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転生したら東條英機だった件 〜米国の罠を暴き、日本国を救う〜  作者: イチジク浣腸


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3/5

多面外交の綱渡り

1941年10月下旬。

首相官邸の執務室で、俺は複数の電報を同時に処理していた。

「野村大使から返電です」

秘書官が報告する。

「読め」

「『米国国務省と会談。中国駐留軍削減案を提示したところ、ハル長官は関心を示した。ただし、全面撤退でなければ石油禁輸解除は困難との反応。引き続き交渉継続』とのことです」

やはり厳しいか。だが、完全拒否ではない。まだ希望はある。

「次、英国は?」

「クレイギー大使からです。『チャーチル首相との会談を打診中。ビルマルート問題について、日本側の譲歩案に興味を示している模様』」

良い兆候だ。

「ソ連は?」

「建川大使より。『モロトフ外相と会談。日ソ中立条約の強化について、前向きな反応。ただし、具体的な条件提示を求められている』」

俺は地図を広げ、極東部分を見つめた。

「ソ連への条件は……北樺太の石油・石炭採掘権の延長。それから、満州国境の非武装化提案だ」

「よろしいのですか?満州国境を非武装に——」

「どうせ、ソ連にも日本にも戦う余裕はない」

俺は即答した。

「それよりも、ソ連を味方につける方が重要だ。いや、味方でなくてもいい。中立を保ってくれればいい」

そこに、別の秘書官が飛び込んできた。

「総理!重大な報告です!」

「何だ?」

「中国の重慶政府から、秘密裏に接触がありました」

俺は身を乗り出した。

「本当か!?誰が?」

「蒋介石総統の側近、張治中将軍です。第三国を経由して、会談を打診してきました」

来た。俺が裏ルートで打診していた接触だ。

「どこで会う?」

「香港です。英国の仲介で」

「分かった。すぐに準備しろ。誰を派遣する?」

俺は考えた。この交渉は極秘だ。表立って動けば、陸軍の強硬派が騒ぎ出す。

「参謀本部から、中国通の将校を一名。それから外務省の中国課長。あと……」

俺は決断した。

「俺も行く」

「総理!?それは危険です!」

「分かっている。だが、これは重要すぎる。代理では済まない」

東條英機自身が動く。それが誠意の証になる。

11月初旬。香港。

俺は民間人に変装し、極秘で香港に入った。護衛は最小限。場所は英国総督府の一室。

「お待ちしておりました、東條総理」

張治中将軍が現れた。60代くらいの、精悍な顔つきの軍人だ。

「張将軍。お会いできて光栄です」

俺は頭を下げた。東條英機が、中国の将軍に頭を下げる。これだけでも異例だ。

「率直に申し上げます」

俺は切り出した。

「日本は中国から撤退する用意があります」

張将軍の目が見開かれた。

「……本気ですか?」

「本気です。ただし、段階的にです。即座の全面撤退は、国内の反発が大きすぎる。5年から10年の計画で、完全撤退を目指します」

「満州は?」

「満州国の扱いは……難しい」

俺は正直に言った。

「だが、満州国の国際管理化は検討できます。日中ソ三国による共同統治。あるいは国際連盟の信託統治」

張将軍は腕を組んだ。

「なぜ今、そのような提案を?」

「米国です」

俺は地図を広げた。

「米国の真の目的は、日本の排除と中国市場の独占です」

俺は米国の対中政策文書——これは東條の記憶と、俺の歴史知識を組み合わせたものだが——のコピーを見せた。

「『門戸開放』『機会均等』。美しい言葉ですが、その実態は米国企業による中国市場の支配です。米国は日本を排除した後、次は英国を、そして最終的には中国の主権そのものを脅かすでしょう」

「……」

「蒋総統は今、米国の援助に頼っています。だが、その代償は戦後に支払わされる。莫大な債務、不平等条約、治外法権の復活」

俺は身を乗り出した。

「日本が中国から撤退する代わりに、中国は米国一辺倒の政策を見直していただきたい。日中が協力すれば、米国の野心を抑えられる」

張将軍は長い沈黙の後、言った。

「蒋総統に伝えます。ただし、約束はできません」

「構いません。検討していただけるだけで十分です」

香港を発つ前、英国の仲介役であったクレイギー大使が言った。

「東條総理。貴殿の行動は、歴史的偉業です」

「歴史的……ですか」

「ええ。東條英機が中国と和平交渉をする。誰が想像したでしょう」

俺は苦笑した。俺自身も、1週間前までは想像していなかった。

東京に戻ると、さらなる報告が待っていた。

「総理、米国から非公式の打診です」

「何だ?」

「ルーズベルト大統領の側近、ホプキンスが、日米首脳会談の可能性を示唆しています」

俺の心臓が跳ねた。

「本当か!?」

「ただし、条件があります。中国からの撤退計画の具体案を事前に提示すること」

「分かった。すぐに作成する」

俺は徹夜で撤退計画を練った。どの地域から、どの順序で、何年かけて撤退するか。軍と国民が納得し、かつ米国も受け入れられるギリギリの線を探る。

11月中旬。

様々な外交ルートが動き出した。米国との首脳会談の可能性、英国との協調、ソ連との関係強化、そして中国との秘密交渉。

だが、時間がない。歴史では、11月26日にハル・ノートが提示される。それが事実上の最後通牒となり、開戦が決定された。

あと10日。

「もう少しだ。もう少しで道が開けるバズ」

俺は祈るような気持ちで、各国からの返信を待った。

窓の外、東京の夜景が広がっていた。この街を、この国を、絶対に守る。

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