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〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~  作者: 乃ノ八乃
第五章 魔女殺しの魔女ルルロア

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エイプリルフール企画 ルーコの夢想外伝~勇者パーティから追放された治癒術師がどうしようもなかったので煽ってみた~



「――――治癒術師ハルヤ!お前をこのパーティから追放する!」



 そこはとある世界のとあるギルド。まだその世界へ来たばかりの私がお金を稼ごうと、冒険者登録をしている最中、その騒動は起きました。


 騒動の中心にいたのはこの世界において勇者パーティと呼ばれる有名な人達で、何やらその中の一人を追放するとの事です。


 正直、何の事情も分からない私にとっては『へー、たいへんですねー』くらいの感想しか出ませんでしたが、どうやら他の人達にとっては違ったようで、ギルド全体がざわつき始めていました。


「ちょ、ちょっと待てよレン。俺はずっとこのパーティに貢献してきた筈だろ!なんで俺が――――」

「貢献?中級の治癒魔術すら満足に使えない癖に何を言ってるんだ?ああ、パーティを組んだ当初は良かったよ。初級魔法でもそこそこの怪我は治るしな。でも、もう僕達はあの頃とは違う。勇者パーティと呼ばれるくらいまで成長したんだ。それなのにお前は一向に変わらない……追放される理由には充分だろ」


 追放される側の……ハルヤと呼ばれた少年は淡々と理由を並べ立てられて絶句しています。


 追放、といえば聞こえは悪いですが、傍から聞いた限りでは確かにパーティから外される理由は充分だと思います。


 まあ、能力が足りなくても、仲間との信頼で成り立つ関係もあるのでしょうけど、あの様子だとそれもなさそうです。


 追放された人は可哀想ですが、仲間の事を思うならここは受け入れるべきでしょう……その主張が本当なら、の話ですが。


「っそりゃ俺が初級の治癒魔法しか使えないのは事実だけどよ、その分、他の事でカバーしようと」

「問題はそれだよ、それ。初級の治癒魔法しか使えないだけならまだいい、後衛でサポートに徹してくれれば良いだけだ。それをお前は不必要に出しゃばって仲間を毎回、危険に晒した。だからハルヤ、お前はパーティにとって明確な害悪なんだ」

「害、悪……そこまで…………」


 突き付けられた事実に追放された人が絶句しています。無能な働き者ほど邪魔な存在はいない……とまでは言いませんが、それ相応に迷惑だったのでしょう。


 それこそ、こうやって追放騒動にまでもつれ込む程には。


 仮にですが、ここで終わっていれば治癒術師の彼がちょっと可哀想という感想も抱いたかもしれません……結果的にそれはありえない話でしたが。


……ふむ、見ていて気持ちの良いものでもありませんし、さっさと登録を済ませてしまいましょうか。


 そう思って視線を外し、受付の方に向き直ったその時、騒動の中心の方から悲鳴が聞こえてきました。


 何事かと思って再びそちらへ視線を向けると、ハルヤと呼ばれる彼が追放を告げた少年に掴みかかり、取っ組み合いに発展しています。


「っ何のつもりだハルヤ!僕に掴みかかったところでお前の追放は変わらない……」

「うるせぇ!ここまでずっとパーティに貢献してきた俺を事もあろうに害悪扱いしやがって!お前らがそのつもりなら俺も容赦はしねぇ!絶対に後悔させてやる!!」

「何を――――っ!?」


 治癒術師である彼と見るからに剣士風の彼では取っ組み合いにすらならないと思うのですが、どうやら何か仕掛けがあるのでしょう。


 治癒術師の彼の方が剣士風の彼を圧倒し、首を絞め始めていました。


「ッレンから離れてなさい!この無能!!」


 剣士風の彼の不利を悟ったのか、パーティの一人である魔法使いの少女が治癒術師の彼に魔法を放ち、その場から飛び退かせます。それはおおよそ、後衛職の動きではありませんでした。


「……あぶないなぁ、サラ。仲間に突然、魔法をぶつけてくるなんて」

「ハッ、仲間?アンタは今、追放されたばっかでしょ。そもそも、逆恨みで暴力に訴えったのはそっちが先だし、文句を言われる筋合いはないわ」

「…………あっそ。ここで謝るんなら許してやろう思ったけど、やめた。お前も俺を裏切るなら容赦はしねぇよ」


 そう言うと、治癒術師の彼は一足飛びに魔法使いの少女まで近づくと、彼女の首根っこを掴んで持ち上げます。


 そこには微塵の加減もなく、むしろ、どうやって傷めつけてやろうかという嗜虐(しぎゃく)の表情さえ、窺えました。


「おい、あんちゃん。流石にやり過ぎだ。それに揉め事なら話し合いで――――」

「うるさい。これは俺達パーティの問題だ。他人がとやかく口を出すな」


 騒動を見守っていた一人の冒険者が仲裁をしようと、彼等の間に割って入ろうとしましたが、治癒術師の彼は聞く耳を持たず、その冒険者を殴り飛ばしてしまいました。


「てめぇ!何しやがる!」

「パーティ内の揉め事ならともかく、注意しただけの奴に暴力を振るうなら覚悟はできるんだろうな!」


 殴り飛ばされた冒険者の仲間が声を上げ、治癒術師の彼の襟首を掴もうと詰め寄ります。


 しかし、治癒術師の彼は空いている方の手を向けて()()を放ち、その冒険者を吹き飛ばしてしまいました。


 治癒術師という役割と追放の理由を考えれば彼がここまでの大立ち回りを演じれる程の力量はない筈ですが、実際にこういった状況になっている以上、やはり何か種があるのでしょう。


