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第七話:琥珀色の世界2

 どうもこんにちわ。甲崎零火です。……びっくりするぐらいのお久しぶりさです。三ヶ月ぶりぐらいですか……?私にも分からないほどなのです。花の(地獄の?)高校三年生なもので、受験勉強に追い詰められてます……頭のてっぺんからつま先まで、まごう事無く言い訳でございます。嘘ではないですが。

 私としてもこの話を早く完結させたい!という思いです。でもやはり、ちょっと受かるまでは更新が覚束ないと思います。ご迷惑おかけしますが、見捨てないでくださいまし……本当にごめんなさいです。

 ではごゆるりとどうぞ〜

 私の髪はこげ茶で、結構な癖毛。ゆるゆる波打ってる。今は、見た感じでは背中ぐらいまでの長さしかないけど、実は引っ張るとお尻ぐらいまである。

 この髪は、お祖父ちゃんがハーフだったかららしいけど、早くに亡くなったお祖父ちゃんを、私はほとんど覚えていない。

 私の中にいるお祖父ちゃんは、馬の前に立っている写真(乗馬が趣味だったらしい)に写っている若いお祖父ちゃんだけ。

 そういえば、真っ黒でストレートな髪がよかったと、幼稚園の頃に泣いた記憶がある。

 私の髪や顔つきは、周りの子と違くて。よく、その事をからかわれた。

 樹と大樹の初恋の子は幼稚園の女の子で、その子は綺麗なストレートの黒髪で、私とはぜんぜん違かった。

 樹と大樹が二人して、その子の事を可愛いと言う、その言葉がたまらなく嫌だった……。

 今も同じ。樹はきっと日本的な人が好きなんだ。黒髪の人が。

「琉樹」

 頭の上から声をかけられる。大樹だ。私の前にある席の、机の上に座っている。

「考え事しながら歩いてると、また転ぶよ?」

 大樹は爽やかに、綺麗に笑う。……樹は、斜め前の席に座って眼を細めている。わかりにくいけど、この表情でも樹は笑っている。

「転ばないよ!よく転んでたのは小学校の頃だよ!」

 私はドキドキと脈を打つ心臓を隠すように大声を上げる。

「……琉樹。突っ込む所はそこじゃないだろ。今は歩いてない、椅子に座っているのに転ぶわけない、っていう所を突っ込まないと」

 口元を緩ませながら樹が言った。……え゛。そんな事、考えもしなかった。

 周りを見ると、クラスメイトがくすくすと笑ってる。私の声は大きく、皆に聞こえていたのだろう。きっとその後の、低くて、小さい声でも良く通る樹の声もクラス中に聞こえていたのだろう。

 お腹を抱えて樹が笑っている。ぐぬ。

「琉樹の声が大きいのは、合唱部だから当然の事だろ。気にするな」

 慌てて樹は、私が大樹に向けている殺意のこもった目線をそらさせようとする。……ふん。美しい‘ユウジョウ’ですこと。

「ふふ。ごめんね。琉樹」

 大樹はにこにこ笑いながら謝ってくる。

 でも、私は分かっている。大樹が私をからかったのは、暗い顔して考え事していた私を、 心配したから。

 そういう事に真っ先に気づいて、そして相手に気づかれないように心配りをしているのだ。やっぱり神様みたいだ。心を覗かれてる気さえする。

「琉樹……」

 それでも私が殺意のこもった目線を向けたままでいると、樹が飼い主の喧嘩を、困った様子で眺めている犬のような眼で見てきた。

 何故、私が大樹にこんな目線を向けているのか、樹は知らない。誤解してる。

 大樹も知らない。この神様みたいな大樹も、私の考えている事全てを見透かせるわけじゃない。

 私は大きく息を吐いた。唇を尖らせる。

「大樹は何でも私の事見透かしちゃうんだから!」

 まだ大丈夫。

「しかも甘やかすし!」

 だけど、時間の問題。貴方はきっと気づく。

「樹も私には甘いし!」

 私が本当に願っている事を貴方には叶えられない、って事に。

「お前ね……」

 樹が苦笑する。樹も、大樹が私をからかった理由に気づいてる。

 樹もおそらく、私が暗い顔していた事にも気づいていた。でも、何も言わないで黙って見守ってたんだ。

 樹と大樹の優しさは、ベクトルが違うだけ。中身は二人とも一緒。

 だから、この二人は惹きあうんだ。

「いいじゃないか。可愛がられてるんだから」

 樹がぽすぽすと、私の頭を撫でるように叩いた。

 樹は私をなだめる時、いつもこうやって頭を叩く。……黒くて真っ直ぐな髪がほしい、と泣いた幼稚園児の私をなだめた時から、ずっと。

 あの時、樹は「琉樹の髪、触り心地がいい。このままの方がいい」と言った。

 嘘でもいいから「琉樹の髪、好きだ」と言ってくれればいいのに。

「……イヤネ。琉樹は俺の彼女ヨ」

 大樹がおどけた言葉を口にした。樹は慌てて手を離す。温もりのなくなった頭に、寂しさを感じる。それでも私は嬉しかった。

 大樹の言葉はおどけてはいたけど、声は硬かった。その中には、ありありと不満と嫉妬が見て取れた。

 大樹は何もない床を見ていた。長い睫毛に隠れ、感情を見せない瞳。

 そして、気づかれぬように覗き見た、樹の眼の中には暗い嫉妬の炎が見えた。

 二人の親友が暗い感情を身にまとっている間、私は本当に幸福だった。


 私はただあの人が好きなだけなのです。これ以上ない程にあの人が好きなのです。……けして叶わぬ恋情だから、貴方が私に向けてくれる感情はもう、どんなものでもいい。ただ、一時でも長く私の事を考えていて。ほんの少しでも、貴方が想い人を請う時間が少なくなればいい。

 この恋情が私を壊す前に。どうか、私の恋に気づいて―――。

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