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巡る季節の約束  作者: ysk
2/4

風鈴の約束(永遠の絆)~夏~

※注意※

この物語は、**小学生でも読みやすいように、難しい漢字にはふりがなをつけています。**

ふりがながあることで、誰でも安心して物語を楽しめるよう工夫しています。


---


**◆ 夏の祭りと風鈴の音**


遠ざかる夏の夕暮れ、祭りのあかりが揺らめく。

人のざわめきの中で、風鈴の音だけが変わらず響いていた。


紗雪さゆきは、その音に足を止める。

記憶の奥底に眠るものが、風に呼び起こされるような気がした。


「風鈴の音が聞こえれば、また会える。」


誰かが、そんなことを言っていた気がする。


しかし、その声のぬしは思い出せない。


---


**◆ 惟次郎の導き**


ほたるは時間を測るのが苦手だった。」


不意ふいに惟次郎の言葉が耳に響いた。


「でも、花火だけは見逃みのがさなかったんだ。あの光が夜空に咲けば、祭りの終わりが分かるって。」


紗雪は、その言葉に何かを感じた。

なぜか、自分も花火を待っている——理由も分からずに。


「風鈴の音を聞けば、きっと答えは見つかる。」


惟次郎の静かな言葉が、紗雪の胸の奥に染み込む。


---


**◆ 記憶の波紋**


灯花とうかの言葉が胸に深く沈んだ瞬間しゅんかん、紗雪の視界しかいがぼんやりと揺らぐ。

風鈴の音が、どこか遠い日々の残響ざんきょうのように響いている。


——夏の夕暮れ。

——夕焼けの光に染まる縁日えんにちの道。

——ひときわ高く笑う誰かの声——


紗雪は目を閉じる。

その声が、灯花なのかどうかは分からない。

けれど、心の奥で何かがほどけるような感覚があった。


「……待って」


無意識むいしきのうちに、紗雪のくちびるが震える。


——待って。もう少しだけ。

——あの日、境内けいだい石段いしだんの上で、誰かの背中を追いかけた記憶——


「……私、あなたのことを忘れてしまっていたの?」


灯花は優しく頷く。


「でも、それは悪いことじゃないよ。私はずっと、ここにいたから。」


その瞬間、風が吹いた。

境内の風鈴が、一斉いっせいに涼やかな音を奏でる。


紗雪はそっと手を伸ばす。

灯花の指先ゆびさきに触れた温もりは、もはや曖昧あいまいな記憶の欠片かけらではなく、確かに今ここに存在そんざいするものだった。


---


**◆ 惟次郎の見届ける瞬間**


惟次郎は、遠くからふたりの姿すがたを静かに見つめていた。

灯花の存在が、紗雪の記憶の中だけのものではなく、**確かに現実世界げんじつせかいに息づいている**——それを惟次郎は誰よりも理解していた。


風が吹く。

境内の風鈴が涼やかな音を奏でる。


紗雪は灯花の手を握る。その指先の温もりは、もう遠い記憶のものではなく、確かな現実だった。


惟次郎は、それを確認かくにんするかのようにそっと目を閉じる。

誰にも干渉かんしょうせず、ただそっと見守る——それが彼の役目やくめだった。


夜空に咲いた花火の光が、紗雪と灯花の横顔よこがおを優しく照らす。


惟次郎は、その光の中で微かに微笑ほほえんだ。

**この夜の光は、いつまでもふたりの未来みらいを照らし続けるだろう。**


風鈴が鳴る。

その音は、誰かの遠い記憶の奥で、やがて静かに溶けていく——


**fin**

「風鈴の約束(永遠の絆)~夏~」を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


この物語は、**記憶と絆、時間を超えた約束**をテーマに紡がれました。風鈴の音と夏祭りの風景が、遠い記憶の奥底に眠る感情を呼び覚まし、紗雪と灯花が再び出会う——それは単なる偶然ではなく、過去の約束が今この瞬間に繋がった証でした。


また、惟次郎の視点を加えることで、物語に**「見届ける存在」**の要素を持たせました。彼は紗雪と灯花の関係をただ眺めるだけではなく、その意味を理解し、静かに受け止める役割を果たしています。誰かの記憶が消えても、想いが残り続ける——そんなテーマを、彼の視点を通して描きました。


そして、風鈴の音は過去と現在を繋ぐ鍵。たとえ時間が流れても、この音が響く限り、忘れかけた約束はいつか思い出されるのかもしれません。


この物語が、読んでくださった皆さんの記憶の片隅に、そっと寄り添う存在になれたなら嬉しいです。


**また、どこかの季節で——風鈴の音が響く日に。**

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