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<最強魔王の憂鬱⑥>


「おい、魔王。おい、起きろ! いつまで寝ているのだ」

「――っ!」


 幼女に叫ばれ、意識が戻る。目の前には人間の姿に戻った幼女がいた。なぜか心配そうな表情。横たわる魔王側で顔を覗き込んでいた幼女に、魔王は覚醒しきらない意識の中尋ねた。


「あれ、私は?」

「おぬし【変質の共有シャンジュモン・パータジャ】の後に意識を失ったのじゃ。おそらく、初めての変化に身体への負担が大きかったのじゃろう。とりあえず、気が付いてよかったの」

「私は、人間になったのか?」

「ほれ、これで確かめてみるが良い」


 そういって鏡を差し出す幼女。受け取り覗き込むと、そこには見慣れた魔人の姿ではなく、一人の人間の男が映っていた。


「これが私……、だと?」

 人間でいう青年といったところか。もとよりやや頬がこけ、少し幼くなっているが、どうにか整った顔立ち。変わらない赤い瞳。実に世の中がつまらなそうな目をしている。髪の毛の色が少し黒くなり暗紫に変わっていた。元の顔の雰囲気は残っているが、これなら別人にしか見えないだろう。

 ふと髪の毛をかき上げるも、どこにも魔族の角がない。その手の指先を見るも、爪は先端が丸く殺傷能力に乏しい形状をしていた。


「どうじゃ、気にいったか。 身体に不調などはないか?」

「ああ、少し体が怠いが問題はない」

「それはよかったのじゃ」


 無事に術が発動して安心したのか幼女は静かに微笑む。

 魔王の視線が幼女に吸い込まれる。

 その幼女の微笑みをぼーっと見つめた。そして無意識に幼女の柔らかそうな唇に目がいき――。


「うわっ!」


 なぜか顔が熱を持った。

 今までに経験をしたことのない変化である。そしてなぜか魔王は無意識に幼女から距離をとった。心臓が今までにない速度で脈打っており、大して動いていないのに呼吸も荒くなってしまっていた。


「な、なんなんだ、これは――」

「なにを一人であたふたしておるのだ? それに顔が赤いぞ? やはり術の後遺症でもあるのかのう」


 幼女は魔王のもとに、とことこと駆け寄り魔王の横に腰かける。そして、おもむろに魔王の額に幼女の額を重ねた。魔王の額に、幼女の柔らかなおでこが触れる。


「わわわわ……」


 幼女の顔が眼前近づく。顔を直視せざるを得ない。魔王の視界には幼女の唇。脳裏には契約の際に幼女とした接吻の感触が生々しく再現されていた。


「んー、熱がすごい勢いで上がっているが、おぬし大丈夫か?」


 すると更に鼓動が早まり、自分の心臓の鼓動が聞こえてしまうのではないかというほど、大きな音を立てた。魔王は今まで感じたことのない変化に戸惑った。


「お、おまえ、契約するときにどさくさに紛れて、私に何か状態異常の魔法でもかけたのか!?」


 額を離した幼女は、考え込むように腕を組んで唸った後口を開いた。


「ん、おぬしもしや人間の感情の起伏に驚いているな? 魔族というのは感情の機微に疎いからのう。おぬしも初めての感情に、処理が追いついていなのかね。今まで淡白だったおぬしには新鮮じゃろうに」


――こ、これが、人間の感情っ……!


 人間はこんな感情を制御しながら生きているのか。魔族というのは、おおざっぱで、強さがある分、感情も粗大なものになってしまうのに。こんな、たかが幼女を見つめるだけで身体に異変を起こしてしまうなんて軟弱にもほどがある。


「ははーん……」


 幼女は魔王の感情に気が付いたのか、いじわるそうな表情をした。わざとらしく髪をかき上げた後、腰に手を当てなまめかしい顔をして魔王の耳元で囁いた。


「それともなにか? この未発達な体にでも欲情したというのかの?」

「ばっ、よ、欲情なんぞ、してない」

「ははは、冗談だ」


 そう笑う幼女はどこか嬉しそうであったが、魔王はそんな幼女の様子など見ている余裕はない。この暴走しっぱなしの心臓をただただ心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返していた。



【読了後に関して】


感想・ご意見・ご指摘により作者は成長するものだと、私個人は考えております。


 もし気に入っていただけたのであれば、「気に入ったシーン」や「会話」、「展開」などを教えてください。「こんな話が見たい」というご意見も大歓迎です。


 また、なにかご指摘がございましたら、「誤字脱字」や「文法」、「言葉遣い」、「違和感」など、些細なことでも良いのでご報告ください。


修正・次回創作時に反映させていただきます。

今後ともよろしくお願いします。


 と、お堅くまとまっていますが、ただ感想がほしいだけです。感想ください、お願いいたします(ノ_<。)


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