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カテキョ  作者: 来城
23/32

lesson.23

 今日は私の17回目の誕生日だ。

 朝、いつも以上の笑顔で登校してから、奈津子にからかわれつつ、プレゼントを貰って、他の友達にお祝いされたりしていると、放課後になるまでが、すごく早く感じた。


 このまま今日は家に帰らないでお兄ちゃんの部屋に直接行く。

 お兄ちゃんと一緒に過ごすことはお母さんにきちんと言ってある。お父さんには奈津子と一緒だと嘘をついてしまったけど……

 誕生日、邪魔する人は誰もいない。足取りも軽く、お兄ちゃんの部屋へ向かう。


 インターホンを押す前に、鏡でチェック。

 髪が乱れてないか。制服着崩れてないか。ちゃんと顔、可愛いか。

 今日は、特別な日。だからこそ、特別な顔で、お兄ちゃんに逢いたい。

 心臓が高鳴る。深呼吸を一つ。インターホンを押すと、何秒もしない内に、お兄ちゃんが中から顔を覗かせて。


「亜美ちゃん、いらっしゃい」

「うん」

「おいで?」

「うんっ」


 笑って、中へと手招き。

 早速、中へ入り、お兄ちゃんに荷物を置いてもらう。


「なんか重いね」

「うん、みんなから貰ったプレゼントが入ってるから、ちょっと重くなったの」

「そっか」


 お兄ちゃんは「亜美ちゃんは人気者だね」と笑った。それから、冷蔵庫からケーキを取り出す。


「やっぱり、誕生日はケーキがないとね。好きだったよね、ここのケーキ」


 それはちっちゃい頃から、私が好きなお店のホールケーキ。二人で食べるにしても、ちょっと大きい。見た目も綺麗で可愛くて、値段が張ったのは見て取れる。


「……あ、もしかして、家とかでもう食べちゃった?」

「ううんっ、食べてないよ。食べてたとしても、ケーキはいくらでも入るし」

「そか。じゃあよかった」


 張り切って、大きなケーキを買ってくれたお兄ちゃん。変な気を使わせて悪いなと思いつつ、わざわざケーキを買ってくれた行為が、嬉しい。だからこそ、しっかりと味わって食べないと罰が当たる。なんて思ったりして。

 二人で仲良くケーキを食べていく。思ってた以上に美味しい。


「これだけ食べたら、夜ご飯いらないかもね」

「んー、太っちゃうかも」

「亜美ちゃん、全然細いじゃん」

「そんなことないよ。いろいろ、見えないとことか……」

「え、どこどこ?」


 いつもよりちょっとテンションが高いのか、手を伸ばして私のどこら辺にお肉がついてるのか確かめようとしたエッチなお兄ちゃん。


「……お兄ちゃん」

「ご、ごめん」


 軽く睨んだら、しょんぼりと手を引っ込めた。

 なんか、変な空気。お兄ちゃんが二人きりの時、ちょっとだけエッチになるのはいつもと同じなのに。……私が意識しすぎてるからか、なんだか微妙な感じがする。

 黙々と、ケーキを食べるためのフォークだけが動く。全部食べ終わると、お兄ちゃんが小さく口を開いた。


「……お風呂」

「え?」

「お風呂、入る? 俺、もう、入ったし。その間にテーブル片付けとくから。っていうか、泊まるんだよね?」

「……う、うん。泊まっていいよね?」

「おばさんとかにはちゃんと言った?」

「うん。明日の学校に遅れなきゃいいって」

「……そっか」

「……うん」


 だから、今日は、ずっと一緒にいられる。


「えへへ」


 その事実が、嬉しくってたまらなくて。お兄ちゃんに甘えるように抱きついたら、抱き返してくれた。


「……亜美ちゃん」

「んー?」

「……お風呂の前にキスしていい?」

「う、うん」

「……」


 今日一回目のキスは、さっき食べたケーキの甘い味がした。



********



 お風呂から上がって部屋に戻ると、布団を敷いていたお兄ちゃんが笑って出迎えてくれる。そのまま導かれるようにお兄ちゃんの前に座ったら、お兄ちゃんは濡れた髪をバスタオルで拭いてくれた。


