集落
魔の森の探索を初めてそれほど時間は経っていないだろうと思う。
だけど、わかった事が少しあるかな。
この森は結構食物が豊富なんだと思う、結構色々な食物が木になっている。
魔族の記憶から食べれそうな果実を見つけては、石を投げて集めている。
赤いみずみずしい果実があって、最初は危険な色をしてるなと思ったけど、リカーという食べれる果実だったので、一口噛んでみると、もう口と手が止まらない位美味しかった。
実はこの果実魔国でもそうとう人気な果実らしい。
この魔の森が未開の地だから、そんな人気な果実も普通にいっぱいなっているんだろう。
食料に関してはあまり不安が無いことがわかっている。
後は、衣類に関しては絶望的かな??
なんせ、森の中で探すにしても周りにあるのは木々ばかりだから。
アザゼルとしての記憶から、植物から服を作る事もできるだろうけど、いかんせん僕の体が…
魔族の魂を食べて成長はしたのだろうけど、今の僕の体はまだ五才くらいじゃないかな??
今衣類に時間を割いてわざわざ作る事もないな。
記憶に関してだが、これから色んな記憶が混ざって大変じゃないかなと思っていたが、なんと整理する事ができるみたいだ。
記憶も不必要な物は消して統合できるみたいで、基本的にはアザゼルの記憶に色んな記憶を混ぜていくようにしようと思う、そうすれば、アザゼル……僕の経験になっていくから。
そして、この森の中は、あまり身を隠すところが無さそうなんだよな…
木の影に隠れていても、魔物なんかどこから来るかわからないからすぐ見つかりそうだし、木の上も考えたけど、木の上を移動する魔物がいるかもしれないし……
それと、もう1つわかった事があるんだ。
この森にはやっぱり部族というものがあるみたいで、そして余り友好的では無いことかな。
なんせ、今僕の目の前には魔物の毛皮を纏った三人の人??
おでこの所にそれぞれ角が生えているからおそらく魔族なんだろうけど。
その内の二人が武器を構えて立っているんだから……
そして、驚き立ち竦んでいる僕に真ん中に立っている腕を組んだ女性が話かけてきた。
「動くな。
ここより先は我らアスラの縄張りだ。
いかな幼き者であっても、これ以上立ち入るのなら容赦はしない。」
女の人がそう僕に声をかけると、左にいた、とても大きな鉈みたいな物を持った男が
「姫様、こんな所にこのような幼子がいる事がそもそも奇怪です。
速やかに私が始末して見せましょう。」
と物騒な事を言い出した。
姫様という言葉も気になるけど。
まずここは、なんとか言いくるめないと僕の命が危ない。
「まっ、待って下さい。
僕がここにいるのは色々な事情があってですね。
実は、僕は拐われてきて、火山に巻き込まれ気付いたらこの森の中という状態でして。
僕自身が望んでここにいる訳じゃないんですよ。」
すると、今度は刺々しい棍棒を持った右の男が。
「ふん、火山に巻き込まれて生きているなど益々奇怪な。
ジュダス、ここは俺がこの棍で黙らせてくれよう。」
どうして!?!?
「まっ、まっ、待って下さい。
僕は魔法に守られて、竜の国から拐われて、それで、それで魔族が…」
恐怖で言葉が纏まらない…
そして、右の男がゆっくりと棍棒を振り上げ今にも降り下ろそうとした所で…
「待て!!」
その言葉と共に、振り上げた棍棒はその場で止まる。
「姫様!?」
「よい、その幼子は私が預かろう。」
「しかし、このような奇怪な…
危険です。」
「よいと言ったな??
