二十八
最早、ぼくが、そこを訪れる理由は、無くなっていた。
結論も出た。心の整理も、出来ていた。
…けど、
『もう一度、君に、会いたい。』
これ以上、別れを引き伸ばしても無意味なのは、明白で、
それでも、もう一度だけ、会いたかった。
【…どうして来た?】
あんなに痛い思いをして別れを告げたのに?
「ゴメン。」
【どう…して、、だ。。】
?!
【…ど…して…】
「泣いて、いるの?」
【…会いたかった。】
「うん。ぼくも、だよ。」
「随分と廻りくどい事ばかり言ったけど結局、ただ君に会いたかっただけだよ。」
【ああ。】
「君と会っている時間が、ただ、嬉しかった。」
【…うん。】
「楽しかった。」
「ぼくは、君が」【私は…】
「ん?」
【私は、おまえに会えて、良かった。】
【息苦しくて、熱くて、冷たくて、揺らいで…痛いけど、それでも】
「ぼくも、君に会えて、、良かったよ。」
「…ぼくは、」【言うな!!】
【言うな。。終わってしまう。今度こそ、本当に!】
【…もう、私は、おまえを、、待てなくなる。】
「ねえ。こっちを見て。いつもみたいに、さ。」
「ぼくは、君が好きだよ。大好きだよ。」
【私も、だ。】
「…君を、忘れない。」
(…私もだ。)
こうして私は、再び気配を失った。
おまえの言葉は、私の背中に翼を与え。そのせいで、
最早、襲い来る上昇気流に逆らえなくなってしまった。
最後の言葉は、声に成らなかった。




