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20話 私の変化は貴方にとっていいものなの?

 


「無駄に広いから、子供達が寝るのにも困らないと思うわ。ちゃんとお風呂もあるし、厨房も最新の機器にしているから問題なく使えるわ。ああ、ローレイ達が使ったであろう家具はちゃんと新しい物に取り換えてあるから安心してね。子供達にバイ菌がついたら大変だもの」


「ま、待って下さい! こんなに良い家を準備されなくても!」


「領民の税を使って建てているのよ、それなら、領民のために使うべきだわ」


「遠慮なく使っていいと思うよケネディ、その為の手続きも()()俺がしたからね」


 ひょこっと後ろから顔を出したアルヴィンは、自分がしたと強調するように話した。そう、彼の言う通り、アルヴィンには孤児院を移転させるための手続きから、今後、孤児院の運営をカルディアリアム伯爵家で行う手続きまで、全て任せた。

 最初、ジェームズと二人で頑張っていたんだけど、中々進まなくて苦労していたのよね。


「感謝しているわ、アルヴィン」


「それはどうも、お役に立てて光栄です、カルディアリアム伯爵」


「フィオナでいいわよ」


「では、フィオナ様」


 アルヴィンの優秀さは確かで、全ての続きを一瞬で済ませた。早く引っ越しさせたかったから、本当に感謝してる。


「あ、でも私……何もフィオナ様にお返し出来なくて……」


「ケネディには私の大切な領民の子供達を育ててもらっているんだもの、それだけで十分」


「フィオナ様……ありがとうございます!」


 これで劣悪な環境からも抜け出せるし、食べる物に困ることもない。シングが孤児院の他の子供のために、誰かを蹴り飛ばすなんてことにもならない。

 これでローレイを放置していた贖罪になるかは分からないけど、少しでも力になれたなら嬉しい――




「フィオナ様はどこかで頭でも打たれたんですか? それで、性格が変わったとか?」


 孤児院の引っ越し作業中、付き合いでそのまま手伝ってくれているアルヴィンは、荷解きをしながら、私に尋ねた。

 成程、頭を打った、か。そんな誤魔化し方もあったのね。今度はそう答えてみようかしら。


「しつこいわね、アルヴィン」


「仕方ありませんよ、今までカルディアリアム伯爵になんて相応しくないと言われていたフィオナ様が、こんな風に覚醒されるんですから」


「ハッキリ言うのね」


「これは失礼」


 まぁ事実だからいいけど。


「私の変化は、貴方にとっていいものなの?」


「…………勿論」


 何、その無駄に取った余白。何だかわざと気にさせようとしているみたいでムカつくわ。アルヴィンなら、例え私の変化が好ましくないものだとしても、上手く誤魔化せるでしょうに。


「顔はイケメンなのに意地悪ね」


「イケメンとはどういう意味ですか?」


「……さぁ、どういう意味でしょう」


 意地悪な方には意地悪でお返ししないとね。やられっぱなしは性に合わないもので。


「フィオナ様も、意地悪ですね」


 ――くっ! イケメンな人ってそれだけで人生得してるよね! そんな妖艶に微笑まないでくれます? 恋愛経験皆無の独女には目に毒よ!

 おっと、ていうか、そろそろいい加減にしなきゃ。確か、アルヴィンはイリアーナの好きな人だものね。あんまり私に付き合わせたら駄目だわ。


「手伝ってくれてありがとうアルヴィン、もう帰っていいわよ」


「俺はもう用なしですか?」


「いや、そういうワケじゃないけど……役所の仕事があるでしょう? これ以上私に付き合う必要は無いわ」


 視察で孤児院の存在を知ったから対処したけど、イリアーナやアルヴィンさえいれば、私なんて領地運営に必要無いと思うくらい、優秀だ。

 私はこの領地が平和であることを望んでる。それが私の手じゃなくも、構わない。寧ろ、部下に任せっぱなしで良いなんて、こんなに楽なことは無い。


「イリアーナのことをよろしくね、大切にしてあげて」


 余計なお世話かもしれないけど、一言だけ。

 正直、アルヴィンのことはまだ顔が異様に良くて仕事が出来るってことしか知らないけど、イリアーナの心を射止めた相手なら、きっと中身も素敵な人なのでしょう。出来れば、二人で幸せになって欲しいわ。


「イリアーナを大切に?」


 私の発言に、不思議そうに瞬きを繰り返すアルヴィン。


「イリアーナには夫がいるのに、あまり俺が踏み込むのは失礼だと思いますが」


「そう、夫――夫!? イリアーナって結婚してるの!?」


「知らなかったんですか? 確か、俺がここに来る前に結婚していたと思いますが」


「嘘! 不倫なの!? 不倫は駄目よ!」


「いや、何の話かな?」


 慌てふためき混乱する私に、アルヴィンは丁寧に話を聞き出し、誤解している部分を説明してくれた。

 イリアーナが結婚していたのは事実で、パン屋のおじさんは、イリアーナが結婚したことを知らずに、ただ勘違いしていること。イリアーナとアルヴィンの間には、恋愛感情は一切無いということ。


 大きく勘違いしていたのは分かった。けど、それよりも衝撃が――


「イリアーナが結婚……! 独女仲間だと思っていたのに!」


「独女とは?」


「独身女性の略よ!」


「フィオナ様、一応、結婚されていましたよね?」


 私の中でローレイとの結婚はカウントされていません。


誤字脱字報告ありがとうございます。感謝します。

いいね、ブックマーク、評価、読んで下さる皆様、ありがとうございます。

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