第一話-少女との出会い-
あれから十年後
高校一年生になった少年
須藤優也(16)
白髪に青紫のような瞳の色をした少年である。
けたましい耳障りな目覚ましの不快音で
目覚めたばかりの優也の不覚醒な頭を
たたき起こすかのようにガンガンガンと
突然階段下の
リビングから何やら先程の目覚ましよりも
不快音と嫌な予感がした。
すっかり目が覚めてしまった優也は
慌ててリビングへとかけ降りて行った。
するとやはりというかなんというか
嫌な予感は的中して
リビングで豊満な胸.....もとい
スタイルがとてつも良く
右ほほにハートの刺青のような痣がある。
赤髪の緑の目をした
誰が見ても美少女と呼べるような少女
がひたすらフライパンを叩いていた。
この少女の名前は神埼真琴(16)
である。
一つ紹介をしておくとこの少女は優也と同い年
だと言うのに、高校には通っていない。
.....いや通えないのだ。
この真琴は政府によって消された人間
つまりは超常生物と呼ばれる超能力を持った
少女である。
何故優也がこの真琴と一緒に暮らすように
なったのかというと
それは一か月前ー…
つい一週間前まで施設暮らしだった優也が
義務教育を終えたということで
政府から施設出を許可され、
政府に複雑な手続きをして高校生にして
貸家ではあるが一軒家という
場所で一人暮らしをすることになった
矢先のことであった。
それは高校の帰り道、
薄暗くなった空の下を何気なく歩いていた
優也の目の前で起こった。
突然優也の左横にあった家が燃えだしたのだ。
慌てて家の方へと駆け寄っていった
優也の頭上から突然少女が降ってきたー…
そう、その少女が真琴なのである。
真琴は自分たちが超能力を持っていることがバレ
家に火をつけられ殺されそうになったのだという。
それで慌てて2階の窓から飛び降り
逃げ出したのだという。
優也はその少女の姿に自分を重ねたのだろう...
泣きながら優也にすがり付いてくる真琴を
自分の家に住まわせてやることにしたのだった。
そして今現在こうして真琴は
優也の家にすんでいるという訳だ。
すると真琴が
「ねぇね!優也ぁ、早く朝ごはん食べよ?」
上目遣いで俺を見てきた。
...くそぅそんなかわいい顔で俺をみるなっ!
不覚にもときめいてしまった優也であったが
平常を装い一言「あぁ。」と言った。
そして二人で朝食を食べていると
テレビのニュースが聞こえてきた。
『昨日超常生物達のテロ集団、
リバーシがまたもや政府からの特命で
人間ではないと判断された超常生物を
助け出すという凶行を行ったと
情報が入ってきました。
この集団のリーダー年齢不詳,性別男と思われる
者にはなんと、頬に刺青のような痣が
ないのです。この痣は我々人類と超常生物
とを見分ける唯一の判断材料であり、
この痣がないということは、この人物は
今もなおのうのうと我々人類と共に
生活しているのです!そう考えると
怖くありませんか?...あなたの隣にいる友人
そのものが超常生物なのかもしれないという
恐怖が付きまとい.....ピッ、
優也は黙ってテレビを切った。
真琴はテレビを睨み只だただ沈黙していた。
ガチャリ朝食を食べ終わった優也は
食器を片付け始めた。
真琴はまだテレビを睨んでいる。
ー…そうさっきのニュースで超常生物
には頬に痣があると言うはなし、
あれは超能力を持ったものには必ずあるのだ。
その模様は個人個人違いがあるが
その者の能力に関連した模様がついている。
生まれたときにはないのだが、
三歳くらいになると超能力者には
その能力に応じた痣が浮き出てくる。
かくいう真琴もそうで、
真琴のハートの痣は人間,動物
いろんなものに魅了術をかけられる。
そう、真琴にかかれば誰でも
真琴の思い通りになってしまう。
.....まぁ超能力者にはこういった精神的な術は
効かないが。そう、
超能力者には物理的な技しか効かないのである。
.....-そして、超能力者から生まれた子供
だからといって超能力を持った子供が
生まれるというわけではない。
生まれる確率は普通の人間同士よりは高いが
それほど変わるわけでもないのだ。
つまりは超能力者は突然変異であって
種族はれっきとした『人間』なのだ。
なのに政府はこの能力を持った者を
人外と言い殺しているのだ。
なんという理不尽だろう-
あともう1つ
三歳の頃に痣が表れなかった子は
一生ただの人間である。
途中から超能力を授かることは
絶対にないのだ。
そう、絶対に-.....
だが例外中の例外もある。
そう-.....世界でたった一人だけ
途中から超能力を授かった者
須藤優也-この俺だ.....
俺は十年前、超常生物処理課の者たちによって
施設に連れていかれた後
ある日突然超能力が使えるようになったのだ。
しかし痣は表れなかった-...
俺は驚いた、だが不思議と
胸が高鳴った。
その時の優也の心情は
只一つの感情で埋め尽くされていた。
そう.....
(これで...これで両親の仇をうてる!
世界に反撃できる.....)
という感情で.....
そして食器を片付け終わった優也は
真琴に「いってきます。」
と挨拶を告げ玄関をガチャリと開けて
学校へと向かっていった。
この光景を見送った真琴は悲しそうに
呟いた。
「私よりもあなたのほうが辛いくせに
いつも怒りを表には出さないのね-.....」
そしていつも通りの通学路を歩く
優也の背後から
忍び寄る人影が
迫っていたのだった-.....