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りゅう、夜風を呑む。  作者: 鰹会
りゅう、夜空に堕ちる
9/28

9話 「会合」



 最後尾の若い男の龍人が、マンホールを閉める。地下へと続く蓋は圧縮された空気を吐き出して、閉まった。


 さて、どうするか·····。


これはもしかすると、本当に龍人のアジトがある可能性があるぞ·····。


 思わぬ大発見に、興奮が抑えられないが、ここは慎重になるべきだ。一体、あの四人にどれだけの味方がいるか分からない。地下にうじゃうじゃと居るならば、流石に用心しなければ危険だ。


 「うーん·····。」


行くか。


 結人はゆっくりと歩き出した。


マンホールは、普通の物と全く同じように見えた。·····いや、もしかしたら普通の物なのかもしれない。


 やはり地下に何かしらの隠れ家のようなものがある可能性が高い。



 龍人は、夜に活性化する。


爬虫類なので、気温が高い方が活発になると思っていたのだが、どうやら日光浴の必要が無いらしい。

恐らく、人間頃の体温維持がそのまま残っているのだろう。逆に、体温を下げる事は出来ないようで、暑くなればなるほど身体は怠くなる。


 まぁ動けない訳では無いが、涼しい方が気分が良い。

そう考えてみると、龍人にとって地下は最高の環境だ。


 かがみ込んで、マンホールをじっくり観察する。縁に、指一本程の穴が空いており、どうやらここに指を引っ掛けて開けるようだ。


 結人はパーカーを体の上から撫で付けた。


このパーカーは、今の結人の数少ない持ち物だ。


 多少の金銭と、身に付けた衣服。

·····着の身着のままだが、龍人は汗をかかない。服を着替える必要が無いのはとても便利だ。


 人差し指を差し込んで、ゆっくりとマンホールを開ける。地面に、暗い穴が開いた。

 結人は壁に付いている階段を掴み、音を立てないようにゆっくりと穴の底を目指して降りていった。



 マンホールというものは、人が思っているよりも深いものだと、結人は初めて気がついた。

 マンホールほど、いつも見慣れているにも関わらず、その実態が分かっていないものは無いかもしれない、とも思った。


 一直線に下まで伸びた梯子を降りると、左右にずっと伸びた丸い通路が続いている。本来であれば真っ暗のはずだが、夜目が効いているのか、壁の苔の模様までがハッキリと見えた。


 「·····」


 足元には水が溜まっていて、龍人の鋭い嗅覚が汚水の臭いを増幅させていた。

 下の水を踏まないように、先へと進んでいく。いくら汚水が臭かろうと、四人の龍人の匂いの跡は見逃しようがない。


 しばらく進むと、左の壁に大きな穴が空いていた。

巨大なハンマーか何かで開けられたようなその穴は、また別の通路へと繋がっている。


 結人はその穴を覗き込んだ。


今いる下水路の斜め下を、ちょうど直角に交わるように繋がっているようで、水流れていない水路へ繋がっていた。

 タンッ、と足音を反響させて、乾いたコンクリートの地面に着地する。


 先程までの汚水の強烈な臭いは消え、乾燥して古びた塗料のような香りが漂っている。


 今は使われていない下水道のようだ。


龍人の匂いは相変わらず続いている。その後を追って、結人は少し足を早めた。



 今度は、真下に穴が空いていた。


それはまた別の通路へ繋がっているようだが、今度は真新しいコンクリートの匂いがした。


 明らかに最近作られたものだ。

自分の辿った道が間違いで無かったことに、少しだけホッとして、結人は穴の中を飛び降りた。



 体が、予期していなかった浮遊感に襲われる。


結人は今、とてつもなく広大な空間を落下していた───。腰が抜けそうになり、思わず腕を振り回したちょうどその時、固い感触と共に地面にぶつかった。


 10メートルは落ちただろうか。

人間であれば骨折は免れなかっただろう。



 「ちっ···くしょうが·····」


強い衝撃を受けた背中をはたいて、結人は恨み言を吐いた。


 ここまで来るのにかなり歩いた。

恐らく東京の北部辺りに来ているはずだ。そんな奴に対してこの仕打ちか。


 帰ったら安宿を取って、久しぶりにベットで眠る事にしよう。ほんとうに、その位は歩いた。


 「随分と広いな·····」


 どうやらここは、広大な地下空間のようだ。

何本もの巨大な柱が立ち、奥行は見通せない。結人のスニーカーの足音だけが、響いては消えて、響いては消えていった。


 この地下空間は、恐らく雨水を貯蔵する為のものだ。

いつかテレビかなにかで見た事がある。ゲリラ豪雨などによる膨大な雨水を一旦溜め込んで、都市が浸水するのを防ぐのだ。


 ·····だがどうも、最近は別の使われ方もしているようだ。


結人の嗅覚が、龍人の匂いを捉えた。

それもかなりの数·····。ざっと20はいるだろうか。


 一箇所に集まり、何やら輪を作っている。やはり、敵対しているような気配はない。




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