死んでいたら、この集落は直ぐにでも消されていただろう。
竜王国の者にとってこの魔の森の魔物など赤子を捻るようなものだからな。
普段は他の大陸に目もくれぬが、自分達に危害を加えるものには好戦的になるからな。
お前には、いざというときに竜王国を抑える盾になって貰いたいのだよ。」
と、最後には笑顔でそう言った。
成る程、竜王国から来た性を持つ僕に、危害を加えると言うことがこの鬼の集落にとって危険だという事なんだな。
「話はわかりました、それで僕は今後どうすれば。
ここでお世話になると言うことですよね??」
「ああ、そうだ。
まずは、我らの王に謁見をしよう。
王と言っても私の父親なのだがな。
そこで、お前の事を説明するとする。お前がなるべくここで自由に生活ができるようにうまく話してみよう。
せっかくそのようなスキルがあるのだ、眠らせておくのも勿体無いしな。」
「はい、わかりました。」
ここで、自由に生活させてもらって、なおかつ僕の成長の力にもなってくれるかもしれない!
僕は二つ返事で了承した。
「それでは、早速王の部屋まで行こうか。」
僕と姫は椅子から立ち上がると、姫に案内されながら王の間へと向かった。
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それからしばらく時が過ぎ、ある所では。
「なに??
見失っただと??」
ここは、天をも貫くようにそびえ立つ岩山の中腹…
そこに、1つの石造りのとても厳かな城からなる国が存在した。
そびえ立つ山の中腹にあるこの国は、竜や竜人達が住まう竜王国『グランドラン』その王城グランの謁見の間。
玉座に座る者が一際大きな声を響かせた。
「申し訳ございません、我が王よ。
まさか、あそこであの死火山が活動を再開するとは夢にも思わず。
マグマの波に飲まれる前に、ウラヌス様には魔法をかけたので、ご無事なのは間違いないと思われます。」
その時、玉座の前に跪いていた、青髪で端正な顔つきの眼鏡をかけた男が頭をあげて王に向かいそう答える。
あまりに冷静な物言いに、王と呼ばれた男も冷静になったのか。
「ふぅ~~、怒鳴り散らして済まなかったな。」
と一呼吸置いて謝罪の言葉をかける。
「して、ルシールよウラヌスは今何処にいるのかわかるのか??」
「おそらく、マグマの流れからして、魔の国の魔の森でしょう。」
「魔の森だと!?あのような所まだ赤子のウラヌスでは一時間と持たず魔物の餌になるであろう。」
話を聞いて、またもや王のボルテージが上がる。
「ですので、急ぎ戻ってきた次第であります。
私やルシアは人の身なれば、あの森に入ってウラヌス様を守りながら生還するのは難しいと思われましたので。
竜の力を使う為に戻ってきたのです。」
「うむむ、では、早速お主らの竜と共に魔の森へ向かうのじゃ。
ウラヌスが拐われてからもはや二月が経つ、いくらあの子が特別と言っても心配なのだ。
早く、連れ帰り我を安心させてくれ。」
「仰せのままに。」
そう答え青髪の男は一人立ち上がる………
そして、未だ跪いている赤髪の女が隣に一人……
「ぐぅぅぅ~」
と、心地よさげな寝息が室内に響いた。
「……………ルシールよ、他の者は出払っているゆえ、今はお前だけが頼りだ。
大役だが頼んだぞ。」
「かしこまりました。」
そう答えると青髪の男は、赤髪の女の髪を鷲掴みにし、引きずるように部屋を出て行った。
「あれ??痛たたた、あれ?ルシール話は終わったのか??
何故そんな怒っておるのだ??
痛い、痛い、髪を離しておくれ。
ルシールよ何故私を無視する、痛い、痛い、ルシ~~~ル~~~………」
謁見の間の扉が閉められ、叫び声は途絶える。
「頼んだぞ、ルシールよ。」
消え入るような静かな声は、謁見の間によく響き渡った。