表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

44話 私、口説かれてるの?

 


「陛下に命じられたことは他にもあるんだ。それが、君との婚姻だよ、フィオナ」


「婚姻!? 私とアルヴィンの!?」


「陛下は俺に、ローレイを失脚させたのち、カルディアリアム伯爵家の正当な血筋と婚姻を結び、伯爵の爵位を継げと命じたんだ。もっとも、数年経てば、離婚して爵位を譲ったのち、フィオナにはどこかに屋敷を用意して、隠居して頂くつもりでしたが」


「……それは、領地の立て直しのためですか?」


「正解、理解が早くて助かるよ。婚姻が一番手っ取り早い爵位の譲渡だし、混乱が少なくて済む。僕もそろそろ歳だし、領地の一つでも運営して、監査員は卒業しろとのお達しでしたしね」


 ――てことは、私が余計なことしなくても、フィオナはいずれ、助かってたってことだよね!? しかも、政治的な思惑があるとはいえ、アルヴィンと数年は結婚出来てたってことでしょ!? なんて勿体無いことをしたんだ、私! 数年引きずるくらいの案件だよ。


「隠居か……条件次第では飲んでもいいんですけどね」


 要は、悠々自適に堕落生活が送れるということよね? 全然良い! 領地を任せる相手がどうしようもない奴なら話は別だけど、アルヴィンなら安心して任せられる!

 一生結婚せずに、隠居生活を続けるのも悪くない!


「フィオナ? 何を考えているのか大体想像がつくけど、イリアーナとジェームズに怒られるよ?」


「くっ」


 駄目か……いい考えだと思ったのに。


「因みに、ジェームスも何となく、俺がただ者ではないことには気付いていたと思うよ。一切、気付かなかったのはカロンくらいじゃないかな」


 流石だわカロン、それでいいの。そんな相手がいた方が、安心するわ。『アルヴィンー! 昨日、合コンで女の子が皆、連絡先も交換してくれなくてよー!』って馴れ馴れしく話していたカロンは、一切気付いてないでしょう!


「フィオナも何となく、俺が普通でないことには気づいていただろう?」


「それはまぁ、何となくは」


 でも無害だと思って完全に放置してたけどね。まさか陛下直属の監査員なんて……


「あの、お話は分かりましたけど、私がカルディアリアム伯爵と認められたからには、アルヴィンと結婚する必要もなくなりましたよね? なのに、なんでこんなに密着してくるんですか?」


 しかも聞いた話じゃ、完全に愛のない離婚前提の政略結婚でしょう? こんなにイチャイチャする必要はないと思うんだけど……!


「遠回りしてもフィオナには伝わらないと思ったから、直球で攻めていこうと思って」


「はい?」


「俺の婚約者になって、フィオナ」


「――――はい!?」


 意味が分からない。だって、もうアルヴィンと私が結婚する理由なんてないはずなのに!


「ゆっくり口説き落としたかったんだけど、デリートといい、君にちょっかいをかける輩はいっぱい出て来ると思って、先手を打つことにしたんだ」


「何のお話でしょう? 私を押し付け合っていた件ですか?」


「フィオナは恋愛沙汰には疎いね」


 失礼な! と言いたかったけど、実際その通りだったので口をつぐんだ。


「フィオナを好きになったから、本当に婚約者になって欲しいんだ」


「…………」


「フィオナ?」


 好き? 好きとは? アルヴィンが私を? 何故? こんな年齢=彼氏無いの私を?


「む」

「む?」

「無理です!」


 アルヴィンみたいな優良物件と結婚出来なくなって勿体無い、なんて思ったけど、それはそれであって、恋愛だと言われればそれはもう、どうすればいいの!?


「俺のことをイケメンだと褒めてくれていたのに、駄目なんだ? 俺なら、皆が納得する最適な結婚相手だと思うけどね」


「そ――れは、そうでしょうけど」


 アルヴィンはローレイとは違う。次の結婚が失敗出来ない私にとって、最適だと思う。


「正直、自分の婚姻に全く興味無かったんだけど、フィオナに会って、こんな貴族の女性もいるんだなって興味が湧いたんだ。それからは、どんどん君に惹かれていったよ」


「私、口説かれてるの?」


「ああ、口説いてるよ。ローレイとも離婚が出来て、フィオナが独身に戻ることだしね」


 そうだ、陛下のお力添えのおかげで、ローレイとの離婚が成立するんだ。これで、はれてローレイとは他人になる。


「か、考えます! ちゃんとアルヴィンとのことは考えるので、とりあえず、一旦落ち着いて、ローレイ達を追い出してからでもいいでしょうか!?」


 領主会後、ローレイは一足先に家に戻らせたけど、すんなり出て行くとは考えにくい。

 でも、他人になった以上、これ以上家に置いておく理由もない。キャサリン諸共、追い出してあげないとね。


「仕方ないな、じゃあ、今回だけ引き下がってあげよう」


 良かった……もうこれ以上はもたない。心臓がヤバい。恋愛初心者を身動きのとれない馬車の中で追い込んで責めないで欲しい!


「ちなみに、アルヴィンはどういう立ち位置で行くの?」


「それは勿論、もう身分を隠す必要もなくなったので、思う存分楽しもうと思ってるよ」


「……アルヴィンって本当に意地悪よね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