◇その3「ひきこもりはダメ」
「そーいえばアスカ」
「なんじゃ?」
「うちに住むって言っても、学校とかはどーするんだ?」
「大丈夫じゃ。義務教育の間は学校などいくら休んでもなんら問題はないからの。それにワシは勉強も家でやっとるから問題ない」
「あー、なるほどな」
こいつヤベーわ。この歳で『義務教育の真理』を見抜いているとわ。
「じゃあ一日中家にいるつもりか?」
「ふむ、確かにそうなるかの」
「今日は休日だから家にいるけど、普段は俺も大学あるし、家で一人だぞ?」
「別にかまわん、一人は慣れておる」
こいつはそんな悲しい事は平然と・・・
まずいな、このままだと将来は間違いなく引きこもりのダメ人間になってしまう。
「アスカ。お前学校行け」
「やじゃ」
「だめだ! 学校は勉強だけじゃなくて他にも色んなことを教えてくれるんだ。だからお前は学校にいけ」
「やーじゃ! あそこはどいつもこいつもワシを特別扱いしてくるから疲れるのじゃ!」
なるほどな。そういうことか。ならば・・・
「ちょっとまってろ」
そう言って俺はいったん部屋から出て、携帯でさっき黒服の男に教えてもらった番号に電話をかける。
男は電話をかけるとすぐに出た。
『はい』
「今の話きいてました?」
『ええ』
「じゃあ話は早い。ここの近くに確か小学校があったはずなんで、そこにアスカを通わせてあげたいんです。それも、普通の一般人として」
『わかりました。では早急に手配いたします』
「あれ、理由とか聞かないんですか?」
『心配ありません。我々もずっとお嬢様が特別扱いされているのを嫌っていたのは知っていましたから』
「なるほどね。じゃあ後はよろしくお願いします」
俺はその後、少し詳しい事を話し合い、電話を切った。
これで少しはアスカの寂しさもまぎれるかもな。
なんて考えながら部屋にもどる。
「よしアスカ! お前は明日から学校に通うことになったぞ! よかったな!」
「なんじゃと!?」
寝ころんでテレビをみていたアスカがガバッっと起き上がる。
「学校は楽しいぞ! ここから一番近い小学校に転校だ。転校生は人気者になれるぞ!」
「い、いやしかしだな・・・」
突然の事に戸惑いを隠せない様子のアスカ。
「えぇい! 子供のくせにうだうだ言ってんじゃねぇ! そうと決まれば学校の用意買いに行くぞ!」
「わわわかった! まて、担ぐな! おーろーせー!!!」
「すげー、最近のランドセルはこんなに種類があるのか! さぁ、何色のランドセルがいいんだ?」
「どれでもよい」
ランドセルに背を向けて口を尖らせているアスカ。
なんとか無理矢理に近所のイ○ンにつれて来たけど、どーにもすねてしまったみたいだ。
「じゃあこのう○こ色のにしよう。多少イジられるかもしれんがしかたないな」
「待て! それはやじゃ! ちゃんと選ぶからそれは戻してくれっ!」
その後、学校で必要な物を買い揃えて店をでた俺たちは、腹が減ったので近くのファミレスに行く事にした。
「ほぉ、ここがふぁみれすか」
席に座ってからも落ち着かないのか、キョロキョロと周りを見回しているアスカ。
「なんだ、やっぱ初めてだったのか」
「料理はいつも作ってもらってたからの」
ほほぅ・・・ この小娘は俺が冷えてカチカチになったコンビニのおにぎりを食べてる時にそんな良い思いをしていたのか・・・
「どうしたシロウ? 急に黙りおって、目が恐いぞ?」
「ふふふ・・・」
俺は黙って店員を呼ぶボタンを押し、店員がこちらにくる。
「この店で一番高いのと、お子様ランチで」
「なっ!? 誰がお子様ランチなど食べるかっ!!」
「ガキが贅沢言うんじゃねぇ! お前はお子様ランチで十分だ!」
「な、なにを怒っておるのだ?」
「ケッ」
アスカは少し混乱しているようだがまぁいいだろう。
いやー、しかし一回言ってみたかったんだよな。 この店で一番高いのくださいって。
ふふふ、どんな高級料理が出てくるか楽しみだ。
数分後。
「・・・なんですか、これは」
「当店で一番高いメニュー『超ジャンボオムライス』です」
笑顔で言う店員さん。
俺は涙目になり、前に置かれた直径30cmはあるオムライスを見下ろす。
「ふ、ふざけんなぁぁぁ!!」
くそ! なんでまたオムライスなんだよ!?
ちゃんとメニューを確認しなかったのが裏目にでたか!
「こんな量食えるかぁ!!」
「うるさいぞシロウ!」
前に座るアスカの前には普通のお子様ランチが置かれているが、どうやらアスカはこれが気に入ったらしく、満面の笑みでそれをながめている。
その後、俺はなんとか2時間かけてオムライスを完食した。
もう20年はオムライスは見たくねぇ・・・




