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リファについては意外にも過去の情報が警察に残っていたため、出てきた情報についてセキトが護衛組に周知しに来た。


「詐欺の疑いでマークされていたようだな。それが10年前。当時20歳か。若いがかなりのやり手で、心が読めるかのように全てを言い当てられて被害者は気づけば言いなりになっていたらしい。まあ記憶を書き換える能力があれば容易だろう。結局決定的な証拠が掴めないうちに姿を消されたらしいが……なぜ今回は存在を残したのか」

「防犯カメラにも姿が残ってますしね。何の意図があるのか」


コハクの言う通り、リファはルナと会った店などで防犯カメラに姿が残っている。セキトは怪訝な顔で話を続けた。


「ララ君の誘拐現場にもいたようだな。動物園に出入りする姿が残されている。逆にルナ君に糸を仕掛けた人物は情報が出てこないな。ヨル君にはリウと名乗っていたようだが、偽名なようだし。この差はいったいなんの意味があるのか」


ん〜と悩みながらセキトはトカゲを見た。


「ひとまずリファから探りを入れるしかないか。トカゲ君、君のチームのメンバーに指示をし直すから一緒に来てくれ。……君もカグラのところに入り浸ってばかりいてはダメだよ」

「大丈夫です。きちんと仕事はしてますよ」


いい笑顔で返すトカゲにセキトは「まあ。それはわかっているが」と納得いかない表情をしていた。




護衛班も出来る限りは情報収集に協力しようと、外に出ていたキリが夕方に戻ってきた。そのままカグラのところを覗くとルナの診察が終わったところだった。

公安内で何かあるとも思えないが、ちょうどいいからと護衛のフチのところまでルナを連れて行くようにカグラに頼まれる。だが、2人の間に流れる空気は重たかった。


「今日は仕事に行ってたのか?体調はどうだ?ヨルの時は丸一日目を覚まさなかったからな。気分悪かったりしないか?」

「大丈夫。仕事は普通に行けたし、カグラさんの診察も問題なかったよ」


キリが心配してあれこれ話しかけるが、まだ自分のしてしまったことが忘れられずルナは目を合わせられない。

その様子にキリが怒ったようにルナの頬を両手で挟んで無理やり自分のほうを向かせた。


「ルナ!今度は俺がお前を助ける番だ!」


薄紫が強い光を放っている。そこにはルナを非難する色も蔑む暗さもなかった。


「お前がどれだけ自分を嫌になっても、俺が何度でも肯定してやる!暗い闇から救い出してやる!お前がしてくれたみたいに!」


全力で。キリはルナの心に手を伸ばしてくる。

その姿に昨日から何度目かというくらいの涙を流してルナが頷いた。目の前の強く優しい人を見て、この人を好きになって良かったとルナは心から思った。


「……俺の好きな優しい瞳に戻ったな」


いつか言った台詞を思い出させる言葉をかけられる。ルナは思わずクスリと笑ってしまい、キリもつられて笑顔を見せた。


「フチとシュカとはどうだ?急に護衛だなんて言われて知らない家に連れてかれて驚いただだろ」

「ああ。まあ護衛は仕方ないから……でも、シュカさんには怒られてしまった」


眉を八の字にして笑うルナをキリは心配する。


「えっ⁉︎シュカのヤツなんて言ったんだ!アイツ常識ないから」

「あ、いや、私のせいなんだ……シュカさんはむしろ心配してくれて」


慌ててシュカをフォローするルナは昨夜あったことを話しだした。




護衛の件がルナの了解を得られたのでシュカ達3人は寮へとやってきた。そして、その出来事はフチが風呂に行ってる時に起こった。


「色々とすみません。お世話になります」


ルナは何も悪くないのだが、家に住まわせてもらうということでどこか所在なさげだ。


「ルナさんは何も悪くないでしょ。むしろ大変だったね。できるだけ気をつかわずに過ごせるように協力するから。フチにも手は出させないから安心して。僕の部屋で寝させるし」


明るくはっきり物を言うシュカにルナは好感を覚える。しかしフチのことに関してはいまだにどう受け止めていいのかわからなかった。


「いえ。フチ君もあんな場面に遭遇したから同情してくれてるだけでしょうし。でなければ私のような大男を可憐だなんて……」


困ったように、少し寂しそうに言うルナにシュカの雰囲気が変わる。厳しい口調でルナを嗜めた。


「フチは同情なんて無責任な感情で人をぬか喜びさせないよ。あの子は苦労した分きちんと人を見てる。そのフチに認められたんだから、君は自分をそんな卑下するもんじゃない」


