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第十話:琥珀色の世界5

「樹ー!頑張ってー!」

 足の速い樹は、今回もリレー選手に選ばれていた。

 周りからも、すごい歓声と罵声が響き渡っている。

 本人が積極的に参加することはまずないのだけど、いつも気づくと参加して、活躍してる樹。

 この前も、四人抜きをして……

 グラウンドの向こう側で走り抜ける樹は、一人、また一人と追い抜いていく。

 何となく、既視感(デジャブ)だ。樹がリレーで人を抜かす光景はもう見慣れているからだろうか?。

 結局、樹は二位でゴールを潜り抜けた。それでも圧倒的な速さだった。

 競技が終わってふらふらと樹が戻ってくる。

「お疲れ様〜」

 大樹がのんびりと声をかけて、タオルを差し出した。

「負けた……」

 顔には出ていないが、負けたことは悔しがっている。

「でも凄いじゃない!ビリに近かったのに二位だよ!」

「そうだよ。四人抜きなんて凄いじゃないか」

 樹は困ったように眉根を寄せた。

「あれ、今回も四人抜きだったの?去年もそうだったよね?」

「去年は、三位から一位で二人抜きだったよ?」

 大樹がゆったりと笑いながらそう言う。

 そうだったっけ?確かに四人抜きを、さっきと同じようにしていたと思ったのに……

 最近、こういうの多いな。よく言う、予知夢とかいうやつでも、見てるのかな。

 霊感とか、全くないんだけどな……

「どうした?琉樹?」

 樹が不審そうに私の顔を覗いていた。

「ううん。何でもない」

 にっこりと笑って見せる。私の心労の大部分は、まごうことなくコイツが原因だろう。

 好きでやっているといえばそれまでなのだけど……

 私のこと、憎んでいるくせに、こんな風に心配してしまう甘い樹。

 私のこと、憎みきれない可哀想な樹。

 ああ、そんなままではこの先きっと大変だわ。

 貴方、一人になっても生きていけるのかしら……?

 何故そんな風に考えたのかは分からない。

 私達はずっとこのままで、三人のままでいると思っているのに。

 それでも、一人で生きる、樹の将来が心配だった。

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