これは命令とする。」
「「はっ。」」
姫様と呼ばれた人が命令と言った途端、横に立っていた二人の男は女の人にひざまづいた。
「それで、幼子よ、名はなんと言う。」
「はっ、はい。
僕はウラヌスと言います。」
「ウラヌスだな。
よし、ウラヌスよそれではお前の身柄はこの私、アスラの鬼姫カーリが預かろう。
我らの集落まで連れていく事にする。」
「はっ、はい。
よろしくお願いします。」
なんとか、この場で始末はされないで済んだようだ…
ほっと安堵していると、僕は凄い力で体を持ち上げられた。
「それでは姫様、集落まではこのジュダスが運びましょう。
小僧、振り落とされないようにしっかり捕まっておけよ。」
そう言われた僕はしっかりとジュダスと言われた男の背にしがみついた。
「うむ、頼んだぞ。
では、集落まで駆けぬけよう。」
その言葉を最後に、三人は僕を背負って駆け出した。
カーリ姫を先頭に、次いで棍棒の人、最後にジュダスさんの一列となって、木々という障害をものともしない速度で。
僕はジュダスさんの背中で、心が落ちついて少し余裕が出てきたので、この三人の事をしろうと思い、ゆっくりそれぞれ三人を見ていく。
名前 ジュダス
種族 鬼人
性別 男
職業 戦士
称号 近衛右将
年齢 30
レベル55
体力 1500
魔力 250
力 2850
敏捷 580
賢さ 100
運 30
スキル
剣術6 馬術2
魔法
強化魔法1
固有スキル
鬼化
名前 ガーラ
種族 鬼人
性別 男
職業 戦士
称号 近衛左将
年齢 28
レベル51
体力 1300
魔力 450
力 2050
敏捷 680
賢さ 180
運 40
スキル
棍術4 馬術4
魔法
強化魔法5
固有スキル
鬼化
名前 カーリ・アスラン
種族 鬼人
性別 女
職業 巫女
称号 鬼美姫
年齢 18
レベル42
体力 800
魔力 3500
力 550
敏捷 380
賢さ 850
運 350
スキル
剣術3 体術4 馬術6
魔法
支援魔法8 鑑定魔法
固有スキル
鬼神化 降臨 観察眼
これは…
三人の情報が入り込んで僕は息を飲む…
鑑定されたのかもしれない…
それに、気になるスキルもあるし…
魔族の記憶にあった、鑑定魔法で情報を悪用する者もいると言う言葉が脳裏をよぎる。
大丈夫だろうか……
とりあえず、この森に一人でいるよりはましだろうけど、どうなるかわからない不安は払拭できないようで。
少しできた余裕は脆くも崩れさってしまった。
そして、大して考えが纏まる事もなく、僕を連れた三人は集落へと辿り着く。
とても太い、まるで大木を組んで出来上がった門だ。
人の力ではけして上がらなそうな佇まいに息を飲む。
そして門の前まで進むと…
「止まれぇ!!」
と門の上部から声が聞こえる。
「門を開けよぉ!!姫様のご帰還だぁ!!」
「ジュダスか。
その背にいる小さき者はなんだ!!」
「森にて遭遇した幼子だ!姫様が保護すると決めた!
早く門を開けよ!!」
「しかし、ここへは我らアスラ以外の者をいれる訳にはいかぬ!!」
すると、黙っていた姫様がここで声を上げる。
「よい!全責任は私が持つ!
一刻も早くこの者を調べなくてはいけない、門を開けよ!!」
「わかりました。」
その言葉のを最後に門番の人が門の中へと姿を消す。
すると、ゆっくりと門がガラガラと音を立てながら上がっていく。
門がガシャンと音を立て上がりきると、三人は歩を進める。
門を潜ると、まず目に止まったのが門を引き上げてただろう見たこともない生き物。
とても大きな甲羅に覆われた巨大な生き物だ。
甲羅には、甲羅のサイズにあった刺々が生えていて。
甲羅からは手足と、尻尾が出ていた、頭の部分はとても立派な角を生やした竜のような顔が出ている。
門から出ている頑丈そうな二本の鎖を、甲羅に巻き付けられた2頭で左右に別れてひいていた。
「ふっ、アストラルが珍しいか??」
姫様がそう声をかけてくる。
僕が返答する前に、姫様は言葉を続けた。
「まずは、私の部屋でお前にいくつか聞きたい事がある。
目の前に見えるあの屋敷が族長……王の住まうところだ、そこに私の部屋もある。
さぁ、向かうぞ。
屋敷についたら二人は先に王に現状を報告しておいてくれ。」
「「はっ。」」
こうして、この集落の建物の中で一際目立つでかい屋敷まで、三人は向かって歩き出す。