表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

十四


真っ暗で、そして、相変わらず真っ白な時間が訪れる。


人間の、活動停止時間…と、いうやつだ。




「こんばんは。」


【…な、っ!?】


「…ゴメン、びっくりさせちゃったかな?」


【何で、今頃、ここにいる?】


「…君と、ゆっくり話しがしたくてね。」


【長話がしたければ、トモダチと、、そう、トモダチという人間と

 すればいいだろう?】


「君と話がしたいんだよ。エレベーターのユウレイさん。」


【……私は、幽霊では、無い。】


「ふ~ん。じゃあ、何だろ?」


【元々、ここに居る者じゃ。】


「…元々、ここに居る者?」

【そうじゃ。】


「ふ~ん。まぁ、いいや。ところで、」

【良くはないが…何じゃ?】


「ところで、ぼくが、君と同じって、どういう事?」


【…真っ白。】

「真っ白?」


【そう、真っ白なのだ。心が。】


「心が、真っ白。。」


【そうだ。】


「心が、真っ白。。」


【なぁ、人間というのは、いつも、赤かったり青かったり…

 瞬間、白くなったと思ったら、黒くなったり。そういう者ではないか?】


「…それは、フリ、だよ。」


【今、何と?】


「それは、きっと“フリ”だよ。」


【フリ…芝居、なのか?】


「まぁ、そんな、ところ。」

【何故?】


「何かをしてないと、生きてゆくのが不安だから…いや、それもフリか。」


【…よく意味が分からぬ。】


「つまり、何もかもが“フリ”なんだよ。」


【フリ。】


「うん。赤くなるのも青くなるのも、不安がっているのさえ、、ね。」


【…では、人間、とは】

「本当は、きっと皆、真っ白なんだよ。」


【そんな、】

「君と、ぼく。みたいにね。」


【それでは、】

「そう、皆、ただ居るだけ。なんだよ。」


「…きっとね。」



【 …違う。】


「…えっ?」

【違う!】


【人間は、揺らぎ、膨大で僅かな時間の中を、右往左往して、在るか無いかも定かでないモノを追い求める。暑くて寒い場所で、空気を求め喘いでいる。 そんな、】

「それが“フリ”、なんだよ。」


【“フリ”?】


「そうだよ。」


「人間でありたいと思うから、そんな“フリ”を、するんだよ。」


【…人間。】


「そう。人間らしい、人間。」


【…人間らしい、人間。】



【なんだ、それ?】


「…馬鹿らしいだろ?だから止めたんだよ。」


【“フリ”、をか?】


「うん。」



【そうか。】


「うん。」


【…けど、これ、は、何なんだろな?】


「ん?」


【これだよ。おまえの顔に、ふたつ付いている、それ。】


「え、っ。」


【底なし沼の様でもあり、光を映す水面の様でもある。それ、だ。】


「…君って、随分と、」

【ん?】


「随分、ロマンチスト、なんだね。」


【そうか?】

「うん。そうだよ。」


【そうかもな。実際、それは、ただの蛋白質の塊なのだから。】


「…蛋白質の、塊、ね。」


【ああ。なのに、何故、こんなにも様々に見えるのだろうか?不思議だ。】



「きっと、君の心を、映しているのだよ。」


【…私の、】


「うん。」


【こころ?】


「そうだよ。」



【…なんだか、変、なんだ。】


「ん?」


【風が吹いて、ザワザワと揺れるんだ。】

「えっ、、と」

【白くないんだよ。】


「何が?」


【…私の、こころ、だ。】


「…そう。」


【ああ。】



【…おまえを、待つように、なってからだ。】


「え?」


【おまえが来るのを待つようになってからなんだ。】


「待つ?」


【ああ。】


「君が、ぼくを、、待っていたの?」

【ああ、そうだよ!】



「ねぇ。君の姿、見せてよ。」


【姿?】


「うん。」


【…ここ、だよ。】


「えっ?」


【だから、私は“ここ”。なんだよ。】


「…そっか。ユウレイ、じゃ、ないんだったよね?」


【ああ。】



「また、来るよ。」


【うん。待ってる。】


「ああ。待ってて。じゃ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