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ララが泣き止むのを待ち、ヨルは体を離して立ち上がるとウタハ達に頭を下げた。


「この度はララを助けてくださり、ありがとうございました」


ピシッとした見本のようなお辞儀にウタハは気圧されてしまう。


「いえ。そんな…当然のことをしただけですから…えっと、ララ君のお父さんですか?」

「ララは兄の子なんです。ララが赤子の頃に亡くなったので、私が親代わりをしています」

「そうなんですか。お若いのにご立派です」

「いえ、結局ララを危ない目に遭わせてしまいましたから。保護者失格です」


ヨルもハナもウタハと同い年くらいに見える。その若さで子育てをしているのだ。苦労はどれほどのものか。

気落ちするヨルをみかねてホムラが元気づけようとする。


「今ララ君にも話していたのですが、私は腕付きです。うちのチームには他にも腕付きの捜査官がいますので、困ったことがあれば何でもご相談ください」

「ありがとうございます。あなた方も腕付きなのですか?」


ヨルがウタハとキリを見ながら質問してくる。


「いえ。俺達は能力者です」

「能力者?」

「キリさん、カッコよかったよ!糸から出た水が地面を溶かしてた!」


すっかり元気を取り戻したララが楽しそうにヨルに教えると、「お前も悪いことしたら溶かすぞ〜」とキリに冗談を言われてキャッキャと喜んでいた。


「能力者はそんなことができるのですね。あなたは何ができるのですか?」

「あ〜。能力は捜査のために他言しないことになってるんですよ」

「そうですよね。すみません。能力を持っている方に会ったのは初めてなので興奮してしまって」


ははっと少し恥ずかしそうにするヨルにウタハも「そうですよね」と相槌を打つ。するとシュカがやってきた。


「話聞けました?終わったらララ君達は帰ってもらっていいってコハクさんから伝言です」

「ああ。必要なことは聞けたからもういいだろう。ありがとうございました」


ホムラから聞き取りの終了を伝えられ、ハナ達はもう一度礼を言って帰ろうとする。だがララは新しく現れたシュカに興味津々だ。


「お兄さんも腕付き?」

「そうだよ。事件じゃなくてもいつでも遊びにおいで。おまわりさんと仲良くしてて損はないからね〜」


意外と子供好きなシュカにララも楽しそうにしている。


「ララ君、可愛いね〜。無事で良かったよ。ウタハとキリがデート中止してまで助けた甲斐あったね」

「ちょ!シュカ!それは言わなくても!」


慌ててシュカを止めようとするがすでに手遅れで、デートの言葉はしっかりヨルとハナの耳に届いていた。


「デート……の最中だったのですか?」

「いや、その…」

「それは申し訳ないことをしました。そうだ。良ければ今度お二人でうちに来ませんか?食事をご馳走します。なあ、ハナ」

「はい。助けていただいたお礼として、ぜひ」


話が思わぬ方に転がっていきウタハはワタワタしている。すると、キリが即答した。


「いいんですか?なら、お言葉に甘えさせてもらいます。なあ、ウタハ」

「はっ?キリ、何言って…」

「来ていただけますか。それは良かった」

「では、都合のいい日を私に連絡ください」


ハナとキリが連絡先を交換して、あれよあれよと話が進んでいく。そうしてウタハが会話に乗り遅れている間にヨル達は帰ってしまった。




「お前、何考えてんだよ!」


ヨル達が帰ったあと、ウタハはキリを問い詰めていた。


「何って。別に飯食いに行くだけだろ」

「お礼なんていらないだろ。人を助けるのが俺達の仕事なんだから」

「そうだな。そして悪人を捕まえんのが仕事だ」


キリがスッとスマホを出してくる。そこにはトカゲからと思われる情報がのっていた。


「なんだ?これ」

「あのヨルってのは大手製薬会社の創始者の子孫らしいな。本人は経営には関わってないみたいだが株の大半は所有してる。ま、いわゆるボンボンだな」

「お前、こんな情報いつのまに……」

「男を捕まえて応援を待ってる間に調べてもらった。誘拐が計画的な可能性もあったからな」


さすが公安というべきか。ララと遊ぶことしか考えていなかったことがウタハは恥ずかしくなる。


「お前はそれでいいんだよ」


フワッとキリに笑われる。どうやらウタハが考えてることはお見通しのようだ。


「……それで、何かわかったのかよ」

「犯人の男はただのチンピラ。ただ誰かにララの写真を見せられて金をやるから拐ってこいと言われてたみたいだな。ウツギが聞き出したから間違いない」

「なら、ヨルさん達に伝えないと!」

「……ヨルの兄、ララの父親は殺されてる」


ウタハの目が驚きで見開かれる。


「当時ヨルの兄は離婚してララと共に実家に帰ってきていた。そしてヨルの兄と両親は家にいるところを何者かに殺されている。ララとヨル、ハナはたまたま家にいなくて助かったと当時の資料にはあった。その後、母親が養育を拒否したためララをヨルが引き取ることになったみたいだな」

「……その事件が今回の件と関わりが?」


ララの笑顔がウタハの頭に浮かぶ。父親が殺され、母親には捨てられたなんてあの子は知っているのだろうかと。


「わからない。ただ3人が殺された事件は犯人が捕まってない」


そこまできて、ウタハはキリの言いたいことを理解した。


「……ヨルが犯人だと?」


ヨルがララを抱きしめる姿を思い出す。慈しみ、本当の親のように接する姿を。その愛がもし悲劇を生んでいたとしたら……。


「お前、やっぱ公安に向いてねぇよ」


顔を歪めるウタハを見て、キリは一切の感情を消した。


「ヨルに関しては俺達が追ってる事件との関連も疑ってる。だから家には何としても行きたい。お前は飯食ってララと遊んでればいい」


それだけ言うと、キリはコハクと相談するために14班へ向かってしまった。その後ろ姿にウタハは何も答えられず、ただ俯いて唇を噛み締めるだけだった。

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