◇その1「あれ、拉致っちゃった?」
朝起きると、同じ布団に女の子が寝ていた。
そして少し顔を赤らめて一言。
「・・・責任は、とってもらうぞ?」
「へ・・・?」
時間は少し進んで、30分後。
俺と女の子はテーブルをはさんで向かい合っていた。 女の子はまだ眠いのか首をカクカクしながらぼーっとしている。
「・・・」
「・・・」
気まずい。 何か話さねば。
というかまずなぜこんな子供が俺の布団で寝ていたんだ!?
確か昨日は大学の飲み会に行って、バカみたいに飲んで、そっからの記憶がなくて、起きたら隣に女の子がいたと・・・
これもう完全にやっちゃったんじゃね? 誘拐だよどー考えても! 犯罪者確定だヒャッホウ!!
ってまてまて!! まだ俺がつれて帰ってきたって決まったわけじゃない! この子にちゃんと詳しい事を聞いてみよう!
「えーっと、どーして君は俺の家にいるのかな?」
「どーしてだと? お主がつれてきたんじゃろう?」
「・・・俺が?」
「うむ」
「どーやって?」
「わしが夜道を歩いていると、お主が声をかけてきたんじゃ」
「な、なんて?」
「行く所がないなら俺の家に住めばいいと」
なんだと・・・!? もうそれじゃあ完全に誘拐・・・いや、行く所がないって言ったか?
「もしかして君は家出中かなにか?」
そうたずねると少女はコクリと頷いた。
なるほど。 これなら迷子の保護ということでなんとか犯罪者にはならなくてすむかもしれないな。
となるととりあえず家の場所を聞かないとな。
「君、家の住所とかわかる? あと名前はなんていうのかな?」
俺は目の前に座る10歳くらいの少女に優しく声をかける。
「・・・ぬ?」
「名前を教えてくれるかな?」
「・・・知らん」
「へ?」
「思いだせん」
「いやいやわからないわけないだろ!? 自分の名前だぞ?」
まだ寝ぼけてるのかこいつは?
「記憶喪失じゃ。だから記憶が戻るまでここに住まわせてくれ」
真顔でたんたんと語る少女。
どう考えてもうそだろ。 てかうそをついてまで家に帰りたくないのか? まぁ色々と事情があるんだろうが、だからといって家に置いとくわけにもいかないからなぁ。
「言いたい事はわかったけどな、家に置いとくのは無理だ」
「なぜじゃ! 良いと言ったではないか!」
少し怒り気味に叫ぶ少女。 くそ、少し良心が痛むぜ。
「ああ、酔っ払ってたとはいえ俺にも責任はあるからな。だから他の住める場所を探してやるよ」
友達の家とかで。
「やじゃ!」
「わがままを言うんじゃない! そもそも一人暮らしの俺には2人分も生活できる金がないんだ!!」
ふっ、言ってやったぜ。 これがTHE・大人の事情ってやつだ。 大人の事情の前では子供の発言力はほとんど無くなるのさっ!
というかほんとに金がないんだよっ!! 学生の一人暮らしなめんなよっ! くそぅ、どっかに大金ころがってないかなぁ・・・
「・・・そうか。無理を言ってすまなかったな」
残念そうに言いながら立ち上がる少女。
負けるな俺! いくらかわいそうだからってここで変に偽善者ぶって声をかけてしまえばさっきまでの努力が無駄になる!
「世話になったな」
そう言って玄関のドアに手をかける少女。
「まてよ、ちゃんと代わりの家は探してやるって!」
「いやよい、そこまで迷惑をかけるわけにもいくまい」
え、なにこのオーラ、コイツ何歳なの? 見た目はどー見ても10歳くらいなんだけど。
「そ、そうか。ごめんな・・・」
「ではの」
「あぁ・・・」
「ぁ、そういえば記憶喪失だったんだが、一つだけ思い出したことがある」
「ん? なんだ?」
てかその設定はちゃんと最後まで守るんだな。
「ワシは大富豪の娘じゃ」
「好きなだけうちに住めばいい<キラン>」
こうして俺のとっさのナイス判断(保護の謝礼金目当て)により、少し変わった少女との二人暮らしが始まった。




