十六
【…なぁ、“フリ”すら止めて、これからどうする?】
「それが問題だね。」
【生きては、ゆくのだろ?】
「それは、勿論。」
【人間が生きてゆく為には、様々な事を、しなくてはいけないだろ?】
「…そうだね。」
「結局、今迄と、大して何も変わらないんだろうね。」
【“仮面”を手放した事で、かえって辛いのではないか?おまえ。】
「そんな、ことは…無いと思うよ。」
【…本当に?】
「分からないよ。」
「分からない。ただ、もう、他にどうしようも無くて、仮面を手放した。」
「…けど、それで、どうしたらいいかなんて、、分からない!」
【そうか。】
「…多分、皆、仮面を手放したらこうなるって、何となく気付いているから、
だから、仮面を手放さないんだろうね。下らないって、思っててもさ。」
【…そうだな。】
「それなのに、思わず、考えなしに手放してしまった。」
「ぼくは、相当な馬鹿なんだろうね。」
【かもな。】
「もう、生きてゆくこと自体が、無理なのかな?」
【…それを問われても、私には答えようが無い。】
「そうだよね。」
【でも、おまえ、生きてはゆきたいのだろ?】
「…もう、分からないよ。」
【生きたくない人間は、そんなふうに、もがいたりしないモノだ。】
「単なる、意地かも。」
【え?】
「生きてはゆきたい。なんて、単なる意地かも知れない。」
【…それでも、いい。】
「ん?」
【生きてくれ。】