口調はキツイがそこには思いやりがあり、ルナはフチの気持ちを軽んじたことを申し訳なく思った。


「……そうですね。フチ君はあんなに真剣に想いを伝えてくれたのに……でも、どうしても自分には愛らしいとか可憐だとかいう言葉は似合わない気がして」


熱烈な愛の告白を思い出してルナが少しだけ頬を染めている。それを見てシュカは嬉しそうな表情へと変わった。


「なるほど。確かにフチ好みだね」

「……へ?」

「しかも脈アリかな?これは楽しめそうだね」


シュカがニヤニヤと楽しそうにしてルナにズイッと近寄る。すると、おもむろに頬を摘んだり髪を触ったりしてきた。


「綺麗な肌だねぇ。でも唇は乾燥してるかな。リップを1本あげるよ。シャンプーも髪質に合ってなさそうだね。僕のでいけるかな?ネイルは……動物を触るからやめたほうがいいか。オイルくらいはいい?」


全身あちこち触りまくって、次々に美容アドバイスをしていくシュカ。戸惑っているルナにニッコリと微笑んだ。


「フチは見た目のことなんて気にしないけど、自分磨きは自信に繋がるからね。テンションも上がるし、今のルナさんには必要なものでしょ」




「……というわけで、髪やら何やら色々と手入れをされて。トリミングされてる気分だった」


『それで今日はなんかツヤツヤしてんのか』


キリも会った時から気になってはいたが、今日のルナは全体的にキラキラしている。それはシュカによって磨きに磨かれたためだった。

そんな話をしているうちにフチの待機している部屋までやってきた。開きっぱなしだった扉からコハクとの会話が聞こえてきて、キリ達は止めるでもなく足を止めてしまう。


「もうすぐ研修期間が終わっちゃうね。シエンくんからはこの事件が解決するまで延長していいって言われてるけど、フチくんはいいの?」

「はい!色々な部署の方から学べますし、最後まで力になりたいです!……ルナさんの護衛もしたいですし……」


いつもの勢いが鳴りを潜め、呟くように言うフチにコハクは微笑む。


「ルナくんのこと、好きなんだね」

「……初めて見た時、自分を犠牲にしてでも大切な人を守ろうとしてる姿がとても綺麗で。そんな人が心をズタズタに引き裂かれて涙を流してる。……守りたいと思ったんです」


唐突な告白や傍から見れば訳のわからない理屈に隠された、フチの誠実な愛が見える。

ルナは胸が高鳴るのを感じた。


「シュカさんには怒られてしまいました。傷ついて混乱してる人を更に混乱させてどうするんだって。でも、伝えたかったんです。自分に絶望してしまったあの人に、あなたはこんなに素晴らしい人なんだって」


それは傷ついたキリにルナがしたことと同じだった。たからこそ、ルナにはその愛の深さがよく理解できる。


「好きになってくれなくても構わないんです。ルナさんが元気になってくれたらそれで」

「……伝わるといいね。フチくんの気持ち」


扉の外でルナは再び涙を流している。その背中をキリが優しく撫でた。


「……お前が幸せになってくれたら俺も嬉しいぜ」


囁く言葉にルナはゆっくりと頷いた。




その頃。ダイナ達はルナに関して話していた。


「俺の能力は解除されたみたいだな。タイミング悪く解除できるヤツが来たか」

「……忌々しい」


ダイナの報告にゼロは歯軋りしている。その横ではジルバがケロッとして次へと気持ちを移していた。


「この後はどうするのー?他に使えるヤツ探す?」

「いや、今回はつまらない結果になったからな」


その言葉にリファが一瞬寂しそうな表情を見せる。


「周りからチマチマ攻めるのもあんまり楽しめなさそうだ。どうせならもっとどデカく戦争したくなった」

「やった!全面戦争⁉︎」


喜ぶジルバの横ではモガが不安そうに震えている。


「人の本性なんて所詮欲にまみれた怪物なんだよ。綺麗に取り繕った化けの皮、全てはがしてやる」


怒りをはらんでダイナが吐き捨てる。その姿をリファが悲しみを滲ませた瞳で見ていた。

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