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ヨル達との共同生活が始まって一週間。少しずつみんなが慣れてきた頃、カグラの診察にルナがやってきた。


「やあ。久しぶりだね。ルナ君」

「トカゲさん?あ、そうか。公安勤務ですもんね」


診察も他の仕事もほとんどを公安で行えるようにしたためカグラは常時公安にいるのだが、トカゲが大喜びして用もないのに診察室に入り浸っている。


「うちが大所帯になったためになかなかルナ君を呼べなくなったからね。会えるなら会っておこうと思って」

「嬉しいです。キリは元気にしてますか?」

「人数が増えて騒がしくなったけど、楽しくやってるよ。キリは今訓練場にいるはずだから診察が終わったら行ってごらん。場所を教えてあげよう」

「ありがとうございます」


久しぶりにキリに会えるからか、ルナは嬉しそうに訓練場の場所を聞いている。診察の間も、昨日来たうさぎの写真でも見せようかとずっと上機嫌だった。




その頃。訓練場ではキリが思いっきり投げ飛ばされていた。


「ほれほれ。だんだん攻撃が単調になってきてるぞ。もっと頭を使え」

「うっせぇ!脳筋!」

「その脳筋にも勝てないようじゃまだまだだな。俺が来てよかったと思いな」


罵声を浴びせられてもケロッとしているキトラがそこにいた。今回の事件の深刻さや護衛の重要性も鑑みて、本部から出向してきたのだ。

共同生活のことまで見抜いていたのかはわからないが、モガ達の襲撃の後セキトはすぐに本部に行ってキトラの協力を要請していた。コハクがやたらと上機嫌だったのはこのためである。


「キトラさん!僕ももう一回お願いします!」

「いいぞ〜。フチは力に頼りすぎだからな。体の使い方から覚えていけよ」


やる気満々で飲み込みも早いフチにキトラはご満悦だ。今度はフチとの組み手が始まったところで、ウタハがやってきてキリを外に呼び出した。捜査について確認したいことがあったらしく話はすぐに終わったのだが、キリが戻ろうとすると腕を掴まれた。


「またこんな傷だらけになって。キトラも容赦ねぇんだから」


頬の擦り傷に僅かに触れない距離で優しく手を当てられる。その心地よさにキリは弱く目を閉じた。


「キ……」


そこへタイミング悪くルナがやってきてしまった。キリとウタハを見つけて声をかけようとするが、2人の間にある空気に動きを止めてしまう。


「仕事だからってわかってるけどさ。あんま無理すんなよ。お前が怪我すんのはさ……やっぱ……ヤだ」


眉を寄せるウタハにキリは愛しさが募る。ふふっと笑うとウタハの頬を両手で包んで額と額を優しく合わせた。


「わかってるよ。大事なヤツができたんだ。俺だって変わった。自分を大切にできるようになった」


そのまま2人は穏やかに笑いあう。その光景に胸が苦しくなってルナは早足でその場を立ち去った。


『……わかってたことじゃないか。告白すらするつもりはなかったんだ。キリが幸せならそれでいい……それでいいんだ……』


どんどん苦しくなる胸を押さえて帰り道を急ぐ。その心にポツンと小さなシミが生まれた。


『でも……なんで……なんで私じゃないんだ……』




一方、コハクとホムラはヨル達の記憶から作成したダイナの似顔絵を見ていた。


「データベースにはヒットするものはありませんでしたね。リウという名前も偽名なんでしょうか?」

「その可能性は高いね。記憶に関しては書き換えられるから当てにならないし、物理的な情報が頼りなんだけどなぁ」

「薬の流通も止まってますね。まあ売人を一斉摘発しましたし、ヨル君達も保護できましたから売ろうにも売れないでしょうけど」

「何が目的なのかなぁ。情報が少なすぎて動きようがないよ」

「公安の皆さんが動いてくれてますからね。情報に関してはお任せするしかないでしょう」

「なんかうちはどんどん脳筋チームになっていくね」

「戦闘力も必要なものです。俺はヨル君達の護衛に行きますから、コハクさんはキトラさんのところに行ってきたらどうですか?」

「……みんな気を使いすぎだよ。すぐキトラのところに行けって」

「それだけコハクさんのことを慕ってるんですよ。たまには甘えてください」


ホムラらしく、からかいなどの一切ない優しさにコハクは照れながらも訓練場に向かった。




公安を出たルナは、沈む気持ちをどうにもできずカフェで1人コーヒーを飲んでいた。

すると隣にきた人物が声をかけてきた。


「隣、失礼しますね」

「あ、はい。どうぞ」


にこやかな笑みを浮かべて男が座る。ルナを見ると心配そうな表情になった。


「どうしたんですか?顔色が悪いですよ」

「え?いや…」

「悲しいことがあったんですね。……失恋ですか?」


急に心の中を言い当てられてルナは男の怪しさも忘れて無防備になってしまう。男はそこを巧みについてきた。


「当たりですか?ああ。すみません。不躾なこと聞いてしまって。ただ私も片思いの相手がいるのになかなか振り向いてもらえなくて。辛いですよねぇ。選んでもらえないのって」


まるで詐欺師のように、男はルナの心の中に入ってくる。ただでさえ弱っていたルナの心はすぐに丸裸にされた。


「あなたとは気が合いそうです。よければもう少しお話ししませんか?」


ニコリと笑いかけられて、ルナはまるで操られているかのように自動的に頷く。男はその反応に満足そうに話を続けた。


「そういえば、まだ名前を言ってませんでしたね。私はリファと申します」

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