……あの性格と力、それに傲慢な言動といい、()()()()()()を思い出しますね。大方、掴んだ相手の力を奪うとか、そういう碌でもない能力でしょうが、このままだと騒動のせいで登録もままならないですし……こうなったら仕方ありませんか。


 自分から騒動に首を突っ込むのは気が進みませんが、放っておくのも私の精神衛生上、良くありません。


 だから面倒くさいという気持ちに蓋をした私はため息を押し殺しつつ、騒動の中心へと足を踏み入れました。


「――――そこまでにしてください。これ以上、騒ぎを大きくされると私に迷惑が掛かるので止めてもらえません?」


 人混みをかき分け、騒動の中心へと躍り出た私は簡潔、そして端的に治癒術師の彼へ用件を伝えます。


 正直、言葉で引き下がるとは思えませんが、ここから実力行使に発展した場合、私の正当性を示すために一応、言っておく必要はあるでしょう。


「……今のやりとりを見て、まだ突っかかってくる馬鹿がいるとはな。もしかして女の子には手を出さないとか思ってる?」

「はぁ……今まさに女の子を締め上げてる人にそんな事を思う訳ないじゃないですか。もしかして、それすら理解できないくらいの知能しかないんですか?」

「…………お前、ムカつくな。いいぜ、パーティの奴らより先にお前から分からせてやるよ」


 安い挑発にいとも容易く乗ってきた彼は魔法使いの少女を解放し、一直線に私の方へ向かってきます。


 その速度はやはり後衛職のものではなく、普通の人からすれば目にも映らないほど速いと感じるかもしれません。


 まあ、私にとってはどれだけ速くても関係ないですが。


 おそらく、魔法使いの少女にした事と同様に、私の首を掴み上げるつもりだったのでしょう。真っ直ぐ私の首元目掛けて伸びてきた手に対して私の行動は単純明快。


 彼より速く動き、少しだけ横にずれてそのまま足を引っかける、それだけ。


 たったそれだけの動作で彼は派手にすっころび、その速度のままギルドの壁に激突し、突き破ってしまいました。


「おや、一人で派手に転んでどうしたんです?私を分からせるのではなかったのですか?」


 突き破られた壁の向こうにいる彼に向け、適当に煽りの言葉をぶつけます。


 すると、表情を怒りに染めた治癒術師の彼が壁の中から勢いよく飛び出し、再度、こちらの方へ駆け出してきました。


……沸点が低いというか、煽り耐性がないというか、ともかくこの手の人は精神的に幼く、自尊心が高いので簡単に思い通りに動きますね。


 頭に血が上っているようで、何の警戒もなく、真正面から突っ込んでくる彼に先程と同じ動きで対応すると、面白いように転び、今度はギルドの外へ転がって行ってしまいます。


 とはいえ、流石にあの程度で終わるとは思っていません。近くにいたギルドの職員に声を掛け、剣士風の彼と魔法使いの少女の介抱を頼んでから、壊れた壁を魔法で修復した私はそのまま外に出ると、愕然とした表情を浮かべる治癒術師の彼の前へ歩み出ました。


「…………さて、正直なところをいえば、貴方達のパーティがどうなろうと、誰が追放されようと、正当性がどちらにあろうと、どうでもいいんですよ……私に迷惑が掛からなければ。だから今、ここで選ばせてあげましょう。先程までの行いを反省して皆さんに謝罪し、そのままどこかに消えるのならこれでお終いにします。けれど、まだやるというのなら……」

「っふざけるなぁ!お前が俺に謝るんだよぉぉ!!」


 せっかく選択肢を提示してあげたにも関わらず、目を血走らせながら殴りかかってくる治癒術師の彼。まあ、この手の人間が大人しく謝るなんて選択をするとは思ってませんでしたけど。


「――――その選択肢は一番の悪手ですよ。()()()()()()()()


 拳が届くよりも早く、手で銃の形を作った私は指先からとある魔法を射出し、彼の身体……その()に干渉し、撃ち抜きました。


「がっぐっ……お、俺の力が…………」


 撃ち抜かれたその瞬間、彼の身体がビクリと揺れ、ありえないという言葉を漏らしながらそのまま倒れてしまいます。


「過ぎた力はその身を滅ぼす、といったところですか。逆切れして、人の力を奪って、最後にはその全てを失うなんて随分と皮肉な末路になっちゃいましたね…………ま、どうでもいいですけど」


 次に目覚めた時、彼はもう能力どころか、まともに魔法すら使えないでしょう。


 パーティだった人達も怒っているでしょうし、ギルドであんな騒動を起こしては何かしらの罰も下るかもしれませんが、それもこれも彼の選択の結果……まさに自業自得というやつですね。


 最後にそんな事を思いつつ、私はそのまま踵を返してギルドの方へと戻り、再度、登録のために受付へと向かうのでした。











「――――ふわぁ……久しぶりにあのへんな夢をみたかも…………どこの世界にも、身勝手な人はいるって……こと……か……な…………」


 大きな欠伸を漏らしつつも、睡魔に負けて私は再び微睡みに身を任せる。


 夢の中の私は相も変わらず、残念だったけど、今回は少しだけまともな事も言ってるからいっか……なんて他愛のないことを考えながら。






――――来年に続く……かも?


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