「なんか懐かしい、ね」

「そうだね。昔の亜美ちゃんは元気よくて、暴れまわるから大変だったけど」

「むー、そんなとこは思い出さなくていいよ」


 昔話をしながら私はされるがまま。人に拭かれる髪は自分でするよりも気持ちいいけど、お兄ちゃんにしてもらうとその気持ちよさは倍になるみたい。ずっとしてもらいたいけど。その行為にも終わりはあるわけで。


「よし、おしまい」


 お兄ちゃんが今まで頭を覆っていたバスタオルを下ろす。そのまま、お兄ちゃんの手が前に来て、私を抱きしめた。


「お兄ちゃん?」

「……はい、プレゼント」

「え?」


 驚いて後ろにばかり意識がいっていたから気づかなかった。私を抱きしめているお兄ちゃんの手にはラッピングされた小さな箱。


「あ、ありがとぉ」

「……誕生日おめでとう」

「うん……開けてもいい?」

「もちろん」


 早速、もらった誕生日プレゼントを開けてみることに。

 小さい箱に、小さいもの。ネックレスだ。


「俺、こういうのよく分かんなくて……」

「ううん。すっごい可愛い」

「そ、そう?」

「うん! ずっとつけるよ、これ」


 肌身離さず。お兄ちゃんがくれたものだから。


「……つけてあげよっか?」

「う、うん」

「……じゃあこっち向いて」


 お兄ちゃんと向かい合って。首の後ろにゆっくり手が回され貰ったばかりのネックレスをつけてもらう。

 お兄ちゃんが満足そうに目を細めた。けど、その手は私の首筋から離れようとしない。


「……お兄ちゃん?」

「亜美ちゃんの首、キレイだね」

「……んん」


 サラリと優しく撫でられて。ただ、首を触られただけなのに。どうして、こんなに身体に電気が走ったようになるんだろう。

 お兄ちゃんの指は私の首を撫で続けていて。奈津子に言われたことを思い出しちゃって。なんだか変な気分になってきた。


「お兄ちゃん……キス」


 我慢出来なくって、ついねだってしまう。お兄ちゃんは少し驚いたのか目を開き、それから頷いた。


 2人だけだし。変な気分だし。……誕生日だし。優しくキスされて、そのまま布団の上に押し倒されても、私は、なすがまま。ただ、お兄ちゃんに任せる。

 お兄ちゃんは私にキスをしながら、ゆっくりとパジャマのボタンを外していく。布に包まれていた皮膚が外気に当たってひやっとした。

 お兄ちゃんの指がピタリと止まった。

 露になった胸の方じゃなくて、私をじっと見つめてくる。恥ずかしくてたまらなくて、目を逸らすと「……亜美ちゃん、い、いいの?」とお兄ちゃんは少し掠れた声で言った。


 なにを今さら。


 お兄ちゃんらしい律儀な確認。

 恥ずかしくて、顔が真っ赤になっていくのが分かる。ちゃんと言葉で伝えられるような余裕はなくて、私はただコクリと頷いた。


「なんか、俺が誕生日みたい」


 そう言ってお兄ちゃんは少し微笑んで、私の鼻に唇でそっと触れた。


「……好きだよ、亜美ちゃん」

「ん……私もお兄ちゃんのこと、大好き」

「うん」


 好きすぎてたまらないお互いの存在。抱きしめても口づけても、もう足りないくらい――

 お兄ちゃんの指が舌が私の体を隅々まで知ろうとするかのように蠢いて。私の身体から段々と力が抜けていく。

 息もずっと乱したまま。うっすらと汗も噴き出して。

 初めて体験する感覚は強すぎて、私はなにも考えられなくなった。

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