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43話 アルヴィンの正体②

 


 監査――恐ろしい言葉だわ! 会社で監査があると知らされた時には、嫌でも残業コース確定の鬼勤務だった! それが隠れて、お忍びでくる? 恐怖じゃん! 怖っ!


「あの時点でローレイから爵位を剥奪することは決まっていたから、予めローレイの生家であるクィクリー伯爵には、息子の愚行と、それに伴う爵位の剥奪の件は通達しておきました」


「それで、ローレイの実家は何も言ってこなかったんですね」


「ローレイはクィクリー伯爵家から絶縁されたからね。だから、意地でもフィオナ様の家にしがみついていたんだと思いますよ」


 帰る場所がないのは、キャサリンだけじゃない、ローレイも同じだった……いや、それでよく、家主である私に対してあんな横柄な態度が取れるな。神経を疑うよ。


「ここでアルヴィンの正体を明かしたということは、私への審査が終わったということですよね?」


 ここで陛下が首を横に振れば、カルディアリアム伯爵の座は剥奪されることになるのだから、この世界に転生して、一番緊張する場面と言っても過言ではない。どうか、大丈夫でありますように!


「陛下が言った通り、フィオナ様の功績は認められています。よって、カルディアリアム伯爵の座が剥奪されることはありません」


「よ、良かったぁ」


 デリート侯爵の言葉に、一気に肩の力が抜けた。

 これでカルディアリアム伯爵が剥奪されたとなれば、皆に合わせる顔が無いもの。


「ふふ、カルディアリアム伯爵は本当に興味深い女性ですね。是非、僕とも仲良くなってくれませんか? 僕はデリート侯爵で爵位も持っているし、若くして魔道具の研究主任の地位も得ています。カルディアリアム伯爵の新しい婚約者として申し分ないと思いますが――」


「デリート? 寝言は寝て言えよ」


「冗談冗談、半分は」


「へぇ、半分は本気じゃないと」


 よく意味の分からないアルヴィンとデリート侯爵の争いが目の前で起きているのをただ傍観する。何? 私の新しい婚約者? 何故それで喧嘩? まさか押し付け合いなんて失礼な真似してるじゃないでしょーね? いくら公爵令息と侯爵としても、許しませんよ?


「フィオナ、何はともあれ、ローレイから我が民を守ってくれたことに礼をする。引き続き、カルディアリアム伯爵として、領地の運営に尽力して欲しい」


「かしこまりました」


 皇帝陛下に直接頼まれたとあっては、気合いが入るのも当然! 必ずしや、カルディアリアム領を豊かなものにしてみせます!


「ああ、アルヴィンは今しばらく、カルディアリアム伯爵家で使うといい」

「いいんですか?」


 正直、有能なアルヴィンに頼りきっているところではあるので、残ってもらうと非常に助かる! 助かるけど、アルヴィンは監査――密偵の役割りをしていて、正体がバレた以上、ここに留まる理由は無い気がするけど。


「滅茶苦茶になった領地を正常化するまで手助けするのも俺の役割りだから、気にしないで」


「そうなのね」


「アルヴィン、カルディアリアム伯爵を口説き落とせなかったら、次は僕にチャンスを下さいね」


「執拗いね、デリート」


 また口喧嘩? 何なの? 仲悪いの?





 ***



「あの、アルヴィン……様」

「別に今までのままでいいよ」


 カルディアリアム伯爵邸へ戻る馬車の中、何故か、隣で密着してくるアルヴィンに戸惑いつつも対応する私。


「いえ、公爵令息だと知ったのに、今までの態度ではいられません。しかも、アルヴィン……様は、個別で陛下から爵位を頂いてると聞きましたよ!? しかも男爵に侯爵位! タメ口をきけると思いますか!?」


「それは監査のための与えられた仮初の爵位でもあるんだけどね」


「仮初だろうがなんだろうが、与えられたのは事実ですよね?」


 しかも侯爵位なんて、私よりも爵位が上! しかも陛下の側近の一人! 今までそんなアルヴィンを顎で使っていた自分を殴って海に放り出したいくらいよ!


「イリアーナは初めから全て知っていたけどね」


「そうなの!?」


「ええ、役所に入り込むには、役員の協力が必要不可欠なので」


 その割には、アルヴィンに冷たい対応を取っていた気がするんだけど……


「それだけフィオナ様が大切だったのでしょう。最初から最後まで、イリアーナは一貫してフィオナのことしか考えていなかったよ」


「イリアーナ……」


 前世の記憶が戻った後、冷たく追い払われたと思っていたけど、実際は、アルヴィンから私を引き離すためだったと聞いた。カルディアリアム伯爵に相応しいか確認するアルヴィンから――――


「それだけではないよ」


 な、何? 何なの!? 笑顔満点、何故か色気満点で密着してくるアルヴィンに、恋愛経験皆無の私は、どう対処していいか分からない。止めて! 手を絡めないで! いつの間にか呼び捨てになってるし! いや、呼び捨てはいいんだけど!


「イリアーナは、もうフィオナに愛のない結婚をして欲しくなかった。だから、俺がフィオナに近付くのを嫌がったんだよ」


「愛のない結婚?」


 どういう意味? 私とアルヴィン? 結婚?


 脳を総動員させて理解を追い付かせようと頭を働かせるが、上手く処理出来ない。



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