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建物の構造は公安が入手していたため、2人1組になった突入班は手分けして建物内を捜索している。
各部屋に仕掛けた防犯カメラでそれを確認しながらダイナは楽しそうに口の端を吊り上げた。
「へえ。向こうには俺と気の合うヤツがいるのかね。望んだ通りにペアになりやがった」
どうやら突入班の情報はかなり握られているらしい。ダイナはそれぞれのペアが向かう先に仲間達を配置していく。
「俺がお前達に望むのは、その怒りや欲望のままに暴れることだけだ。……思いっきり楽しんでこい」
リーダーの言葉で仲間達に気合が入る。そのままそれぞれに指示された部屋へと向かって行った。
ある部屋ではキトラとフチのペアが敵との交戦に備えながら割り振られたエリアを進んでいた。
「この先は中庭になってるな。今のところ誰もいないが、気を抜くなよ」
「はい」
外の明るさに目が眩まないように注意して中庭にでると、2人の頭上を何かの影が横切った。
「……避けろ!」
間一髪キトラの声で2人がその場を離れると、人がすごい速さで落ちてきた。着地した地面に足がめり込んでいる。
「やった!一番やりたかったヤツらだ!」
なぜ足が折れないのか不思議なほどの勢いで落ちてきたのに、ジルバは嬉しそうにその場で飛び跳ねている。
そのままノーアクションで突っ込んできた。
「クソ!」
キトラが糸で動きを止めようとするが、力任せに払い除けられジルバは突進してくる。だが別の糸でキトラが上空へと逃げたことで、ジルバは勢いを止められず建物の壁に突っ込んだ。
「いたた。お前強いな。戦い慣れしてる」
かなりの勢いで突っ込んだはずなのにジルバは平気な顔をしている。しかし、その腕からは血が出ていた。
「……腕付き?」
てっきり能力者だとばかり思っていたのでフチが驚きの声を上げる。
「うん。お兄さんもだろ。嬉しいなぁ。俺以外にも強い腕付きがいるなんて」
犯罪者とそれを捕らえに来た者とは思えなくなるジルバの明るさに、フチとキトラは顔を見合わせる。
「……なんで君はこんなことしてるの?」
フチの問いにジルバは首を傾げる。
「こんなこと?ダイナさんに協力してること?……俺の願いを叶えたいから」
「願い?」
「おっと。俺はお喋りしに来たんじゃなかった。ねえ。さっさと続きやろうよ。あんたらは俺の願いを叶えてくれそうだ」
あくまでも楽しそうに、いい遊び相手を見つけたかのように戦いを望むジルバ。フチとキトラは目を合わせると迎え撃つ姿勢をとった。
別の場所ではスイレンとホムラがペアになって進んでいた。
「今のところ粒子の動きは感じませんね」
「そうか。何か感じたらすぐに教えてくれ。お前はずっと現場を離れていたんだから、俺から離れるなよ」
久しぶりの現場のホムラにスイレンは不謹慎にもキュンキュンしてしまう。
しかし目の前にモガが現れたことでそれはすぐに終わってしまった。
「……街で人を昏倒させたヤツだな」
ホムラ達の姿を見つけるとモガは震えだした。
「ああ、あの私は、その」
戦意を感じさせないその姿にホムラとスイレンは戸惑う。どうしようかと悩んでいるとモガは更にパニックに陥っていった。
「やっぱり……怖い!」
次の瞬間、モガから出た粒子の塊があちこちへ飛ばされる。慌ててスイレンが自分達のほうへ向かってきた分を無効化してホムラの前へと出た。
「これで街の人達を昏倒させたのか。なんでこんなことするんだ!」
「ごごめんない!だって……私……わからないんです……この力がなんなのか……だから、怖い!」
再び粒子を放つモガにスイレンは無効化で対抗する。ホムラが隙をついて麻酔銃を撃ち込もうとするが、なぜかスイレンに止められた。
「スイレン?」
「ホムラさん。少し待ってください。あの子、もしかして……」
怯える姿とさっきの言葉に、スイレンの頭にはある考えよぎった。粒子を無効化されて更に怯えるモガのほうへ一歩踏み出す。
「……嫌だ。怖い」
三度粒子を振り撒こうとするモガだが、スイレンが間一髪で止めた。
「待って!君、この光の粒が見えてるんじゃないの?」
その言葉にモガの反応が変わる。恐怖の中に縋るような何かが混じりだした。
「……あなたにも見えてるの?」
「やっぱり。……君は目を持つ人なんだね」
スイレンの後ろでホムラが驚愕する。
モガは静かに頷いた。
セキトとカグラはゼロと対峙していた。
他の2人とは違い、こちらは敵意をむき出しにしてセキト達を睨んでいる。
「どっちが能力を解除できるヤツ?」
何度もダイナの糸を解除してるのでカグラの力は知られているだろうと思っていたが、まさかそれを聞かれるとは思っていなかったのでセキト達は面食らう。
「えっと……僕だけど?」
軽く手を上げて答えるカグラにゼロの激しい怒りが向けられた。
「お前の……お前のせいで僕は……許さない!」
ゼロが金属の箱のような物を投げる。手のひらサイズのそれがカグラの近くまでくると急に爆発した。
セキトがカグラを抱えて避難したため爆発に巻き込まれることはなかったが、その不可思議な能力に2人は驚く。
「あれが交通機関を麻痺させた能力か」
「……何?あの力」
セキトに抱えられながらカグラは目を見開いてゼロを見ている。
「カグラ?」
「機械に粒子が含まれてる。人の脳に作用するわけでも、物質を生み出すわけでもない。彼の粒子は機械の電気信号に作用してる」
見たことも聞いたこともない能力にカグラはやや興奮気味だ。セキトはやれやれと思いながら、できれば戦闘は避けたいとゼロとの対話の糸口を探す。
「ねえ。君。どうやらとても変わった力があるようだけど、どうして悪事に加担するような真似をしてるのかな?」
いたって冷静に話すセキトに、ゼロは怒りが更に増してくるようだった。
「なぜ?お前達のせいだろ!僕だってこの力で悪いことなんてしたくなかった!普通の暮らしがしたかった!なのに……」
怒りに燃える瞳がカグラを射る。
「全部!全部お前のせいだ!……スイレン!」
「「……へ?」」
ここにはいない人物の名前が出てきて、セキトとカグラの頭に大きなハテナマークが浮かんだ。




