1話
人通りの少ない狭い道。夜は街灯の光も入ってこない路地裏。
「なんなんだよ!さっきから!」
暗い夜道では見えにくい、黒い魔法でできた化物。見た目は黒い狼のようだ。大勢の狼が彼を追う。もちろん追い払おうと蹴りを入れたが、蹴った左脚を掴まれて噛まれてしまった。骨を含めて、脚は欠けてしまい、骨が剥き出しになっている。
路地裏に逃げる羽目になったが、そこで漸く撒くことができたようだった。
噛み切られた脚でずっと立っていられる訳もなく、彼は座り込む。
「はぁ、はぁ、うっ……くそっ……!」
放置しても、彼は死ぬだろう。でもそんな死に方を許さない存在がいる。彼の背後から1人。暗いオーラを放ちながら闊歩してくる。
「……!?」
彼の金髪の輝きを覆い隠すほどの暗いオーラに気が付き、後ろを振り向こうとしたとき、既に首元には大鎌の刃があった。少しでも動けば首が飛ぶだろう。
「うごいたらころすから」
場違いに幼い声は、異様な雰囲気を醸し出す。
「誰だよクソガキ」
明確に嫌味を吐き、悪態を吐くが、彼は今身動きの取れない状態だ。
「なんであんなことをするの?」
「は?あんなことってなんだよ」
「こたえて」
有無を言わさないその台詞は、そのオーラと大鎌を以て威圧感を持つ。
舌打ちを打ち、苛立ちを隠さないが、この状態を切り抜けるために彼は話す。
「知らねえよ、なにも悪いことはしてねえし」
「……」
その返答に一瞬、場が固まるが、すぐに大鎌が離される。すると後ろから彼の前にその声の主が躍り出る。
その姿に彼は驚きを隠せない。幼いことは声から推測できたが、なにもかも異様だった。
黒い髪のツインテールに黒いゴスロリとまでは行かないロリィタ服。右手に持つ大きな鎌。そして見開かれた真っ赤な目。その少女は、少し笑みを見せている。
「覚えてもいないんだ」
「じゃあ思い出させてあげる」
そう言って少女は、金髪の男が怪我をしている左脚を執拗に踏み倒した。その度に骨には罅が入り、血が吹き出し、苦悶の声をあげる。
次は魔法で体を貫く。鋭く細い魔法であり、空洞になっている。刺されば、空洞から血液が出てくるようになっている。急所ではないところを幾多も刺され、出血多量で彼は意識を失った。
翌日、路地裏で血塗れになった死体が発見された。
影でひっそりと血に塗れた金色の髪が姿を見せていた。第一発見者は大きく悲鳴をあげたようだ。




